企業風土

最適な労働時間は何時間なのか【瓦の目】

投稿日:2016年5月13日 / by

8時間労働は本当に最適なのか

味の素が労働時間を7時間にすることを発表した。8時間が一般的であることを考えれば、なかなかの思い切りだ。もっとも、残業ゼロの会社もあれば、6時間労働の会社もある。4時間正社員を認める企業もある。それらいずれもが、業績を向上させているのだから、8時間という労働時間が本当に適正なのかを考えた方がいい時期に来ているのかもしれない。

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なぜ労働時間が8時になったのかについては諸説ある。最も有力なのは、24時間を「労働」、「休息」、「遊興」の3つに分け、等分したというもの。長い歴史の中では、10時間以上の労働時間の時代もあり、8時間労働は、労使の闘争の末に勝ち取った権利ともいえる。試行錯誤の中、最も生産性が高いのが8時間労働だったという研究結果もある。もっとも、それらは農工業が主体の時代のことであり、ネットが普及し、働く環境が様変わりしたいま、8時間にこだわる理由はどこにもない。

では、労働時間は何時間が適正なのか。これについては、会社によりけりということになる。確実いえるのは、どれだけのアウトプットをし、収益があれば、会社が永続的に存続出来るのかをベースに、それに費やされる時間を計算して弾き出す必要があるということだ。これを明確に出すには、まずビジネスモデルが強固でなければならない。人材の優劣で売り上げが変動するようでは、「とりあえず長時間労働で担保しておこう」となりかねない。だからといって、業務がルーティン化しては、社員のモチベーションが保てない。

残業に罰則をつけることは有効なのか

折衷案があるとすれば、仕事の速い人は、終わり次第終業としてOK。もっと稼ぎたければ、残りの労働時間に割高の“早業代”をつけ、設定労働時間一杯働いてもよし、というシステムとするのもひとつだろう。あくまで残業をなくすことを主体とするなら、残業すれば罰則があるようにするのもありかもしれない。いずれにせよ、長時間労働問題にメスを入れるなら、業務を細かく分解し、その所要時間を明確にする必要はあるだろう。そう考えると、そうした作業が非常に面倒で難航を極めることは容易に想像がつく。こんな面倒なことをするなら今まで通りでいい、となっても不思議はない。

いつまでも長時間労働がなくならない元凶が、ここまで問題の奥深くまでメスを入れなければ合理的に労働時間を算定できないからだとすれば、なんとも悩ましい。いっそのこと、時間の上限を決め、全社員を裁量労働制とするのが、手っ取り早いかも、とさえ思ったりもする。「時間より成果」。言うは易し、行うは難し。日本企業はいま、産業および社会構造の変化に直面し、開けたくない蓋を開ける必要に迫られている…。

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