企業風土

あなたの会社に優秀な人材が集まらない本当の理由

投稿日:2016年10月3日 / by

変人・安田の境目コラム

あなたの会社は採用を“成立”させられますか

採用の仕事をしていると、無茶な要求をして来る経営者に出会うことがある。給料が安く、休みが少なく、仕事はハードで、やりがいも将来性もない。だが、人さえいれば、この仕事は儲かる。だから人を連れてこい。多くは望まない。真面目で、責任感があって、文句を言わずに言われたことをきちんとこなす人材。そういう人材を20人ほど連れて来てもらいたい。条件が良くないことは分かっているが、それを何とかするのが採用会社だろうと言うわけである。

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言い分は分からないでもない。だが、この手の仕事に限って、ハードルが高い。その割にはまったく儲からない。そもそも、極限まで人件費を削らなくては成立しないようなビジネスなのだ。そのような会社が、採用に大きな予算を割くはずがない。予算は少ない。ハードルは高い。だが何とかしろ。これが顧客の要望である。もし、その要望に応えることが出来るなら、すごい採用会社になれるに違いない。

残念ながら、そんな手品のような採用は不可能だ。要するに、そのビジネスは、採用という観点から見ると成立していないのである。月給三万円で、朝から晩まで死ぬほど働いてくれる真面目な社員が100人もいれば、それは儲かるに決まっている。だが、そんなビジネスは絵に描いた餅でしかない。実現不可能なビジネスモデルなのである。

優秀な人材を引き寄せるために必要なのは必ずしもお金でない

冷静に考えれば当たり前の話なのだが、なぜか経営者には採用という概念が欠落している人が多い。どう考えても優秀な人材がやりたがらないような仕事内容や、待遇であるにもかかわらず、「自社の人材レベルが低すぎる」と嘆いているのである。嘆きたいのは社員の方だろう。

AIを使って完全に無人化したビジネスを行う。それならば、どんなに待遇の悪いビジネスでも可能だろう。だが、人がいないと成立しないビジネスを展開するのなら、採用は避けては通れない問題なのである。

<どういうビジネスをやれば儲かるのか>。<どうやれば優秀な人材が集まって来るのか>。この2つはセットで考えなくてはならない経営課題なのだ。少子高齢化、右肩下がりの経済、価格競争の限界、付加価値ビジネスの必然性…。そういった要素を前提としてビジネスモデルを構築するならば、何をするかよりも先に、どうやって優秀な人材を集めるかを考えなくてはならない。

いくら監督がスピードベースボールを掲げようとも、そこにいる選手の足が遅ければそんな戦略は成り立たない。これからの経営者に求められるのは、採用力を軸にしたビジネスモデルの構築だ。もちろん、優秀な人材にはそれなりの報酬を支払わなくてはならない。だが、高額な報酬だけで人を集めるようなやり方には限界がある。

あくまでも、その仕事に、その会社に、その社長に、その社長が掲げるビジョンに、人を惹きつける魅力がなくてはならない。仕事は楽でなくていい。簡単で無くてもいい。優秀な人材が、全力で努力しなければ成立しないようなビジネスモデル。それこそが、他社が真似の出来ない「レンガの家ビジネス」なのである。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

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