インタビュー

ひたむきに働いてきた能作氏が若者へ伝えたいこと

投稿日:2015年10月14日 / by 瓦版編集部

連載 第2回 株式会社能作 能作克治氏

能作看板連載第1回に引き続きお話してくださるのは、衰退していた日本の伝統産業を変えた株式会社能作社長の能作克治さんです。
第一回 伝統産業に新しい風を吹かせるために


寄り道という名の挑戦

変わらずに自分の心に持ち続けていることってありますか

能作克治
ひとつは、僕は仕事を断るのが嫌いということかな。例えば昔はうちの鋳物はきたなかったし、さらに問屋に対しても高飛車だったの。そんなところに仕事がくるはずがないよね。だから、ひとつの注文でも大事に。あと、とりあえず受けるということ。どんな話がきてもとりあえずやる、という姿勢は常にある。できないというのが一番簡単だしね。成長がない。なんでもそうだけど、やってみりゃできるのよ。失敗とか成功とかより、一番だめなのはやらないことだからね。やってみないとわからない。なんでもやってみるというのは57才になった今でもそうだし、これからもそう。

仕事へのスタンスと自分の在り方は大事だとーー

能作
あとは寄り道をしたこと。新聞記者に最初はなったということもそうだし、実は今もそう。色んな素材とのコラボレーションをしてみたり、無理そうな依頼に取り組んでみたり、小さな寄り道はたくさんしたほうが良いだろうね。
寄り道をさけたら、良いモノや良い自分にはならないんじゃないかな。
一見、寄り道だと思ってもすべてが自分にかえってくるし、適応力がつく。ぼくはそうおもう。

好きこそ物の上手なれ

土日も出社して仕事をしているんですよね

能作
そうだね、僕は仕事が好きだから。好きになったらとことんできるよね。例えば、好きな人が出来たら誰でもそうだよね、どうにかしてその子が好きなことやものを調べるよね。仕事も一緒だよ。
同業者にどうして土日も仕事をするのかと聞かれるんだけど、その場ではね、「貧乏暇なしですよ」と答えるんだけど本当は違う。仕事が好きなのよ。仕事が楽しい。だから、やってる。そこが大事。仕事が嫌だと思ったら上達はないから。ぼくは無理してやってない。僕の人生はすべてそう。

能作の作品 箸置き

若者たちへ

現代の若者にどのような印象がありますか。

能作
若い人には、打たれ弱いという印象がある。今の若い人たちは”ダムが浅い”んじゃないか、と。

ダム、ですか

能作
というのも、精神科の先生にこういう話を聞いたことがある。戦争に行って心に異常をきたす人ときたさない人、何が違うのか。それは、生まれてから子供の時に培った心のダムの深さだ、と。そこが浅いと受け止めきれずに異常をきたしてしまうんだって。
ぼくは、最近の若い人は心のダムが浅い人が増えてきたとおもうね。それは苦労を知らないということと、もうひとつは人と人との対話とか付き合いが減っていることだろうね。
社会に入ると、100%人と人との関係で物事が進んでいく。だから、その訓練を若いうちにするべきだろうね。ぼくは色んな所から色んな人が集まる大学で人との関係を多くもっていたから、それが社会に出てからのこやしになってる。勉強するのももちろん大事だけど、人と付き合う練習ができるのが大学の良いところだろうね。今思えば、人との接し方を大学の時に学んだんだろうなって。

そんな若い人たちに伝えたいことを聞かせてください

能作
「思いやり」をもつべき。思いやり。
ぼくは面接にきた若い子に必ず聞くことがある。車できたの?どこに止めたの?って。会社に対して思いやりがある人間は敷地以外に止めて歩いてきたり、駐車場の奥の方に止めるよ。でも、思いやりのない人間は堂々と駐車場の真ん中に止めるんだよね。
思いやりがあるとね、すべてがうまくいく。社会に出ると色んな人がいるから、人との関係がとても難しいんだよ。包容力があって、人の話を聞けて、思いやりがある人に道は開けると思う。

人に影響を与えたいと思っている若者も多いと思います。彼らに言葉をかけるとしたらーー

能作
長いこと子供たちの工場見学をはじめとした地域貢献をしていくと、同じ業界の企業も、能作がやってるからうちもやってみようとおもうわけよ。だから、大事なのは、まず自分がやって背中を見せること。
周りを変えたい、影響を与えたいなら、背中を見せなきゃだめだよ。言葉じゃなくて。
僕たち、株式会社能作という企業のようなものづくりの末端がこういう風に全国に世界に飛び出していけば、能作が出来たんなら、と周りはなるはず。よし、追い付こう、と。それが人に影響を与えることじゃないのかな、と思う。
世の中には、言葉で通じないもんってたくさんあるから。姿勢で背中で見せるって大事だよなぁ。

就職活動を控えた学生、職業選択に悩んでいる人たちにアドバイスをお願いします

能作
まずは与えられたものにどう飛び付くかじゃないかな。当然、どこに入るか分かんないし運もあるし、だから入ったところで仕事を好きになろうとすることが大事だろうね。あと、ぼくは57才だけど、ぼくにもこれからいくつもの選択があったり岐路に立つと思うんだけど、こっちの枝って選んだときに、別の枝のほうが良かったって悔やまんことよ。こっちを悔やんでしまうと何も起きないし、いまの自分をすてることにもなる。常に、こっちの枝と選んだら別の方は考えない。忘れる。そこの枝でその都度がんばれば必ず幹は太くなる。大きな木になるとおもう。
能作の作品 器

今を生きる

最後に、能作さんの人生の目的を聞かせてください

能作
これは僕の持論なんだけど、人生で大事なのは「何人の人を幸せにできるか」だとおもう。それを価値観として自分の人生だとおもってやってる。
今は、地域の人たちを大事にしていきたいし、ひいては日本の人たちを大事にしていきたい。でも、大事にするものは年齢によってかわっていくよね。
若いときはね、家族とか友達とか当時付き合っていた恋人とか。でも、少なくとも、大事にしていたのはモノじゃなくてヒトだね。

物作りをしているのに、やはり大事なのは人ですか

能作
間違いなく。やっぱり、ひととひとだから。

能作さんのこれからを聞かせてください

能作
日本の伝統産業を支える人になろうと今は思っている。五年後、ぼくが何をしていて何をしようとしているかは分かんないね。今が一番大事だから。
すんだことを、昔はよかったなぁって言う人って多いのよ。今から先(未来)しかないんだから、今を大事に生きてれば必ず未来は開けてくると思うんだよね。ぼくは済んだことはすぐに忘れる。
だって、今を積み上げた先に未来はあるから。
能作の作品 カップ

プロフェッショナルとは?

能作
ヒトを想う人間であること。思いやりとか優しさとかをしっかりもった人間がぼくはプロフェッショナルだと思う。気持ちだろうね。

私がこの日本一周の旅で最初に訪れたのが富山県高岡市にあるこの株式会社能作でした。私が高校時代、あるテレビ番組で能作克治さんを見てからずっとお会いしたいと思っていました。「人生の目的は何人の人を幸せにできるか」とおっしゃる通りの今までの行動とこれからのvision。さらに「世の中には言葉で通じないことの方が多いから」という挑戦をしてきた人だからこその説得力。

こんな大人になりたい、と素直に思える方でした。


能作氏
<プロフィール> 能作克治
1958年福井県出身

株式会社能作 代表取締役
芸術大学から新聞記者を経て現在の職へ。

株式会社能作
400年続く伝統工芸である高岡銅器で有名な富山県高岡市に本社を構え、銅や真鍮、錫製品を加工して製作・販売をしている。元々は問屋を相手に「技術」を売っていたが、現在は自社製品も開発している。国内外で”能作ブランド”は注目されており販路を拡大し続け、衰退気味の伝統産業に新たな風を吹かせている。


山口氏
[著者情報]

氏名: 山口佳祐

所属: 中央大学法学部

「仕事とは何か?」という素朴な疑問のもと「地方で活躍する方々に会う」日本一周の旅を今年の夏に行う。人に影響を与えることを人生の目的とし、将来何をするか模索中の大学生。来年2月から3ヶ月間は世界一周の旅へ。 長崎日大高校~中央大学法学部2年
Twitter: @Naganichi54

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