インタビュー

記者からの転身を経て、気付いた<良い記事の基準>とは

投稿日:2017年1月12日 / by 瓦版編集部

スポーツ紙記者から“プレーヤー”を経てみえたもの

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キャリアのスタートは全国展開するスポーツ新聞社の記者。北海道で行なわれる様々な競技を取材してきた。取材では、選手や競技へ感情移入。特に高校野球の地方予選には熱が入った。その結果……。現在は、防災コンサルタント兼フリーランスとして働くベテラン・ライターの塙さん。転身に至るプロセスの中で、ライターとして新たにみえてきたものがある。(powered by THE LANCER編集部)

全国スポーツ新聞の記者としてスタートしたライター人生

ライターとしての始まりは、全国スポーツ新聞の北海道での記者でした。高校野球の地方大会だったり、女子サッカーの黎明期、中体連、インターハイ予選…それこそありとあらゆる一般スポーツから、スキーアルペン、ジャンプのW杯など、多くのスポーツ取材を経験しました。

なかでも高校野球の地方予選には一番惹かれました。1回戦でもいろいろな出来事が起こったり、平凡なコールドゲームにとんでもないドラマが隠されていたりするのです。

一方で、北海道には「世界」を意識して戦う冬季スポーツのアスリート達もいます。こうした「地方」と「世界」の取材対象の振幅の大きさが、自分には随分役立ったと感じています。

記者よりも、プレイヤーになってみたい

多くのアスリートが悲喜こもごものゲーム、競技の場面を繰り広げ、スポーツの多くの感動の場面に居合わせることができました。しかし、同時にライターとしては隔絶した気持ちを感じるようになっていきました。

対象とするアスリートに深く感情的に移入したとしても、しょせんライターは本当の意味で共感することはできないのではないか。彼、彼女らが、送ってきた日常の練習での高揚感、レースでの達成感。ライターがたまに選手と時間を共有しても、同じ世界には入れないのではないか。

次第にデスク業なども多くなり、現場に出ることが少なくなるにつれ、そんな思いを強く感じるようになったのです。ライターは「観察者」です。感じたのは「プレーヤーになってみたい」でした。

もちろん、私自身がスポーツ選手になって競技の世界に入るわけではありません。それは、スポーツに限らず、イベント、事業に携わり、直接「当事者」として自分もプレーヤーになりたいという思いでした。

ベンチャー企業で働いて

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ある時、ご縁があって、あるベンチャー企業の企画担当として働き始めました。「当事者になりたい」との希望があったため、喜んでその世界に入りました。

地球環境に優しい機器の開発製造会社です。オゾン層破壊や地球温暖化問題を解決する機器の開発、製造、販売企画と、多くの会社と交渉し、プレゼン資料を作ってきました。スポーツの世界ではないものの、基本的な思考、作業は同じでした。

資料を作るためには、ライターとしての経験が役立ちました。ある意味、プレゼン資料を作ることは、ライターとしての資質を伸ばすことにも役立つかもしれません。読み手にいかに分かりやすく作るか、が何より要求されるからです。ただし、日本社会でベンチャー企業がなかなか育ちにくい土壌も体験しました。

業界の既得権の壁、ベンチャー企業が必ず陥る資本の枯渇、それに対する支援制度の少なさ。なにより、実は一番大きいのはベンチャー側の陥りやすい意識でした。

「いい物なんだから、売れるはずだ」。これが、ベンチャー起業した社長、技術者の基本的な考えです。しかし、世の中の理屈は違います。「いい物が売れるのではなくて、売れるものがいい物」。

マーケットの需要をつかみきれずにスタートしてしまい、軌道修正できないままつぶれてしまうベンチャーが多いのです。

ライターとして「読まれる物」とは

現在、私はある会社のマンション用の防災対策の事業を手伝っています。地震などの災害が起こった後、マンション内で自活するための生活用水を確保するビジネスです。これも、マンション居住者、管理組合などと話をしながら、欲しいと思われる商品に仕上げる仕事をしています。

最近、こうした商品と読み物の目線は同じなんだと、つくづく感じています。「いい記事が読まれるのではなく、読まれるものがいい記事」と。

2015年5月に、ランサーズに登録。少しずつ書き始めました。改めて、「情報」は、記事の「部品」だったり「商品」そのものであることを、強く感じています。「物づくりの国」日本で、ライターは職人であったり、マーケッターであること。そんな新しいライターが魅力的に思える今日このごろです。

▽フリーランスの情報発信メディア「THE LANCER」より転載


<プロフィール>塙正典

スポーツ新聞の記者、デスクを経験。趣味はフライフィッシングで、北海道のニジマスに憧れ。現在、マンション防災対策の仕事を手伝いながら、ライター稼業を継続中。農業、バイオマス、ガーデニングにも興味ありのアウトドア派

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