企業風土

不確実時代突破のカギを握る自立型社員育成のキモ

投稿日:2017年1月20日 / by

急務となっている自立型社員の育成

働き方改革への風が2017年に入り、強まっている気配だ。目立つのは、残業削減を軸とした労働環境改善の取り組みだが、経営軸でみれば、その本丸は自立型社員の育成といえるだろう。自ら主体的に業務に取り組む社員。そうした人材こそが、大きな変革期を迎え、不確実な時代を企業が生き抜く源泉となるからだ。

表彰される大賞受賞企業

表彰される大賞受賞企業

 百人百様の価値感がある職場。そこで、各自の個性や特性を活かしつつ、経営目標からもブレないキャリアプランを描くことは並大抵のことではない。だが、それが出来なければ、企業は変化に対応できず、市場に埋没するリスクが高まってしまう…。

グッドキャリア企業アワードに集った社員育成の成功企業

参考になるのは、難題と向き合い、成果を出している企業の取り組みだ。2017年1月20日に都内で開催された「グッドキャリア企業アワード2016」は、厚労省が、他の模範となる従業員の自律的キャリア形成支援を行う企業を表彰するアワード。まさに自立型社員育成のお手本企業が集うイベントだ。

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受賞企業は全10社。大賞5社、イノベーション賞5社。どの企業も、産業構造や社会構造の変化に危機感を覚え、人材の進化に投資。すぐには成果が得られず、明確な答えのない課題に真摯に取り組み、組織全体の成長につなげている。

自立型社員成功企業の共通項とは

各社の取り組みはそれぞれに特長があるが、共通するのは、担当部門を中心に社員にしっかりと寄り添う姿勢だ。自らのキャリアプランを自分で考えさせ、分からなければ相談に乗り、しっかりと顔を見ながらともに前進する。人事部を中心に、マンツーマンも厭わず、各社員の適性を見極めながら、経営戦略とも摺合せ、地道に自律を促していく。

大賞受賞企業のリクルート住まいカンパニーは、上長とのマンツーマン面談を年6回実施。6年目の社員には2日間をかけて今後のキャリを考えるプログラムを用意する。イノベーション賞受賞企業の北都銀行は、人事部にキャリア支援室を設置し、全83箇所の店舗および本部全てを分担して面談。マメに状況を直接確認することで、形骸化したりブレがちな社員個々のフォローを綿密に行い、難題と向き合った。

大賞受賞のキヤノンが2016年から実施する「研修型キャリアマッチング制度」は、次世代型の研修として参考となるだろう。専門や専攻に捉われず、新たな領域にチャレンジしたいという社員の背中を押す仕組みで、初年度から20人のキャリアチェンジを実現する成果を出している。

 社員の進化が会社を救う時代に

法政大学キャリアデザイン学部の坂爪洋美教授は、グッドキャリア実現のポイントして「自分のキャリアプランの実現を目指すだけではなく、実現へ向け、自律的・継続的・前向きであることが大切。そのためには、自身のキャリアプランに一定の納得感があり、この会社で働いてよかったという感覚を持つことが必要になる」と解説する。

自立型社員育成のポイント解説する坂爪氏

自立型社員育成のポイント解説する坂爪氏

自立型社員は、主体性あふれる頼もしい社員である一方で、掛け違えると自分勝手な社員にもなりかねない。その境目にあるのは、企業ビジョン共有の有無といえる。自立型社員育成に成功している企業の多くが、まめなコミュニケーションで社員に寄り添うのは、どうしてもずれがちな方向性の軌道修正を行うこともその目的のひとつであることは間違いないだろう。

企業はこれまで、社員の成長イコール、スキルアップとしてきた。どうすれば経営が安定するのか、社員をどう育てれば戦力アップにつながるか、が明確だったからだ。だが、人口減少フェーズで、景気の先行きが不透明な時代には、かつての成功法則は通用しない。ハッキリしているのは、経営層だけの頭脳では、もはや市場に受け入れられる革新的なサービスや製品開発には限界があるということだ。加速する働き方改革の動きだが、その成功のカギはもはや、企業ではなくそこに所属する社員が握っていると認識すべきだろう。

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