企業風土

“偏差値”の基準が「感動」の会社

投稿日:2013年12月2日 / by

なにごとも“人材育成”につなげる秘密

novarese

(株)ノバレーゼ

人材育成は企業にとって重要な使命である。多くの企業が研修やセミナーなどへ社員を頻繁に派遣するなどし、人材のレベルアップに余念がない。ノバレーゼでは、なんと有給申請までもが、“人材育成”の一環となっている。さらにミーティングや全社集会までも…。一体、どういうことなのだろうか。躍進企業の秘密に迫った。

「面白ければ」通過する有休申請

野原氏

「チョモランマに登ります」、「モナコグランプリを見に行きます」、「春の園遊会に参加します」…。社員の武勇伝自慢やエイプリールフールネタではない。

実は、これらは同社で有給を申請する際の理由の数々なのだ。なんともふざけているが、これが同社の「アイディア休暇」の手続きの第一関門。おふざけではなく、紛れもない正式なフローの一環。従って、最終的には、上長が、「面白い」と判定しなければ、却下もありうる。

「もとは、一年に一度ぐらい“ずる休み”を公に認めましょうという発想から始まりました。有給取得率を向上させるためにも、知恵を絞り、楽しく有給の取得する。アイデアを同僚とランチなどで話しコミュニケーションを活性化させる、そんな思惑もあり、このような仕組みにしております。ただ、私どもは一生に一度の式典を感動させる仕事に従事しています。

自分達が感動できないのに人を感動させることは出来ません。上司や他のスタッフを喜ばせられるストーリーをつくることができるか、という鍛錬の意味合いもあります」と同社営業本部広報・宣伝ディビジョンディビジョンマネージャーの野原和歌氏は解説する。

その先にあるのは社員教育

直接的ではないものの、要するに「アイディア休暇」は社員教育の一環でもあるのだ。従って、ただ「面白い」だけでは申請は通らない。申請者のキャラクターや上長の嗜好、申請時の文章、添付画像などが、緻密に計算されていることが、申請通過のポイントとなってくる。

常に感動をもたらす社員ある社員は、「妻の素行調査をします」といって、有給申請を通過した。その内容は微妙だが、普段は非常にまじめなキャラとあって、提出された面白い画像とのギャップが大きく、地味ながらも上長の笑いのツボにズバリとはまったという。ある年配社員の場合は、「エグザイルのコンサートに出ます」と申請。ウケ狙いのありがちな理由だが、申請時のテキスト内容と画像などに妙なリアリティとユーモアがあふれ、腹を抱えさせた。

これだけをみれば、ちょっとおかしな休暇制度を導入した会社、で話は終わる。ところが、同社の場合、これだけで終わらない。例えば、月次のミーティング。数字報告など、シリアスな内容ながらも、司会進行役は、時事ネタやテーマに合わせて仮装をしてたり、仕込んだビデオ映像などの公開を行うなど、イベントのようなノリで行われるという。集大成となる全社集会にもなると、委員会が招集され、数ヶ月の準備期間を費やし、練りに練ったイベントして開催される。

「こうした機会を色々な場面で設けることで、社員のモチベーションのキープに繋がりますし、自然とどうしたら人を感動させることが出来るのか、を考える習慣が身につくと考えています。全社集会は、委員に選出されることが名誉にもなっているほどです」と野原氏は明かす。ともすればルーティンになりがちな業務を同社では、常に「感動」を意識させることで、取り組みがいのある仕事へと自然な形で転換しているのだ。

メリハリがあるからキープされるモチベーション

こうした日々の社内業務はもちろん、顧客に対しても目一杯、人の感動や幸せの為にエネルギーを放出する同社社員。だからこそ、同社ではエネルギーをしっかりと充電する「休み」に対しては、その取得を促進すべく様々な制度を用意する。前述のアイディア休暇のほか、記念日休暇、そして3年に一度の30日休暇というロングバケーションもある。

ノバレーゼ外観「長期休暇はとりづらいところだとは思いますが、休むことは非常に重要と考えています。人を感動させるのに自分自身が幸せでないとダメですからね。ですから弊社では誰かが抜けても、スタッフが互いに仕事を補填しあう環境を整えています。特徴的なのはメールアカウントを基本統一していること。

情報が一つの場所にとどまることがなく、全員で共有するので、他の社員が担当の代わりを努め、顧客に対応可能なのです」と野原氏。誰が抜けても問題なくカバーし合える状況を常にキープすることで、同社では、社員がしっかりと長期の休暇に没頭できる体制を整えている。

希望して入った会社でも、やる気を失い、早々にリタイアする若者が多い中、同社では全員が、いきいきと業務に全力投球している。なぜそんなことが可能なのか。そこに秘密はない。受け入れる会社も全力でやる気スイッチを押しているだけである。ブラックといわれる企業が、社員をコマのように使い捨てるのなら、その逆に社員をダイアの原石のように丹念に磨き上げる。優秀な人材の活用に苦慮する企業があるとすれば、立派な履歴書にあぐらをかいているのが、その元凶といえるのかもしれない…。


【“感動偏差値”が採用の基準のひとつ】
あらゆる業務は顧客の感動のため。そんな徹底ぶりさえある同社では、採用シーンも、普通とは異なる。例年応募者が数万人にも達する同社が選考時に重視するのは、感受性。独自に名づけた“感動偏差値”の高さが、採用の一つの基準となり、選別。選考は、面接ではなく、面談を通じて行われ、7回~8回面談をする学生も。社員との面談で学生が納得するまでトコトン話し合い、最後は、本人が入社を決断する。

 

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