インタビュー

一人メイカーの働き方とは

投稿日:2013年12月19日 / by 瓦版編集部

~“一人文具メイカー”の実態~阿部氏 後編

ハイパー文具クリエイター 阿部ダイキ氏(Beahouse)インタビュー 【後編】

“一人メイカー”がじわじわと増殖している。阿部氏の文具の他にも、家電などの分野でも「欲しいものを追求した」こだわりの“一人メイカー”が、市場に個性と機能性を備えた魅力的な製品を次々と送り出している。いまや、なりたい人も急増中だ。その実態はどんなものなのか…。インタビュー【後編】では阿部氏の一人文具メイカーとしての実態に迫る。

一人メイカーの製品づくりフロー

“一人メイカー”。その言葉だけを聞くと、たった一人でモノづくりに勤しんでいるイメージが強い。だが、もちろん、1人で製品を作り上げているわけではない。1つの製品が完成するまでには、多くの人が関っている。

ではなぜ、一人メイカーなのか。阿部氏の製品作りのフローをみながら、そのあたりを検証していこう。

阿部氏の製品作りの第一歩は、「自分が欲しいものはなにか」、を考えること。もともと文具マニアの阿部氏にとって、欲しい文具を考えることは、「これまでにない文具」や「こんな機能があれば便利」というアイディアをひねり出すことと同義になる。ここでポイントになるのは、マーケティングは基本なし、ということ。あくまで「自分が欲しい」が最も重要なファクターとなる。

例えば、デビュー作となった可変型布製ブックカバーの「フリーサイズブックカバー」。これは、会社員時代に漫画を読みながら通勤していたとき「いい社会人が漫画を読んでいるのもよろしくない」と表紙を隠すアイテムの必要性を感じたことがきっかけだった。最新作の「立つノートカバー」は、パソコンを見ながらノートを見て入力作業することに不自由を感じたことが、発案の元となった。

開発のスタートは「欲しい」という思い

「こんなモノが欲しい」。ここまでなら、誰もが一度は頭に思ったことがあるだろう。ここから、阿部氏はどうやって「欲しい」をカタチにしていくのか。まずつくり出すのが、製品のデザインイメージだ。どんなデザインでどんな形状か、などを具体的に自らの手で描いていく。デザインをかじっていることもあり、この段階で、素人がみてもある程度の製品イメージが沸いてくるクオリティである。

阿部氏の頭の中では、この時点でほぼ、最終イメージは出来上がっている。問題はここからだ。製品特性を考慮した上で、ネットなどを駆使し、製作してくれる工場を探し出す。アイディア商品の依頼となるため、断られることも少なくない。ロット数も基本少なめなので、敬遠されがちだ。カタチにするための最適な素材探しも決して簡単には事が進まない。

例えば、「フリーサイズブックカバー」は、布製でマジックテープを使用しているが、厚いマジックテープでは、ごわついてしまい、ブックカバーとしての機能性が損なわれる。出来る限り薄いことが、条件になり、その段階で一気に選択肢が狭まってしまう。立つノートブックでもプラスチック素材ながら、強度は必要でその両立の為に設計から素材選びに何度も試行錯誤した。

アイディアから素材選び、工場への指示出し、販売まで

どや文具ペンケース

このペンケースはツイッター会議だけで商品開発会議を行った

ここまでをみてお分かりだろう。阿部氏は欲しいものを図面に落とし込み、その後は、素材選びを行うものの、あとは受託した工場への指示出しに徹する。つまり、阿部氏は、一人で製品案をひねり出し、あとはいわば外注している。その意味ではプロデューサー的ポジションでもあるが、世の中の仕組みが便利に進化したことで、一人で最終形まで関与出来るようになったのである。

阿部氏にとって都合が良かったのは、こうした過程はもちろんだが、この先の販路開拓へのノウハウも会社員時代に身につけていたことである。完成した製品をネットで売るのに加え、もうひとつ、阿部氏は問屋をかますという戦略をとったのだ。

“理系メイカー”であれば、つくるまでは、順調にいってもそのあとで苦戦することが少なくないが、メイカーでの営業を経験している阿部氏には、製造後のフローも見通せることが大きな武器となった。

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誰の指図も受けずに自分がほしい物を世に送り出せるのが一人メイカーの最大の喜び

副業から着手するのがスマート

問屋をかました理由は副業でスタートしたこともあり、在庫リスク低減と販売に労を割けないという事情もある。しかし、実はこのこともまた、“一人メイカー”としての活動にとっては、重要なこととなっている。なぜなら、阿部氏は商品発送まで全てを一人でやっているからだ。

「副業からはじめたので、時間は限られていました。ですから、出来る限り業者に頼めるものは業者に頼みました。その分取り分が減りますが、それは“必要経費”ということですね。会社を辞めてからはフルタイムで文具メイカーとして時間を使えますが、必要以上に拡大するつもりはありません。ですから、ペースは会社員時代とあまり変わりません。もちろん、その分じっくりと開発に時間は使えていますけどね」と阿部氏。

一人メイカーの経営観とは

一人メイカーにとっての最大のメリットは「一人」であることにつきる、といえる。つまり、誰の指図も受けず、マイペースで仕事に従事できる。そこに一番のよさがある。製品がヒットすれば、得る利益も多いが、だからといって、闇雲に人員を増やしたりはしない。拡大はつまり組織化であり、会社員時代に逆戻りする可能性もはらむからだ。会社が短命化する中で、今後、才能と熱意を持った会社員の次なる進路の一つとして、「一人メイカー」がその選択肢に入る日は、そう遠くないのかもしれない…。

前編 一人メイカーになる方法

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