企業風土

「日本でいちばん大切にしたい会社」は応募難度も最高ランク

投稿日:2015年7月14日 / by

日本一人にやさしい会社への条件とは

イベントの趣旨を語る坂本教授

イベントの趣旨を語る坂本教授

6回目となる「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の募集がスタートした。期間は2015年11月16日までで、表彰式は2016年3月23日に都内で行われる。エントリーする時点で、多くの企業が“門前払い”となる超難関の同イベント。それは、裏を返せば、同賞が“本当に大切にすべき会社”にふさわしい勲章だからといえる。

人を大切にする経営学会の会長で、法政大学大学院政策創造研究科教授の坂本光司氏は、同イベント発足の目的について「業績を追求するあまり、従業員を酷使する結果、心の病が増大する。業績が落ちると平気でリストラする企業がある。こうした経営は間違っている。経営というのは人を幸せにすること。少しでもいい会社を増やしたいという思いでこのイベントをスタートした」と熱く語った。

単なる形式だけのイベントでないことは、その応募資格を見れば一目瞭然だ。(1)人員整理、会社都合解雇がない、(2)下請け企業仕入先企業へのコストダウンを強制していない、(3)障害者雇用率が法定雇用率以上である、(4)黒字経営である、(5)重大な労災がない。これだけも狭き門だが、さらにこれら全てに過去5年以上にわたり、該当していなければならない。思いつきでは応募できない、厳然たる壁がそこにはある。

“大切にしたい会社”が着実に増加する背景とは

「人を大切にしたい」。そう考える経営者は少なくないかもしれない。だが、この応募資格を通過できる企業となると、その門は極めて狭いといえるだろう。それでも、同賞の拡がりと比例するように、人を大切にする会社を目指す企業は着実に増加している。その理由について、坂本教授は次のように説明する。

「働く側が、働く目的について考えるようになっている。そして会社が自分たちを大切に考えているかを見極めるようになってきた。お金ではない価値観に社員が目覚めはじめている。それから、社会の目線も変わり始めている。つまり、ものを買う時に、どうせ買うならいいことをしている会社の製品を買おうという風潮もでてきている」。

こうした動きは、地方にも広がり、同学会の地方支部が設立され、活動も始まっている。さらに、地方で同賞の予選の様な企画も検討されており、高校野球の甲子園予選の様な動きも模索されている。また、同イベントで蓄積したノウハウを、いい会社選別のひとつの基準とする構想もあり、国を巻き込んだ動きにまで発展する可能性もあるという。

「日本が世界をリードするのにいまや、技術ではない。人をたいせつにする経営でリーダーシップを示すことで、世界からのリスペクトを受けることは可能だ。すでに海外からも問い合わせが来ており、そうした方向を目指すのがいい」と坂本教授は、世界をも見据える。

「企業は人なり」、という松下幸之助の名言がある。人を育て、その人を十分に活かしていくことが、企業経営の第一の要諦といった意味だ。人とのつながりを大切にする民族性の日本が、それをないがしろにして高度経済成長をし、いま、人をたいせつにする経営に立ち返るのは、ある意味で必然ともいえる。自薦他薦も可能な同賞への応募の7割が他薦という部分からも日本人の奥ゆかしさが透けてみえる。成熟期の日本が目指すべき経営のゴール。道は一つではないにしても、“人をたいせつにする経営”が、その一つであることは確かといえるだろう。

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