企業風土

従業員エンゲージメントの高い会社のつくり方

投稿日:2014年6月5日 / by

会社に愛着がわく仕掛けとはvoyage-AJITO1

(株)VOYAGE GROUP
ロイヤリティからエンゲージメントへ――。企業と社員の理想の関係が、変わりつつある。会社に対する忠誠心が評価の主軸であり、業績にも貢献する時代は終焉した。代わって、重要な指標となっているのが「エンゲージメント」というキーワード。“愛着”ともいわれる会社との密接な距離感を持つ社員が多いほど、これからの時代を突き抜けられる。オフィスをシップと呼び、独特な内装が目立つ(株)VOYAGE GROUP。そこでは、クルーと呼ばれる社員が、会社への愛着たっぷりにイキイキと働く。


ボヤージュ

コミュニケーションが弾む執務室

学生が経営理念に引き寄せられるワケ

「御社の経営理念に共鳴いたしました」。

採用面接で、面接官の目をギッと見て、力強く言い切る学生は少なくないだろう。その言葉にウソはない。しかし、「共鳴」という言葉にどんな意味を込めているのか。それによっては、その学生が首尾よく採用試験を突破し、入社できた場合でも、ギャップが発生し、やがて離職へとつながりかねない…。

ボヤージュグループへ入社を希望する学生は、初めから経営理念に引き寄せられ集まってくる。なぜそんなことが可能なのか。同社が、経営理念を字面だけでなく、「形」として、示しているからだ。多感な学生にとっては、最もシンプルで分かりやすい。だから、学生は体で経営理念を理解し、純粋な気持ちでそこへ引き寄せられる。

インパクトある施策は本気の経営メッセージゆえ

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理念体現の狙いを説明する青柳氏

「経営理念というのは、言葉としてはもちろん存在するわけですが、どんなにすばらしいことが書いてあっても真の意味でピンと来ることはあまりない。だから我々は、実際の形としても経営理念を落とし込みたかった。それによって、『こんなこともこの会社するんだ、出来るんだ』ということを学生に感覚としても感じてもらえればと考えています」と同社取締役CCOの青柳智士氏は理念体現の狙いを説明する。

最もインパクトがあり、分かりやすい事例は、「アイランド」名づけられたインターンシップだろう。変わったインターシップは数あれど、その場所が無人島というのは極めて珍しい。「アイランドについては正直、人材獲得という側面はあまり考えていません。もちろん、マッチする人がいれば検討はしますが、それ以上に弊社を知ってもらうためのメッセージ的な意味合いの方が強いですね」と青柳氏は開催意図を説明する。こうした発想そのものが、同社の方向性であり、イズムなのだ。

オフィスが象徴する経営理念

もっともこうしたイベント風の研修は、開催するだけなら他社でも可能だ。同社の経営理念体現が筋金入りであり、戦略的であることは、独特のオフィスが証明しているといえる。同社ではオフィスをシップ、社員をクルーと呼ぶ。受け付けにある客船を模した社内Bar「AJITO」は、その象徴だ。これが単に話題性を当て込んでいるなら、その輝きは一瞬であり、早々に沈没船と化していただろう。だが、2007年の設置から7年たった今もデンと君臨し、社員に有効活用されている事実は、そこに込められたメッセージを全社員がしっかりと理解しているからに他ならない。

アイランドのほか、エンジニア研修、新規事業立案研修、シェアオフィスの無料開放…など、同社は学生支援活動に労を惜しまない。それは、多くの社員が学生と接することを意味する。入社前から社員と触れ合う機会が多いことに加え、形で経営理念を理解しているため、新人であっても入社後すぐになじみ、自ずと社内での会話が弾む。社内でそうした機会が増えるよう、オフィスの導線設計にまで工夫を凝らしているというから、憎いほどである。

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こうした土壌の上に360度の評価制度や新規事業提案制度、業務やサービス改善の提案制度、そして運動会などの制度やイベントがある。制度ありきというよりむしろ、風土ありき。だから、組織は自ずと活性化し、アイディアや事業がどこからともなく湧き出してくる。まさに「VOYAGE」号のクルーが、各々の使命を十分に認識し、いきいきと自由に新時代を切り開くように、全員がひとつの方向をめざし、快調に航海しているイメージだ。

セレンディピティから生まれるイノベーション

「我々が企業文化を考える上で大事にしているのはセレンディピティ。アイランドにしてもシェアオフィスの解放にしても運動会にしてもオフィスの設計にしても“求めずして思わぬ発見を誘発する”ことを意識しています。

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なぜかといえば、インターネット業界だからこそ、ネットで完結しない関係づくりや取組が、イノベーションの連鎖の確率を高める一つと考えるからです」と青柳氏は、諸々の施策の内側に込める緻密な狙いを明かす。
会社に「満足」している社員は珍しくないだろう。給料、職場環境、仕事内容…。諸々の待遇にそれなりに満足し、会社のために頑張る。では、会社に「愛着」がある社員となるとどうだろう。会社のことが好きで離れがたく感じる。言い換えれば、会社とわが子のような感覚で結びつく――。企業とその従業員の関係において、そうした結びつきは最高レベルにあるといえる。業績が良くなるのは自明といえるだろう。

エンゲージメントを強める秘訣とは

前者は「ロイヤリティ」、後者は「エンゲージメント」という言葉で説明できる。従来の企業なら、忠誠心がそのまま貢献度に直結した。だが、もはや、従順なだけでは戦力としてカウントできない。価値を生み出す社員の集合体でなければ、企業自体が生き残れない時代へと状況がシフトしているからだ。

事実、その発展形といえる「高エンゲージメント」な従業員が多い企業は、業績が高いといわれる。社員の能力を最大化する概念とされる「エンゲージメント」。どうすれば、社員が会社への忠誠心を超越し、愛着を持つまでに至るのか…。難解な問いに対する明快な答えが、同社の会社運営の舵捌きに凝縮されている。


【会社概要】
会社名: 株式会社VOYAGE GROUP
代表者: 代表取締役CEO 宇佐美 進典
取締役:
執行役員
監査役
取締役CFO永岡 英則
取締役CCO青柳 智士
取締役古谷 和幸
取締役佐野 敏毅
本社所在地 :〒150-0045
東京都渋谷区神泉町8-16 渋谷ファーストプレイス1F・6F・7F・8F
設立: 1999年10月8日
資本金: 3億7,262万円(資本準備金を含まない)
従業員数 313名(2013年9月末時点)
事業内容 メディア関連事業、アドテクノロジー関連事業など

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