働き方

企業規模で転職先を選ぶことが愚かな理由とは

入社後活躍研究所調査で分かった転職のその後

なぜ転職先で活躍できないのか…。活躍すれば定着にもつながるが、そうでなければ、根を下ろす前に去ることになりかねない。エン・ジャパン(株)の「入社後活躍研究所」は、選定や選考の決裁権があり、業務・作業を担当している人を対象に、転職者の入社後の活躍・定着について調査。その結果を報告した。

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転職は、企業にとっては即戦力を補強する重要な人事戦略。転職者にとっては、キャリアップのための大きなステップ。互いにとって、ターニングポイントなるアクションだ。うまくいけば、双方ハッピー。逆にミスマッチが起これば、互いに不幸になる。お互い、十分に精査・検討しているはずだが、後者のケースが後を絶たない…。

同調査で、2年以内に中途採用した正社員の定着度は、「100%」が14%、「80%以上」が35%、「60%以上」31%で、どうしてもベストマッチは難しい状況のようだ。経歴や面接で見極めたつもりでも、実際の職場に漂う空気を伝え、知るには限界がある。その意味では8割以上でも十分に合格点といえるかもしれない。

それにしても、何が中途入社の人材の活躍および定着を阻害するのか。衛生要因では、「給与への不満」が19.1%でトップ、次いで「残業時間が多い」が15%と続いている。この辺りは事前の採用プロセスで認識し合っているハズだが、入社後の実際の業務内容との比較で給与に見合わないと考えている可能性がある。「残業時間が多い」が上位に来ていることからもそのことが裏付けられているといえる。

動機づけ要因では、トップは「職務内容とのミスマッチ」が27.5%でトップ。次いで「職場の雰囲気への不満」が22.1%で続いている。この2つをもって、見解の相違というのは簡単だが、転職者にとっては致命的な不満といえるだろう。雰囲気は、事前には完全には知り様がないので仕方のない面もあるが、職務内容のミスマッチは、企業側の期待と転職者のスキルの認識の不一致と考えられ、面接方法や入社前のスキルテストや実地研修など対策はありそうだ。

企業規模が小さいほどミスマッチ率が低い現実

面白いのは、従業員規模別で結果が違っている点だ。「50人以下」の企業では、職務内容や職種のミスマッチが非常に低く、「101人~500人」では「事業内容が合わなかった」が全体平均の21.5%に対し、29.2%、「社風に不満があった」は全体平均15%に対し、21.5%と非常に高くなっている。「501人以上」では、衛生面でほとんどのポイントが平均を上回っていた。

このことから考察されるのは、小さな会社に対しては転職希望者がやりたいことが明確で、企業側も戦力として全面的に期待しているということ。逆に、中規模から大規模の企業では、組織統制上どうしても制約が多く、一方で転職希望者の会社に対する期待値が高く、結果的にミスマッチが起こりやすいということだ。さらにいえば、やりたいことよりも、会社の規模や認知度に魅かれ、入社を希望している節がある。

まさに恋愛に通じる、企業と転職者の相関関係といえそうだ。外見に魅かれて交際を始めても、いずれ性格の不一致で破たんする。逆に性格の相性がよく、交際を始めると、結婚にまで発展する可能性が高い――。何事もそうだが、本質をしっかりと見極めなければ、その先には不幸が待っていること多いことをしっかりと認識しておく必要がありそうだ。

なお、同社では、独自の動機づけ理論を提唱している。その理論では、給与や福利厚生などの衛生要因は、「不満を予防するだけの歯止めの役しか果たさない」とする一方、人間関係や共感できる社会性などの動機づけ要因は、仕事へのやる気を増大させるとしている。まさに恋愛における外見と性格の関係そのもので、興味深い理論といえる。

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