企業風土

残業削減に本気で取り組んだら…

投稿日:2015年4月15日 / by

stworks1

残業削減も事業になりけり

セントワークス

ワーク・ライフバランス
コンサルティング担当

一之瀬幸生氏

企業にとって、残業は「必要悪」なのか…。利益を考えればそうなのかもしれない。だが、売り上げしか考えなければ、社員にしわ寄せがいくのは明白だ。セントワークスは、残業削減という命題にトップが先頭に立ち、本気で取り組んだ。全社員一丸となり、見事に目標を達成した。それどころか、なんとワーク・ライフバランスの取り組み支援、という新事業まで誕生――トコトン本気の同社の残業削減の実態に迫る。

短期で大幅な残業削減に成功

残業削減に力を入れる企業は、いまでは珍しくなくなりつつある。ただし、しっかりと取り組みが機能しているかとなると話は別だ。「ノー残業デー」に社員が定時で帰った会社はどれくらいあるだろうか…。ほとんどないのが実状だろう。同社では、形骸化しがちな残業削減の各施策に、トコトン本気で取り組む。いい加減な気持ちで臨む者はいない。だから、結果も短期でハッキリと表れている。

平成23年にスタートした残業削減プロジェクト。月2,049時間だった総残業時間は、月1,037時間とほぼ半減した。驚くべきはその期間。なんと、わずか8か月だ。しかも、経常利益は73,27万円から1億1,367億円と155%アップを実現。労働時間が減っていることを考えれば、数字以上の増益効果があったことになる。もちろん、現在も残業削減は継続され、各施策は順調に機能している。

機能する残業削減施策の秘密とは

なぜこれほどの短期で大幅残業削減を実現できたのか。同社では、残業削減のために特別な制度を導入しているわけでもなく、コストをかけているわけでもない。身の丈に合った、出来る範囲のことしか行っていない。ナゾは深まるばかりだが、理由は実にシンプルだ。

一之瀬氏

残業削減施策を明かす一之瀬氏

最大の成功要因は、社長の明確な意思表示。残業削減に取り組むきっかけとなったのが、人材派遣事業を手掛ける中で「求人の需給バランスが悪い。企業は要員が欲しいが、働く側は制限のある働き方しかできない。その原因はワーク・ライフバランスにあるのでは」と大西社長が着目したことにある。そこでまず、自社のワーク・ライフバランス改善に取り組むこと決めた社長は、自ら関連セミナーに通い、コンサルティングの資格を取得。先頭に立って、社員の残業削減を推進した。

通常、定時退社をしたい思いはあっても実行できないのは、上層部の冷たい視線の場合が多い。ところが、そのトップが自ら進んで、ワーク・ライフバランスの取り組みを進めるのだから、むしろ、ダラダラ残業にこそ罪悪感が発生する。つまり、社長が本気になった時点で、残業削減はほぼ成功に近づくといっていいのだ。その上で同社では、綿密な仕組みでプロジェクトを展開。全社員の業務の中に、残業削減を戦略的に組み込むことで取り組みを徹底させた。

施策を生きたものにするシンプルな取り組み

具体的には、毎日の朝夜メールと月一回のカエル会議だ。朝夜メールは、その日の業務内容とスケジュールをチーム全員に共有するもの。毎日、自分の業務に時間設定することは、仕事の進め方と真剣向き合うことにつながる。逆に時間設定がなく、業務に取り組むことは、定時の意味をなくすことであり、ダラダラと残業してしまう負の要素となる。カエル会議は、毎月ワーク・ライフバランスについて考えるための時間。チームメンバーと日々の働き方やアクションプランの成果を検証する。こうした取り組みを実践する上で、各チームに担当者を設け、アクションを周知する役目を担わせる点も見逃せない。

どうしても残業する人にはこんなのぼりを立てた辱めも

どうしても残業する人はこんなのぼりを立てて…

「人は自ずと時間を逆算して作業する傾向があります。21時に終わればいいと思っていれば、そういうペースで作業しますし、逆に定時で帰ると決めれば、それにあわせて作業を進めるものです。たとえ日々の時間設定が達成困難なものでも、やり続けることで自分の傾向が分かってきます。それによって、自分の適正ペースが分かりますから調整もしやすくなります。月一回のカエル会議は、目標を達成するためなら何をしてもいいことになっています。一か月を振り返り、どうすればもっと生産性をあげられるか、などを全員で共有し解析ます。これまでに業務分析、ムダとり会議、ほめミーティングなどが行われています」と人材ソリューション部ワーク・ライフバランスコンサルティング担当の一之瀬幸生氏は説明する。

至ってシンプルな施策だが、大きなポイントがある。あくまでもボトムアップであること。それから主体的に取り組むということだ。多くの社内施策が失敗する原因は、トップダウンで押し付けだから。同社の場合、確かにトップがけん引するが、あくまでも意思表明に過ぎない。実践するのは社員。そうしたスタンスが明確だから、社員はどんどん“自走”する。そもそも、残業は誰もができるだけしたくないわけで、モチベーションは自ずと高まる。

徹底した意識改革とシンプルで理にかなった仕組みにより、同社は大げさな仕掛けなしに見事、残業削減という難題をクリアしている。この取り組みは、なんと新たな事業創生にまで発展しているから驚きだ。そのものズバリ、ワーク・ライフバランスのコンサルティング事業だ。好きこそものの上手なれ、ではないが、同社の残業削減の取り組みが、いかに本気かを示す最大の“エビデンス”といえるトピックだろう。

労働環境改善の取り組みから新たな事業まで誕生

一之瀬氏は社内はもちろん、他社にもワークライフバランスを広げる事業も牽引する

社内はもちろん、他社にもワークライフバランスを広げる事業も牽引する一之瀬氏

実は一之瀬氏は、その事業専属の社員だ。「前職にいるときから、会社の労働環境改善を訴えてきました。そうした中でこの会社と出会い、いまは一社でも多くの企業にワーク・ライフバランスに真剣に取り組んでもらえるよう尽力しています」と日本の労働環境改善への熱い思いを口にする。こうした人材が社内に常駐していることも、同社のワーク・ライフバランスが順調にキープし続けられる要因といえるだろう。

残業削減によるワーク・ライフバランス改善は、成熟社会の日本にとって、いまや避けて通れない課題だ。取り組まずして経営を行えば、従業員が疲弊し、やがて離職者が増大するだけでなく、優秀な人材も集まらなくなる。ワーク・ライフバランスはそれくらい企業経営においても重要課題となりつつある。「これだけ重要性がいわれていても、まだまだ真剣に取り組む企業は少ないです」と最前線で現状を見つめる一之瀬氏は懸念する。長時間労働は、企業にとってデメリットの方が大きいことをしっかりと認識し、その削減は業績アップにつながる経営戦略である、という強い意識で未着手の企業は一刻も早く対策に取り組む必要がありそうだ。


【会社概要】
会社名:セントワークス株式会社
(英文名 SAINT-WORKS CORPORATION)
本社
住所:〒104-0032 東京都中央区八丁堀2-9-1 RBM東八重洲ビル7F
神戸オフィス
住所:〒650-0015 兵庫県神戸市中央区多聞通2-4-4 ブックローン神戸ビル東館2F
代表取締役  大西 徳雪
設立:平成18年11月1日
スタッフ数:111名(平成26年7月現在:派遣登録者を除く)
事業内容
・ 介護経営サポートシステム「SuisuiRemon」の販売
・ 訪問看護アセスメントシステム「看護のアイちゃん」の販売
・ 一般労働者派遣事業、有料職業紹介事業
・ 企業向けワーク・ライフバランスコンサルティングサービス
企業向け介護と仕事の両立支援サービス
・ 請求回収・総務・人事・情報システム関連業務に係るシェアードサービス

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について