企業風土

正社員安定神話の落とし穴

投稿日:2016年7月4日 / by

変人・安田の境目コラム

正社員になれば安定するは本当か

正社員になれば安定した生活が手に入る。そう信じている人は多い。確かに正社員になれば、仕事内容と月々の報酬が固定化されることは確かである。だがそれを安定した生活と呼んでもいいのだろうか。
stability
まず、安定と言うからには長期的な見通しが必要である。だが就職して正社員になっても、保証されるのは「今」の待遇だけだ。5年後10年後の待遇など誰も保証してくれないし、その時に会社があるかどうかさえ分からない。

更に、安定した生活には、収入以外の要素も必要である。たとえば会社員になると、苦手なことや、やりたくない仕事でも、黙って従わなくてはならない。ストレスを抱えながら送る生活を、安定した生活と呼んでもいいのだろうか。

長期的な保証と、精神的なゆとり。その両方があって、初めて安定した生活が成り立つのである。だがそれは、正社員になれば自動的に手に入るものではない。

経済的安定の基盤となる唯一ものとは

長期的な保証。それは会社との契約ではなく、自分自身のスキルによってのみ、持たらされる。人に必要とされ続けることが、経済的な安定の基盤となるのである。必要とされるスキルを磨き続けていれば、仕事は無くならない。

ただし重要なのは、ひとつの会社でのみ通用するスキルではなく、普遍的に通用するスキルを身に付けることだ。その会社、その事業でしか使えないスキルでは、長期的な安定は望めない。

では、精神的なゆとりについてはどうだろう。仕事をしている限り、ストレスがゼロになることはないが、問題なのはそのストレスの中身である。健全なストレスは健全な仕事から、不健全なストレスは不健全な仕事から生まれる。

健全な仕事とは、自分がやりたい仕事、自分が得意とする仕事だ。不健全な仕事とは、自分がやりたくない仕事、自分が苦手とする仕事だ。だが会社員には、仕事の内容を選ぶ権利がない。

もちろん、会社員として、安定した人生を手に入れることは不可能ではない。ただ確率が低いだけである。その会社で求められるスキル、与えられるミッションが、自分の得意なことや好きなことであり続ける。これはなかなか難しい。この激動の時代には、会社そのものが変わり続けるからである。

やりたいことや、得意なことを、仕事にし続ける方法。それは、人に雇われないことである。つまり、会社員にならないという生き方。好きなことや得意なことを極め、それを仕事に出来るように努力する。もちろん、それは簡単なことではない。だが健全な努力である。とは言っても、いきなり会社を辞める必要はない。会社員をやりながら、自分の得意をスキルに変えていけばいいのである。

もしも面接が苦手で、就職出来ないという状況なら、それをラッキーだと捉えた方がいい。世の中には会社員に向いていない人、フリーの方が力を発揮出来る人がたくさんいる。ただ器用な人や、素直な人は、会社員としても生きていけてしまえるのである。極度の人見知りや、偏った性格や、価値観。それは会社員にならなくてもいいという、神様からの免罪符なのである。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

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