インタビュー

「好きを仕事にする」ことが重要な本当の意味とは

投稿日:2016年2月24日 / by

成熟社会で仕事に生きがいを見出す働き方
BFI代表 安田佳生氏

正社員神話崩壊に引きずられるように、働く目的が希薄になる中で、ビジネスパーソンの活気も全体に低迷ムードが充満する。今後、正社員のさらなる減少を予測する氏が、そんな時代にあって、イキイキと働くポイントに挙げるのは、<媚びない>、<群れない>、<属さない>。これまで正社員に求められていたものとは真逆のスタンスだ。インタビュー後編では、氏が推奨する「自分を磨く働き方」の実践ポイントを中心にお届けする。

インタビュー前編→ 優秀なほど正社員が損になる時代のスマートなキャリア設計とは

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安田流、自分を磨く働き方とは

「自分を磨く働き方」。このフレーズに真新しさはない。これまでもそうした姿勢で仕事をしてきたビジネスパーソンも少ないかもしれない。しかし、安田氏が提言するのは、そうしたものと似ているようで違う。自分を磨くためのアプローチの仕方が、いわゆる優等生的ではないのだ。

 「例えば、なにか強みを持っている社員がいるとします。でも、会社員として働いていると、それだけをしているわけにはいきませんよね。雑用や部下の育成などに時間を使う必要がある。正社員にはそうしたことも暗黙の中で業務に含まれている。そこを、自分の強みを磨ける時間を確保できるよう上司や同僚に交渉するなり、自分でねん出するんです。ということは、上司に必要以上に媚びたり、群れている様ではうまくいきません。必ずしも会社を辞める必要はありませんが、正社員でい続けるにしても、組織にガッツリと属さない方が、より仕事での柔軟性もできますから都合はいいと思います」。

企業人として、組織の論理に反するような仕事へのスタンス。ともすれば正社員を辞めてフリーランスになることを推奨しているようでもあるが、真意はそこにない。重要なことは、「いかに仕事を楽しむか」。それができなければ、働く意味も生きる意味さえもなくなるということだ。

「売り上げ40億までいった会社を潰して、経営者じゃなくなってから私は働く目的を見失ってしまいました。脱力感の中で、いろいろなことを考える過程で、働く意味について考えたとき、自分が好きなことをやって人の役に立たなければ仕事とはいえないことに気付きました。いやな思いをしながらイヤイヤするのは仕事ではありません。儲けることが目標になって、本来の姿を見失っていますけど、仕事って本来、好きなことや得意なことを起点にするものだったと思います」。

「好きを仕事にすること」がなぜ重要なのか

単純に「好きを仕事にする」、というロジックではない。物理的な側面も含め、人生の大半を占める仕事。だからこそ、楽しくなければ、働くどころか生きる意味すらないということだ。当たり前のようだが、一社員から経営者にまで上り詰め、そこから転落した人間が辿り着いた解だけに重みが違う。

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現在は、独自の経営スタイルで仕事を楽しんでいる安田氏

「いまの仕事がつまらないという人も当然いるでしょう。それなら、辞めればいいんです。ところが、ほとんどの人は辞めませんよね。辞めたら収入がなくなって不安だからでしょう。でも、ただ生きていくためだけに働くというなら、会社を辞めたってなんとかなります。結局、仕事はイヤだけど、たくさん稼いで、海外旅行に行ったり、おいしものを食べたりしたいから、正社員にこだわって働くワケでしょ。だとすれば、そもそも仕事自体が楽しければ、イコール人生も楽しくなる。稼いだお金でストレス発散なんて本末転倒です。好きなことや得意なことがない人なんていません。それでは食っていけないなら、どうすれば食っていけるようになるかを考えればいいだけなんです。いまはいくらでも個人で稼げるツールもありますしね」と安田氏はサラリと言い放つ。

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マイノリティが増えていくことが健全な世の中の姿

常に物事を斜めに見る安田氏らしい提言だ。とはいえ、一時は就職人気ランキング上位に名を連ねるほどの企業を経営しながら、破産した末に絞り出された、混じりけのない純粋な思いでもある。それだけに、正社員の経験しかないビジネスパーソンにとっては、耳に入れるだけではもったいない価値あるメッセージといえるかもしれない。好きなことをして、人の役に立ち、それで対価をもらう。それが、自分を磨き、人生を楽しくする働き方。それに対して、何ら否定的な思いは起こらないだろう。最後に安田氏は、こんなメッセージで締めくくってくれた。

「この本を評価してくれる人の多くは、“病んでいる人”。病気じゃなく、いわゆるこれまで常識とされてきた働き方に違和感を覚えている様な人たちです。私からすれば、その感覚こそが正しいと思うんですけどね。そういう人は社会では少数派。でも、そういう人を増やしていくことが世の中にとって健全ではないでしょうか。好きなことや得意なことがない、と心配する人がいるかもしれませんが、少なくとも私はそんな人は見たことがありません」。

常識に捉われることも大事だが、捉われ過ぎて縛れてしまうのは、愚かであり、幸福にはなれない--。激動の人生を歩む安田氏は、そんなメッセージをこの一冊に凝縮している。

インタビュー前編→優秀なほど正社員が損になる時代のスマートなキャリア設計とは


yasuda5<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)

1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。

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