企業風土

なぜ売り方を追求したら超ホワイト企業になったのか

投稿日:2016年12月14日 / by 瓦版編集部

ワークライフバランス大賞受賞企業が実践するスゴ過ぎる取り組み

「ワークライフバランスを充実させよう」。長時間労働是正の動きが大きくなる中で、合言葉のようになっているフレーズだ。残業禁止、有休取得率100%など、大胆な施策で課題に真っ向から取り組む企業も徐々に増え始めている。
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思い切った施策は確かに効果はあるかもしれない。だが、対症療法的であることは否定できない。第9回ワークライフバランス大賞で、大日本印刷とともに、大賞を受賞した(株)お仏壇のやまきは、まさに本気の根治療法で、仕事と私生活の充実を見事に実現。まだ少数派の根治療法型のロールモデルとなり得る成功事例となっている。

そもそも、取り組みのきっかけがユニークだ。浅野秀浩社長はいう。「取り組みを始めたのは必要に迫られてなんです…」。長時間労働が蔓延し、社員が疲弊し、危機的状況だったのか…。そうではない。なんと、製品販売において、「どうすれば客が満足する提案できるのか」を追求した結果が、ワークライフバランスの充実だったのだ。

どういうことなのか。浅野社長が解説する。「販売する製品が仏具という性質上、どうしてもお客様はナーバスになりがちです。しっかりとお客様に歩み寄れなければ、販売機会を失いかねません。そこで、トップセールの人間を行動観察した結果、定時帰宅、有休フル消化で家族をとても大切にしていたのです。ならば、と仮説を立て、ワークライフバランスを充実するよう職場改革を進めていきました」。

取り扱い製品の性質上とはいえ、家族を大切にすることが高セールスにつながるという仮説は、にわかには信じがたいが、素晴らしいことではある。すぐにトップダウンで、改革に着手した浅野社長は、定時退社、有休取得を徹底する。順調に浸透したが、100%に達しないため、なんと有休取得100%達成者には1割のボーナス休暇+金一封まで提示。さらに、店舗も18時閉店を徹底し、以降の入店を断り、帰りやすく休みやすい空気を醸成した。

業務内容にまでメスを入れて実現した有休完全消化

これだけでも十分すごいが、まだ先がある。実は、ワークライフバランスは充実したものの、一方で、業務が回りづらくなる弊害も発生。レジ打ちが休んだら、仕事が回らない。かと思えば接客が休んだら店がオープンできない…といった具合だ。そこで取られた策はなんと「多能職」への切り替えだ。つまり、全従業員が、接客、レジ、設計、経理などを万遍なくできるようトレーニング。“欠員”がなくなることで休暇の取得を容易にしたのだ。

働き方改革のプロセスを説明する浅野社長

働き方改革のプロセスを説明する浅野社長


ここまでやるともはや、執念ともいえる。一方で、社員の反発も心配になる。この点について、浅野社長はこう述懐する。「確かに反発して、結果的に離れた人もいます。しかし、導入したことでむしろ社員全体のモチベーションは上がり、新たな視点からの意見も出るようになり、作業効率は格段に向上しました」。多くの企業がさじを投げかねないタイミングであえて、もう一歩踏み込んだことで、同社は、ホンモノのワークライフバランス浸透企業へ脱皮したのだ。

もちろん全ての企業がマネできる取り組みとはいえない。社員数33人というサイズが実現させた側面もあるだろう。だが、見逃してはならないのは、取り組みのきっかけだ。「どうしたら売れるようになるのか」。素朴だが、経営における重要な視点から始まっているからこそ、経営者は本気になり、それが社員にも伝わり、取り組みは成功につながったのだ。

こうなれば好循環しかない。好調な業績もあり、人員増強を図り、募集すれば人は続々応募してくる。しかも「とてもうちには来てくれないような」優秀が人材が押し寄せる。本気の職場改革は、そのままビジョンとしても外にも伝わり、一緒に働きたいという魅力として、多くの求職者を引き寄せるのだ。

最後に浅野社長はいった。「どの企業も取り組んでいると思いますが、ワークライフバランスの取り組みは、企業の数だけあると思います。それぞれが自社の特性を踏まえ、オリジナルのユニークな取り組みを取り入れ、浸透させていってほしいと思います」。単に労働時間を短くするという視点でなく、どうすれば、会社がうまく回り、労力が最大化されるのか。そうした部分に目を付けることが、企業力を高めるホンモノの職場環境改善を実現する肝といえそうだ。

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