国東時間
【国東時間】
休日は釣りや山歩き、読書など、ゆったり休み、都会の時間に合わせるのでなく、その土地固有の時間に合わせてオリジナルな仕事をしていくスタイル。
大分県国東市のものづくり企業「アキ工作社」が、こうした考えに基づき、クリエイティブで効率のいい仕事、そしてより精度の高い製品づくりをめざし、週休三日制を導入。社員の意欲や責任感を強めるなど、実質的な出来高アップにもつながるなど、効果を出し、他企業にも広がっている。
国東という場所から国東時間が生まれた
国東市は、大分県北東部の国東半島東部に位置する、人口3万人ほどの地域だ。古くから国東独特の文化「六郷満山文化」が栄え発展してきた。その名残として、現在でも半島の至る所に遺跡が点在している。
また、伝統の祭りも息づいており、中には国指定重要文化財に指定される「修正鬼会」という火祭りもある。このように、国東市では、独自に作り上げてきた文化が今なお大切に受け継がれている。
国東時間は週休3日制
国東時間を取り入れた場合、週休3日制となる。では、勤務時間もそれに合わせて激減するのかと言えば、それは違う。
通常の会社は、月曜日から金曜日まで1日8時間、1週間で40時間の勤務時間となる。国東時間を取り入れた場合、1日8時間に2時間プラスして、月曜日から木曜日まで1日10時間、1週間で40時間の勤務時間だ。つまり、1週間の勤務時間は従来と変わりはない。
国東時間が業績15%増をもたらした
自由に使える日が増えるということは、ワーカーにどのようなメリットをもたらすのだろうか。
国東時間を実践している「アキ工作社」は、段ボールクラフトの製造・販売を行う。このような創造性が必要とされる仕事において、インプットのために使える日数を増やすことは、有効である。
実際「アキ工作社」では、業績が15%アップしたという。デザイナーは、休日に自身のアイデアをしっくりと練ったり、趣味に没頭したりと、結果的に仕事に還元することができるクリエイティビティを伸ばしているようだ。
国東時間を取り入れる会社が増えている
同じ国東市にある会社2社が、国東時間の導入を決めた。
1社は特別養護老人ホームで、週休3日制を適用し、交代制で働く職員の1日の勤務時間を延長した。このことで職員は、プライベートに使える日数が増え、仕事と家庭の両立もしやすくなった。
しかし、1日に働く職員数が減ってしまった結果、少人数で仕事をこなすことが困難になり、職員から「入居者の満足度が低下してしまうのではないか」との声が上がった。そして同所は、2ヵ月ほどで国東時間適用の中止を決定した。
もう1社はレストランで、店の定休日を週2日に増やした。その分休日は、プライベートな時間にするだけでなく、メニュー開発や改善などに充てると言う。
営業時間は1日減ったが、このことで客足が遠のくことはなく、むしろ順調なようだ。
このような例を見てみると、国東時間を取り入れることで、伸びる会社もその逆もあるようだ。業種業態によって違い、また社員がその休日をどのように有効に利用することができるかによっても大きく変わるだろう。
国東時間は新しい働き方の先駆け
国東時間は国東市で生まれた働き方だが、今後は全国でこのように柔軟な働き方が増えていくだろう。国東時間をそのまま適用するのではなく、その会社や社員に合った働き方を考え、従来の働き方に寄らない自由な勤務形態が多くなるはずだ。
どの会社もそうだから1日8時間労働という考え方は、もう古い。国東時間の例から見て分かるように、適当な働き方というのは、個人によっても会社によっても本来まったく違うはずなのだ。