企業風土

いい会社をつくるのはなぜ難しいのか【瓦版書評】

投稿日:2016年8月16日 / by

いい会社の定義とは何か

「いい会社ですね」。そう言われる会社とはどんな会社なのか。かつてなら、知名度のある大企業に入れば、親戚に「いい会社に入ったわね」と誉めそやされた。だが、いまや一流企業といわれる会社に入っても数年後にはリストラや不正に手を染めるということも珍しくない…。

goodcompany

悪い会社の象徴とされるブラック企業。そこでは従業員が奴隷のように扱われ、経営者だけが私腹を肥やす。逆説的に考えれば、従業員を家族のように大事に扱い、利益を公平に分配し、さらに社会貢献もして皆がハッピーになる。それが「いい会社」といえるのかもしれない。

だが、社員を家族のように扱っている企業でも、愛情が深すぎるゆえか、あまりに縛りが強すぎて人によっては重圧となっているケースもある。利益を公平に分配しても、そもそも利益が少なかったりもする。顧客満足度を高め、社員の幸福を重視し…などと経営理念で掲げていても、ノルマ未達なれば、平気で「チャレンジ」を強要する企業もある。

突き詰めれば元凶は、企業が売り上げを確保しなければ、存続できないということになろう。社員に幸せになって欲しい。ただし、それはしっかりとした売り上げがあってこそ。そういう理屈だ。異論はない。だが、売り上げが芳しくないのは景気の問題なのか、製品・サービスのせいなのか、経営の問題なのか。真剣にいい会社を目指すなら、まずそこはしっかりと突き詰める必要はあるだろう。

いい会社にしたいのにできない元凶とは

同書には、「いい会社」の定義から、特徴、つくり方まで記されている。事例紹介する本は数多いが、「つくり方」にまで踏み込んだ本は珍しい。まさにタイトルに偽りなしのいい会社つくりの指南書だ。いい会社をつくりたい。本気でそう考える経営者は、一読の価値があるだろう。その中で、いい会社が減少している原因がにじむ、いい会社のつくり方の項目がある。方法3として挙げられている「非価格競争のビジネスの仕組みをつくる」だ。

文字通り、価格競争に陥らないビジネスモデルを構築せよ、ということだ。販売体制や仕入れの工夫など、独自性によって、競争の対象を他社でなく自社の努力に依存するスタイルにする。それにより、収益を安定させ、負荷を少なく成長を実現する。結果、社員は幸せに働けるーー。理想的なサイクルだが、現実にはここで躓く企業が非常に多い。だから、せっかくの崇高な経営理念が、経営管理と乖離してしまう。

なぜ多くの会社が、ここでつまずいてしまうのか…。何より大きいのは、社会・産業構造が変化した中で、いまだ新しい成功法則を見いだせていないということだろう。いいものをつくり、うまく宣伝すれば売れる。そんな時代は終わった。そうなると、確かに途方に暮れる。だが、こんな時代でも「いい会社」と呼ばれる企業は確かに存在する。しかも、特別にすごいことをしているわけでもない。マネするだけでいい会社になれるなら簡単だが、そうはいかない。ではどうすればいいのか。そのヒントが同書には凝縮されている。

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