企業風土

住宅が職場の働き方

投稿日:2013年11月6日 / by
オープンキューブ入り口

この階段の先がオフィス

都心オフィスビルから住居型へ

(株)オープンキューブ

オフィス以外で仕事をするワークスタイルには、在宅勤務やSOHOなどがある。多様な働き方を後押しする制度として、導入企業も拡大を続ける。オープンキューブの場合、なんと、オフィスそのものが住宅。まさにアットホームな職場は、社員や社風、業務効率にどんな影響を与えているのだろうか。東京・代々木の“お宅”を訪問し、実情を探った。

都心オフィスから転居した理由

都内の住宅街にたたずむ、大きめの一戸建て住宅。表札には代表の名前に加え、会社名が書かれた表札があるが、当然いわゆるオフィスの雰囲気は微塵も無い。決して、自宅兼事務所の家族経営的な零細企業ではなく、20人以上のスタッフが常駐するしっかりとしたIT系企業だ。

「弊社は、もともとは大手企業が入るような都心のオフィスビルが拠点でした。しかし、体制変更等に伴い、コスト削減も視野に入れ、転居を考えたときに、ただ賃料を下げるだけでは、社員の士気が下がる。そこで、大き目の一軒家というのも選択肢に入れ、物件探しを続ける中でここに出会いました」と同社田中鋼社長は説明する。

住宅型へ転居して何が変わったのか

田中社長

住居型にして悪いことはないという田中社長

場所は、渋谷にも新宿にも近い位置ながら、近隣に大きな公園があり、緑に囲まれた閑静な住宅地。高台にあって見晴らしもよく、絶好のロケーションだ。オフィスビル時代よりもフロア面積こそ狭くなったというが、部屋数も多く、20人近い東京本社の社員が働くには十分なスペースが確保されている。それでも賃料は約4分の一に抑えられたというから、かなりの掘り出しもの物件といえるだろう。

「今年1月にここへ来て10ヶ月ほどがたちましたが振り返ってみて悪いことは無いですね。一軒家にした狙いの一つには、なんらかの“化学反応”への期待もあります、やはり住宅ですから全体に雰囲気が緩やかになりましたね。スペースが狭くなったこともあり、社員間のコミュニケーション濃度が増した気もします。広い庭があるのですが、そこが喫煙スペースとなり、喫煙組もよりゆったりしたムードでコミュニケーションを図れているようですね」(田中社長)。

ビジネス街のオフィス空間は、洗練された快適さがある一方で、どうしてもピリピリした緊張感も漂いがち。仕事をする上で悪いことではないが、そうしたムードが過剰になることで力が十分に発揮されないことやストレスがたまりやすくなり、無用な衝突が起こることもあるだろう。同所は、紛れもなくオフィスであり、作業スペースだが、ベースが住居であることに加え、落ち着いた環境でもあるせいか、そうしたある種の殺伐感は微塵も感じられない。

住宅型にして生まれたメリット

台所

キッチンがあることで交流も深まる

オフィスでは、月に数回、キッチン設備を活用してランチも振舞われる。不定期ながら、夜にはちょっとした飲み会も開催されるという。こうしたコミュニケーションは、場所がオフィス街なら近隣の飲食エリアで各自バラバラとなりがちだが、同社ではキッチンが磁場となり、自然な流れで社員の交流が深まる。まさにアットホームゆえのつながりの増強効果といえる。

この効果は、業務面にも波及している。緑が美しい広めの庭は、夏場のバーベキュー大会の定位置となっているそうだが、営業担当がクライアントへのおもてなしに効果的に活用し、成果を出しているのだ。

住居型オフィスが持つ可能性とは

BBQ

庭ではクライアントへのおもてなしバーべキューも

「通常の営業ですとオフィスへ担当者に来ていただき、商談をして終わり。最近は飲みに行くということも少なくなっています。しかし、バーベキューが出来るということで、誘いやすいですし、興味を持っていただける。ですから、遅めに商談時間を設定し、その後バーベキューでおもてなしということをさせて頂いています。こういう形ですので、バーベキュータイムからは商談メンバーとは別のクライアント側社員にも合流いただくケースもあります。弊社の社員もオフィスに居ますから、それで親睦が図れ、より深い関係を築くことにも役立っています」と田中社長。住居型ならではの、自前のおもてなしによって、クライアントとの交流も一歩踏み込んだものになっているのだ。

住居そのものをオフィスにするという同社の実験的試み。そこからみえるのは、環境が及ぼす作業への影響だ。ゆったりと落ち着ける住居型オフィスは、オフィス街の洗練された空間からピリピリ感を取り除き、ストレスを緩和する。緊張感の欠落が懸念されるが、現実にはオフィスであり、杞憂といえる。その結果、作業効率も向上する――。オフィス仕様でないことによる不具合もゼロではない点や会社規模によっては現実的でないなど、課題もありそうだが、総合的には、新しいオフィスの形として、十分検討に値する魅力があるといえそうである。


<住居型で困ったこと>

2段ベッドオフィス移転のもともとの目的はコスト削減。そのため、オフィス仕様へ変更する設備投資はほとんど行っていない。もちろん、お風呂、仮眠室もあり、やむを得ず泊まり作業になった場合や京都支社のスタッフが上京した際などに活用されている。住居としては豪邸なので、設備も万全だが、帰りの戸締りが一苦労なんだとか…。

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