インタビュー

会社にぶら下がることがダメな理由

投稿日:2015年5月27日 / by

mokuteki1エリート路線の落とし穴にはまらないための心構えとは

(株)もくてき

代表取締役 與良昌浩氏

「あなたは自律型社員ですか?」。こう聞かれても答えづらいかもしれない。だが、上から下りてくる仕事や設定ノルマ達成に猛然と突き進むだけでは、「自律型」のビジネスパーソンとはいえない。自律型社員育成や組織開発を中心とするコンサルティング事業に携わる『(株)もくてき』代表取締役であり、「何のために働くのか」を学生と社会人で語り合う対話の場を展開する一般社団法人『ハタモク』の共同代表を務める與良昌浩氏。自身もぶら下がり社員だったという同氏に、なぜそれが危険で、どうすれば、「自律型」へシフトできるのか。実体験も踏まえながら、2回に分けてそのヒントをうかがった。

ぶら下がり社員が危険な理由

<働く目的>について考えたことはあるだろうか…。もしなければ、少し考えてみた方がいい。「なにも出てこない…」。だとすれば、ぶら下がり社員の可能性が濃厚だ。もしも、大学や企業選びをなんとなく「よさそうだから」と実行してきたのなら、それも危ない。なぜ、ぶら下がりではいけないのか。なぜなら、次世代の働き方で企業が必要とするのは、機敏にこなす能力でなく、ゼロベースで価値を生み出す力だからだ。

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エリート路線からの脱線を赤裸々に告白する與良氏

39歳で、「もくてき」を立ち上げ、一国一城の主となった與良氏。そのキャリアは、まばゆいほどに輝かしい。高校から名門校へ入学し、エスカレーターで一流大に入学。有名企業に就職を果たす。その後、外資系コンサルティングファームに転職し、見事にキャリアアップ。十分に経歴を積み重ねると、満を持した形で親の会社を継承――。まさに絵にかいたようなエリートコースだ。だが、実は「もくてき」立ち上げの前には人生のどん底を這いつくばっている。なぜ、順風なエリート路線から氏は脱線してしまったのか…。

「主にコンサル畑を歩み、スキルや知識は磨いてきました。ところが、私は事業をやるノウハウを持っていなかった。身につけたチームや組織論で会社をやりくりし、マネジメントしようとしたが、事業は全然うまくいかない。そのためのノウハウを持っていなかったのです。がく然としました。そのうち、社員からは離職の相談を受けることが増え、何か全てを否定されているような感覚になっていきました。挙げ句に会社を創った親に責任転嫁するようになって、ある時から会社に行けなくなったんです…」と與良氏はどん底の当時を振り返る。

どこを見るかで変わる人生というレール

エリートコースを順調に歩んできた一流のビジネスパーソン。壁はあってもスキルや経験で乗り越えられそうなものだ。なぜ、乗り越えられなかったのか…。単に経営に向いていなかっただけ、というのは簡単だ。優れたスキルがあるのだから、経営だってできるハズ。もちろん、そういう人もいるだろう。だが、そうは問屋が卸さない。與良氏の事例は、突き詰めれば、日本の教育システムにもかかわる根の深さがある。現代社会におけるビジネスパーソンにとって、決して他人事ではないのだ。

「結局、私のこれまでの人生は、いかに見栄えよく、ということばかりを気にしていたんです。高校選びから始まって、大学、そして企業選び…人目ばかりを考えて人生を歩んでいたんです。見栄えのいいところへ入ることができれば、そこでは、仕事は向こうからやってくる。いるだけで世間の評価も高まる。何もしなくても来たものをうまくさばいていけばいい。でも、そういう価値観の中でだけ通用するステップを歩んでいただけなんです。結果、主体的に何もできない。自律した社会人に育たない。スキルはアップしていくし、プロジェクトもうまくいく。でも、それが終わったらまたリセット。その繰り返しなんです。『何のために働くのか』。そこを考えないから、常に受け身。だから、様々なことが絡み合う不連続な会社経営ではなにもできない、無力なんです」。

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かつては見栄えばかり気にしていたという與良氏

まさにこれが、敷かれたレールの上を走る人生の“落とし穴”だ。一度レールに乗ってさえしまえば、業務やプロジェクトを無難にこなす限り、何の問題も起こらない。出世への階段も上がっていける。確実にスキルアップしていく。しかし、ともすれば、その目的がプロジェクトを成功させるため、といった狭い視点になりがちで、達成感はあるものの、終わると何も残らない。結果、やらされ感や燃え尽き感がじわじわとマインドに浸透し始め、「何のために働いているのか」が分からなくなる。そして、心にポッカリと穴が開いてしまう…。

なぜぶら下がり社員が量産されるのか…

日本における、いわゆるエリート志向が生みだした負の遺産。それは、受験戦争に始まり、企業選びにおよぶ、ブランド礼賛による、人生や働く目的の陳腐化だ。「いい学校に入る」、「いい会社に入る」…。そうしたことがメインの目的となり、本来考えるべき、働く目的や人生の目的が、大きくかすんでしまう。結果、優等生は育っても、ゼロから何かを生み出す力が身に付いた人材は生まれない。機敏にこなす能力だけが際立つ、“優秀なぶら下がり人間”が量産されることになる。

大きな挫折を経て、幸運にも本物の人材になるノウハウにたどり着いた與良氏。インタビュー後編では、どうすれば、このありがちな負のスパイラルから抜け出せるのか。そのノウハウを中心に語ってもらう。


<YeLL(エール)>
新サービスYeLLについて   新入社員の新卒研修、人材育成など自立型の人財育成を目指す株式会社もくてき「全力の肯定と応援」を通し、企業の「目標達成」「チーム力強化」「個の成長」を同時に実現させる「未来型」週報システム。ユーザーはビジネスにおける目的・目標を持ってそれに挑戦。この活動を週報として投稿すると、クラウドサポーター(コーチング等の専門知識を有する応援の専門家)が全力で肯定し応援する。複数の多様なクラウドサポーターが絶対的な肯定と応援を提供しながら、「PDCAサイクル」を伴走し、行動につなげる。否定や罵声にまみれたビジネスの世界において、全力で肯定・応援するこのシステムは、時代が求めるメンタルへのカンフル剤として広がりが注目される。


【プロフィール 與良昌浩(よら・まさひろ)】
1974年生まれ。早稲田大学卒。伊藤忠商事、アクセンチュア戦略グループ、ユーエスエスを経て、企業風土改革を行うスコラ・コンサルトに入社。人と組織の目的の創造および実現を支援する会社「株式会社もくてき」を設立し、代表取締役に就任。日本橋学館大学非常勤講師。大学生と社会人で「何のために働くのか」を語り合う「ハタモク(働く目的)」も主宰。2015年、応援の力を活用した目的達成支援サービス・クラウドサポートティング『Yell(エール)』を立ち上げる。著書に「他人の思考は9割は変えられる」(マイナビ新書)、「もっと自分らしく行動したい人の決める技術」(秀和システム)がある。最新刊は「決める技術」(秀和システム)。

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