企業風土

働き方の最高責任者「CWO」が誕生したワケ

投稿日:2014年5月30日 / by

働き方を担う役員CWOとは

Sansan株式会社
CWO 角川素久氏
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右肩上がりの時代が終焉し、企業でも新しい働き方への模索が始まっている。労働人口減少とIT進化による、人材最適化と時間と場所の概念消失への対応が大きなテーマだ。シェアNo.1のクラウド名刺管理・共有サービス『Sansan』と、50万人以上のユーザが利用する名刺管理アプリ『Eight』を開発し「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」ことをミッションに掲げるSansan(株)。同社には、日本でも例のないCWO(チーフ・ワークスタイル・オフィサー)という役職が存在する。経営レベルからミッション実現へ関与し、ダイナミックにそのタクトを振るうCWOとは何者なのか。その実態に迫る――。


なぜCWOが必要だったのか

働き方の革新に取り組む企業が増えている。最新テクノロジーを駆使し、ペーパレス化やBYOD、リモートワークなどを推進し、業務を効率化。できるだけ少ない労力で最大限の効果を上げるワークスタイルへのシフトを進める。もはや労務管理の域を超え、まさに「業務革新」の言葉にふさわしい取り組みへと進化している。そうした中で同社に誕生したCWOというポジション。一体どんな経緯で誕生したのか。

角川CWO 我々は、4年前に徳島県の神山町にサテライトオフィス『神山ラボ』を開設しました。東京の本社でも在宅勤務や平日-休日の取り換えなど、いろいろな勤務形態を試し、働き方の革新にチャレンジしてきました。とはいえ、そうした行動の全ては我々のミッション「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」達成のため。つまり、会社の生産性向上の妨げとなる課題を解決するための手段に過ぎず、もっといえば、効率が上がらなければいつでも止めていい、くらいの感覚でした。なぜなら、そこが我々の本業ではないからです。

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隣の執務室とは打って変わってリラックスムードが漂うフリースペース

ところが、そうした取り組みに対し、注目が集まる中で、我々の中にも少し変化が出てきたのです。働き方を革新するというミッション達成に神山ラボの取り組みは必要であり、それを続けていくことが、ミッションの象徴のひとつになり、会社としても、社員にとっても活力となるなんじゃないか。そうしたところへ考えが至った時、経営レベルからアクションする必要があると判断し、経営におけるポジションを改め、働き方に関与する役職としてCWOが誕生しました。

日本初の働き方の最高責任者CWO

経営レベルで業務革新や働き方改革に取り組む企業も昨今では珍しくなくなりつつある。専門のチームを結成し、業務改善に取り組む企業もある。それでも、経営層が、新たなポジションとして、「働き方」の名を冠した事例は、おそらく日本初だ。

角川CWO 世界を見渡してもおそらくほかにない役職だと思います。もっとも、もともと神山ラボに関する動きは私がみていましたので、新たなポジションによって、劇的に業務内容が変わることはなく、むしろ、内外に対し、明確に我々のメッセージをアピールする意味合いが強いかもしれません。特に内部に対しては、神山ラボを続けていくんだということも含め、会社として新しい働き方にチャレンジする本気度がしっかりと伝わったと感じています。

CWOが担うものとは

ワークスタイルに関する最高責任者、CWO。経営全体や財務や部門の最高責任者ならある程度何をどうするのかも想像できるが、働き方の最高責任者となるとなかなか役割がイメージできない。そもそも社内のどういった部分に携わるのだろうか…。

角川CWO 大きくは3つです。(1)神山ラボに関わる全て。(2)社内制度や人事制度。(3)オフィス関連。(1)については、神山ラボの運営、そこを活用しての活動全般です。神山ラボでの活動から新たな制度が生まれた事例もありますし、新しい働き方の実験の場として、神山ラボは様々な可能性を秘めています。(2)は、社内制度や人事制度の設計。「パパママ相談員」という制度では、私が社員個々の問題に対応し、仕事を円滑に進める上での障壁を取り除くことに注力しています。(3)のオフィスは、場所の選定から空間としてのデザイン設計まであらゆる部分を私がカバーします。

次世代のニオイが充満する機能性備えた斬新なオフィス

2014年3月に長年拠点としていた市ヶ谷から離れた現在の同社オフィス。青山に居を構える新オフィスの内部は、様々な趣向が凝らされ、働き方の革新を感じさせる仕掛けが満載。場所や内装に至るまで、オフィス全般に関与するCWOという存在があるからこそ実現した、次世代のニオイが充満する斬新な空間だ。

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写真左:神山ラボで効果抜群だったハンモックを東京にも導入した 写真右:社内に希少植物を備え、別天地感を演出している

角川CWO まず、引っ越し先ですが、いろいろと検討しました。前の場所、市ヶ谷は長くいましたので、近隣も検討しました。名刺管理という我々の業務との親和性から考えれば、大手町、丸の内、虎ノ門、あるいは渋谷というのも候補に入ってくるでしょう。しかし、われわれは「非連続の成長」を標ぼうし、常識にとらわれないスタンスでここまで成長を続けてきました。そこで、挙がったのが“我々に最もふさわしくない場所”。結果、意表をついて青山に新天地を求めることになりました。

オフィスデザインについてもいろいろと趣向を凝らしています。大きなポイントは「転地効果」を取り入れたことです。転地効果は、環境が変わることで心身が活発になる効果をいいます。神山ラボでの経験を通じて創造性や生産性向上につながることを実感し、都内のオフィスでも体感できるようデザインしました。各社員には通常のデスクがある執務室があるのですが、それとは別にワークスペースを設置。そこは、ゆったりとイスやデスクを配し、世界中から集めた希少植物を点在させ、ハンモックや屋根裏スペースを設置しています。本来であれば、このスペースを執務室にすれば、もっと広いスペースを確保できたのですが、転地効果によって生産性を高めることを優先しました。また、テレビ会議を利用して日本国内全域・海外にオンライン対応した防音環境完備の専用ブースも設けています。

CWOの存在意義

そもそもの会社の「ミッション」と「神山ラボ」。そして、そこから派生して誕生した「CWO」というポジション。各々だけをみれば、ユニークな「点」でしかないが、全ては密接に関連する。大きなポイントとなるのは、「神山ラボ」の存在だろう。別天地で会社の実験の場として機能し、新しい働き方の可能性をさまざまに模索し、創出する。その全権責任者として誕生したCWO。時間と場所の概念をなくした働き方の中心にいる角川CWOは、新しい働き方を推進する上でいま、日本最高レベルの環境にいるといえる。

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写真左:オフィスの様子 写真右:神山ラボとはモニターで常時つながっている

角川CWO 私の仕事は、会社の文化をつくることだと思っています。「神山ラボ」がきちんと機能することで、いろいろな可能性がみえてくる。なぜなら、あの片田舎でできることは、都心でも必ずできるからです。エンジニアはもちろんですが、神山ラボではIT技術を駆使することで営業の仕事まで成立しました。弊社の在宅勤務制度「イエーイ」はその実績を転換し、生まれたものです。研修では神山ラボに新入社員を2週間缶詰にし、“非日常”を体験させ、都会の研修では難しい常識の枠を取り除くことができています。

我々のモットーは、既成概念にとらわれずいろいろなことにチャレンジしていくこと。神山ラボはその象徴であり、重要な手段であり、重要な場としてこれからも存在し続けると思います。CWOの存在意義は、まさにそうしたことを実現し、キープし続けるメッセージといえるのかもしれません。

 

健康経営のカギを握るポジションとしてのCWOもある→
http://w-kawara.jp/motivation-up/cwo/


商 号: Sansan株式会社
所在地: (本社)〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-52-2
青山オーバルビル13F
(サテライトオフィス)徳島県 神山ラボ
設 立: 2007年6月11日
資本金等: 22億1,589万円(うち資本金 11億794万円)
代表者: 寺田 親弘(代表取締役社長)
役員構成:
代表取締役社長    寺田親弘
取締役        富岡圭
取締役        塩見賢治
取締役        角川素久
取締役        常樂諭
取締役        田中潤二
取締役(非常勤)    赤浦徹
監査役(非常勤)    鹿沼昭彦
事業内容:
名刺管理クラウドサービスの企画・開発・販売

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