大企業で不祥事が続く本当の意味【瓦の目】
なぜ大企業で不祥事が続いているのか
大問題となった東芝の不正会計、三井不動産グループの横浜のマンションおよび東洋ゴムのデータ偽装…絶対的に信頼できるブランドの威信がガラガラと崩れる事件が、次々と明るみになっている。かつて社会を揺るがした耐震偽装マンションの事件とは明らかに違うなにかが、その背後に漂っているように思えてならない。
名だたる大企業でなぜ、こんな裏切り行為が続くのか。実は、大企業とて、不祥事がなかったわけではない。ただ、表沙汰になっていないだけだ。企業の事情に詳しい専門家は「大企業ほど隠蔽が得意です。社員にもわからないよう揉み消します」と証言している。大きいがゆえに失うものが多い。だからこそ、ブランド死守には手段を択ばない。
東芝の事件では猛烈なパワハラがその背景にあることが明かになっている。ブランドの威信を死守するために手段を択ばないような空気が充満し、現場の人間が不正してでも、帳尻を合わせる必要があったのがその元凶だ。他の2件の真相は不明だが、同じようなメカニズムだったことは想像に難くない。こうしたことは、従来ならもみ消されていた可能性がある。なぜ、その堅牢なハズのブラックボックスの蓋が開いてしまったのか…。
問題の裏側にある見落とせないポイント
企業ブランドは長い年月をかけ、信頼を積み重ねることで構築される。もちろん、それを担うのは人だ。一方、強固に築き上げられた信頼も、裏切り行為があれば、ほんの一瞬で崩壊する。築くのは途方もなく大変だが、極めて脆い、それがブランドというものだ。人がそれを担う以上、その認識は、やり過ぎるほどに徹底されねばならない。それには、“余裕”がなければならない。だが、閉塞感の漂う経済情勢の中で、そうした余力は、大企業とてもはやない。
貧すれば鈍するという。企業が社会に貢献し、さらに利益も上げ続けるためには、そこで働く従業員が幸福でなければ、話にならない。大企業で続く不祥事は、そこで働く社員が不幸になっている裏返しといえるだろう。もはや、大企業といえど安泰ではないという当たり前の事実。そして、従来の成功法則が、ほとんど無意味になるほど、社会が大きな転換点に差し掛かっているという現実。連続する大企業の不祥事を、単に点としてみるだけでは、問題の本質を見誤ってしまう…。