インタビュー

フリーランス美容師の普及を目指すサロンの思惑とは

投稿日:2016年3月17日 / by

株式会社turba

代表取締役 渋川綾氏
取締役 川口陽二氏

新たなステージへ向かいつつある美容室の働き方。東京・表参道、恵比寿を拠点とするサロン「ORO」で働く美容師は、全員がフリーランスだ。前近代的な働き方が幅を利かす美容師という職業にあって、最先端ともいえるワークスタイル。じわじわと広がる美容師の「フリーランス」化の動きについて、その普及を推進する同サロンオーナー幹部に、実態や可能性を聞いた。

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フリーランス美容師の普及を目指す渋川氏(左)と川口氏

全員がフリーランスの美容室

志望者数の減少などもあり、美容師の就労環境改善に取り組むサロンが増加傾向にある。そうした中、さらに一歩踏み込んだアクションをする美容室がある。東京・表参道、恵比寿を拠点とするサロン「ORO」だ。同サロンのスタッフは、なんと全員がフリーランス。つまり、基本、両者の関係は、場所のオーナーとフリーの美容師に過ぎない。報酬についても、サロン側は、経費として売り上げの4割をフリーランス美容師から徴収するだけだ。

「実は、この形式で、直ぐに会社が儲かるとうことはありません。むしろ、目的としては、フリーランスの美容師という働き方がありますよ、ということを多くの美容師に知ってもらいたいんです。サロンで頑張って働いて、稼げるようになり、やがて独立するだけがその選択肢ではないんです」とサロンオーナーで、(株)turba代表の渋川綾氏はフリーランス美容師普及への熱い思いを明かす。

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専門学校を経て美容室へ就職する人の多くは、その後キャリアを積み上げ、売り上げを上げるようになり、やがては独立するというケースが多い。確かに美容師のひとつの成功へのルートに違いない。だが、ようやく一国一城の主となっても、現実は人件費や家賃などの固定費に圧迫され、集客も思うようにいかず、苦境に立たされるケースも少なくない。だからといって、社員として働きつづけても、手取りは決して多くなく、労多くして実少なし、という現実がある。だからこそ、渋川氏は力説する。

なぜ美容師はフリーランスがマッチするのか

「私自身は、幸運にも美容師になってすぐに多くの売り上げを上げることが出来ました。でも、それに対してなぜこんなに報酬が少ないんだろうという思いがありました。そのまま独立という道もありますが、その前にフリーランスになれば、固定費もかけずに頑張った分だけ稼ぐことができる。だから、独立の前のひとつの選択肢としてでも、フリーランス美容師という選択肢があるんだよ、ということを知って、希望を持って美容師を続けて欲しいんです」。

渋川氏が美容師継続を訴える裏には、その高い転職率がある。3年以内に限れば、その数はなんと80%にも上る。その後の転職活動がうまくいかないことも少なくなく、渋川氏は美容師を取り巻く環境の厳しさを深刻にとらえている。結婚・出産で辞める人の割合も高く、そのまま、美容師自体から、撤退する人も多いといい、志願者減の現状と併せても、無視できない危機的な状況となっている。

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その解決策のひとつが、「フリーランス美容師」という選択肢だ。同社がサポートするのは、フリーランスとして働く場所の提供とSNSを活用した集客ノウハウおよび、社会保険や確定申告に関する講座の開催など。売り上げの安定こそ保証できないが、どこにも属さない孤独なフリーランスに比べれば、美容師として活動する環境が整備されており、精神的にも安心感がある。なによりも、美容師以外の活動も自由ということが最大のメリットといえるだろう。実際、同サロンにもカメラマンやブロガー、商品開発など、他の仕事で収入を得ているダブルワーカーも多く、例外なく充実した日々を過ごしているという。

フリーになって拡がったさまざまな可能性

「私は10年以上、フリーランスの美容師をしていますが、言いたいのは、収入面はもちろんですが、人生まで損しないで欲しいということ。サロンに雇用され、さまざまな拘束の中で働き続ける先に、本当に明るい未来があるのか…。美容師の人は他にもいろいろな才能を持っていたりすると思うのですが、閉じられた世界にいるとそれを発揮しれない。フリーになれば、時間は自由ですし、他の仕事をすることももちろんOK。いろいろな可能性が拡がります」という川口氏は、同社の取締役で現役の美容師ながら、独学でプログラミングを学び、管理用の専用アプリを自作。言葉通り、自らの可能性を最大限に引き出しながら、人生を謳歌している。

フリーランスという雇用形態をとる美容師の「プロ化」を推奨する2人は、いまだ前近代的ともいわれる業界にあって、まさに革命児といえる。将来的には、「フリーランス美容師が主流になれば」とその胸には大きな野望も抱く。まずは、まだまだ認知度の低い、「フリー美容師」の認知向上に全力で突き進むことが当面の目標だが、美容業界の働き方変革への思いにブレはない。業種・業界を問わず、様々な分野で加速する働き方革命。根底には社会構造の変化もあるだけに、もはや、その動きには抗いようはないといえそうだ。

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