インタビュー

美容業界の歪んだ人材構造に働き方変革と雇用形態の柔軟性で切り込む

投稿日:2016年10月12日 / by 瓦版編集部

(株)アルテサロンホールディングス
会長 吉原直樹氏

美容業界を担う美容師は、年々成り手が減少し、人材不足が顕在化しつつある。元凶はその歪んだ人材構造にある。この難題に、ビジネスモデルで果敢に切り込むのが、Ashなどを運営する(株)アルテサロンホールディングス会長の吉原直樹氏。メンテナンス系の新業態『Choki Peta』は、効率化を推し進めることで、9割をパートで回す。今後数年で、その出店を加速させる先に同氏が見据えるのは、休眠・潜在美容師の最大化による人材構造の“健全化”だ。
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新業態に注力する狙い

美容業界の人材は、減少傾向に歯止めがかからない。トップになるのは限られた人材のみ。30歳を過ぎても続けていくには、収入がおぼつかない。女性の場合、出産や育児で一度職場を離れると、技術が古くなり、復帰も困難だ。美容師免許を持ちながら美容師の仕事についていない“休眠美容師”は約76万人ともいわれる。こうした状況の中、2011年にメンテナンスニーズに着目し、同社が参入した新業態がChoki Peta。2016年までに順調に成長を続け、来年以降は、投資を強化。一気に攻めに出る。

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吉原 美容業界は、消費マインドが冷え込む中で、節約意識の高まりや来店サイクルの長期化などで売り上げの微減傾向が続いている。そうした中で、サロンはデザイン系の付加価値型とメンテナンスサロンの二極化が進んでいる。メインブランドのAshはその質を高め、メンテンナンスサロンのChoki Petaは多様化する顧客ニーズに応えるサロンとして弊社は今後、効率性と量的拡大を追求していく。

潜在美容師が滞留する業界の人材構造にカットイン

Choki Petaの拡大戦略の背景には、節約志向の顧客ニーズに応える目的があるとする吉原氏。実はそれ以外にもう一つのミッションがある。約76万人ともいわれる潜在・休眠美容師の掘り起しだ。

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吉原 気軽に足を運べるメンテンナンスサロンの顧客は40歳以上が中心。一方で、現役の美容師はそれ以下の年齢層がほとんど。顧客にとっては、自分に年齢が近い美容師にサービスを受ける方がコミュニケーションの点でも好ましいが、そうした年配美容師の多くは“休眠”している。ここにまさに顧客ニーズと雇用ニーズの一致がある。Choki Petaは、カットとカラーのみという業態。受け付けには券売機を設置、シャンプーにはオートシャンプーを導入し、スタッフの業務負荷を最小限にしている。可能な限り生産性を高め、効率的に働ける職場なので、子育て中のママさん美容師から体力的に難しい中高年の美容師まで幅広い層が活躍できる。特に40代以降の休眠美容師にとって復帰への障壁となる技術下落への不安も、まずはカラーから入ってもらうことで、スムースに戻れると考えている。カットについては、定期研修等によって徐々に感覚を取り戻してもらえばいい。

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ビジネスモデルと自動化の推進で解消する人材のよじれ

美容師の場合、さらなる障壁として、就業時間の長さや土日出勤などがネックになる。子育て中ならなおさらだ。効率化など労働環境を改善したとはいえ、すでに別の仕事についている人材にとって、やはり復帰へのハードルは高そうだが、その点はどうクリアするのか。

吉原 9割をパートタイムで対応している。1日3時間からでも、週一の勤務でもOKだ。時給制なので、取り決めた時間に帰れるし、土日もシフトの調整で休める。それでも時給は1,350円の実績もある。月ごとに変動するが、繁閑を店舗ごとに見極め、人員調整することで、生産性を高められれば、翌月の時給をアップするシステムを導入している。それを有効活用することで、メリハリのある働き方が可能だ。各自のライフプランにあった働き方が選択できる美容室になっている。

2020年までに新業態の100店舗超え目指す

美容業界の“負”の部分をビジネスモデルとテクノロージの活用で最小限に抑え、潜在美容師の活用を最大化する--。やむなく美容の世界から離れていた美容師にとっては、まさに願ったりの復帰への道筋だ。美容業界の歪んだ人材構造を解消するだけの動きにまで発展させる上でキーとなるのは出店ペース。今後、Choki Peta出店をどこまで加速させるのか。yoshihara2

吉原 メインブランドのAshの3分の一程度のコスト感なので、コンスタントな出店が可能だ。立地は働きやすさも考慮して、ショッピングセンター内限定で15坪程度。当面の目標は、2020年までに100店舗突破を考えている。物販も含め、安かろう悪かろうではなく、あくまでも品質はキープし、それ以外の部分でコストを削減し、上質なサービスをリーズナブルに提供する店舗としてのポジションを確立する。それによって、休眠美容師を一人でも多く掘り起こし、美容業界の人材問題にも切り込みたい。一億総活躍社会が叫ばれているが、Choki Petaではいま、主に40代から60代までの美容師が活躍している。もちろん、可能なら70歳を超えて働いてもらっても結構だ。Choki Petaは、そうした人材が存分に活躍できる受け皿として機能すると考えている。


<プロフィール> 吉原 直樹
株式会社アルテ サロン ホールディングス1956年神奈川県生まれ。1978年埼玉大学教育学部卒。2014年9月中央大学MBA(経営学修士)取得。1978年4月タカラベルモントに入社。 1981年美容室チェーンに転職し、店舗開発、店舗運営を手がける。28歳で自らも美容師免許を取得するため、美容学校に入学。31歳で美容師免許を取得。1986年に個人事業主として横浜市に美容室を開業、88年に有限会社アルテを設立。ロンドンのヴィダル・サスーンアカデミーの受講、数多くのカットコンテストへの挑戦、現場に立っての陣頭指揮等、美容師としてのキャリアを積む。 東京、神奈川を中心に「Ash」ブランドの「のれん分けフランチャイズ方式」という美容師の独立支援システムで業績を伸ばし、2004年8月にJASDAQに上場を果たす。2006年7月に(株)ニューヨーク・ニューヨークを、2007年1月(株)スタイルデザイナーを子会社としてグループに取り込み、日本最大の美容グループを統べるに至る。 現在、(株)アルテ サロン ホールディングス代表取締役会長、(株)アッシュ代表取締役社長、(株)東京美髪芸術学院学院長、(株)ダイヤモンドアイズ代表取締役社長および(株)シーエフジェイ代表取締役社長を務める。

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