インタビュー

クラウドソーシングが次世代の働き方に最も近い理由

投稿日:2013年9月17日 / by

クラウドワークス吉田社長瓦版インタビュー Vol.6 ~次世代ワーキングプラットフォームとしてのクラウドソーシング~

クラウドソーシング協議会
株式会社クラウドワークス
吉田浩一郎代表

正社員安泰神話が崩壊しつつある中、新たな労働形態の有力候補のひとつとして、クラウドソーシングが注目されている。国内でも急拡大しており、ここへきて登録者の労働環境を向上する動きが相次いでいる。そうした中、業界トップを中心に大同団結し、2013年8月、「クラウドソーシング協議会」が発足した。正社員に変わりうる新しい働き方としても期待されるクラウドソーシング。大きく動き始めた次世代型ワーキングプラットフォームの秘められた可能性をリポートする。


なぜクラウドソーシングトップ企業は大同団結したのか

グローバルでの今年度の取引規模約2,000億円。国内参入業者の年内の取引目標額200億円。2020年までの設定目標(国内)は、流通額ベースで1兆円。この数字をみるだけでもクラウドソーシングが今後、日本の人材市場において、大きな影響力を持つことが容易に予測できるだろう。つまり、会社から会社が標準だった労働力の移動が、今後は会社からフリーランスへ、そしてスキルが会社へ、といった流れへとシフトする。そのメインプラットフォームとなるのがクラウドソーシングだ。

「今後、日本の正社員比率が50%と切るともいわれる中で、個々のワーカーの働き方にも変化がでてくる。新しい働き方を実践するプラットフォームとして、クラウドソーシングが秘める可能性は非常に大きい。国内ではまだその歴史は浅いが、業界を健全に発展させるために、いまのうちから横のつながりをしっかり構築し、行政への働きかけも含め、より大きなアクションを起こしながら新しい働き方の受け皿としての土台を固めていきたい」とクラウドソーシング協議会の幹事会社でもあるクラウドワークス・吉田浩一郎社長は、業界団結の経緯と狙いを明かす。

大同団結したクラウドソーシングトップ各社

成熟期に入った日本経済において、企業が必要以上に正社員を抱えることは大きな負荷となる。ここ数年、非正規の比率が一向に減らないことがそのひとつの証明といえるだろう。成長産業であれば、人員は必要だが、成熟産業においては、採用どころか人員削減したいのが本音だ。奇しくも政府は、雇用流動化促進を成長戦略の一つに掲げ、斜陽産業から成長産業へのスムースな労働力の移行を推奨する方針を打ち出している。

日本の労働市場は着実に流動化へと進み、正社員安泰神話の地盤は緩み始めている。もっとも、だからといって簡単に斜陽産業の労働者が成長産業へ移行するとはとうてい思えない。ワーカー自身が現状を捨てるリスクの高さにしがみつくことは確実であり、加えて成長産業でやりたい仕事があるのかも未知数だからだ。

着々と進む新たな労働形態としての地盤固め

そこで、緩んだ地盤に押し出される形になる労働力がたどり着く先のひとつにフリーランスという選択肢が浮上する。もちろん、それとてなんらかの技能がなければ、“買い手”はなく、十分な収入が得られる保証もない。正社員ワーカーに立ちはだかる壁は決して低くはない。だが、その受け皿の一つとなりうる環境整備が、国内のクラウドソーシングにおいて着々と進められている。

正社員雇用のメリット

「正社員として雇用されていることのメリットは大きく3つあると考えています。仕事教育互助。クラウドソーシングではそのうちの仕事教育はすでにあります」と吉田社長。社会保障についても社会システムの違い等があり、単純比較はできないものの、米クラウドソーシング企業で提供事例があり、実現への道はある。正社員だけの“特権”だった手厚い待遇が、フリーランスでもほぼ同等に受けられる日が着実に近づいている。

協議会では、そうした動きもしっかりと視野に入れながら、まずは加盟各社の意見等を検討会やセミナーなどを通じ集約。統一ガイドラインの構築などを行いつつ、まだまだ少ない大企業での活用事例報告、クラウドソーシングで活躍する個人ワーカーの訴求などを積極展開し、認知向上を図り、さらなる活用を促進。その上で、登録ワーカーの評価、法律、税など、現状の課題をひとつひとつクリアしながら、フリーランスという立場が抱える不安定をできる限り解消し、新しい働き方としての地盤を確立。その普及を後押ししていく。

クラウドソーシングが変える本質的問題の解決策

吉田社長「正社員」、「非正規社員」、「クラウドソーシングワーカー」。近い将来、そう並び称されるくらいまでにクラウドソーシングが広く普及する日が確実に到来するだろう。その先には、根本的な問題も待ち受ける。不特定多数の人材を活用するというそのシステム上、行き着くところが、有能なワーカーへの業務集中となりかねない点だ。この点について、吉田社長は、次のように見解を述べる。

「確かにそういう側面はあるかもしれない。しかし、そこが正社員とは違う部分で、ならではの解決策がある。小さくても複数の案件を抱え、一定額を稼ぐ。つまり、30万円の案件を一つ受注する稼ぎ方がある一方で、3万円の案件を10本こなし30万円を稼ぐ。これだと、一つの案件が切れてもまだ9案件ありリスクヘッジにもなります。この2つは明確に仕事の種類が違っており、基本バッティングもしません。クラウドソーシングではこうしたアプローチが可能なのです。従って、結果的には大きな格差が生じることもなく、ワーカーの棲み分けもできるハズです」。

次世代ワーキングプラットフォームの最有力候補

終身雇用制が万全でなくなったいま、働き方は大きな変革期を迎えている。もちろんそれでも従来の働き方は企業努力などによって残るだろう。だが一方で、これまでとは違う働き方へのシフトが加速していくことは避けられない。その先にはなにがあるのか…。明快な解はないのかもしれない。それでも受動的であれ、能動的であれ、多くの正社員ワーカーが、変貌する労働環境を受け入れざる得ない場面は、いずれどこかで確実に訪れるだろう。

会社に雇ってもらう代わりに忠誠を尽くす。20世紀が封建制度全盛の時代だったとすると、21世紀は自分や家族の幸福のために働く時代となる――。雇用が流動化し、働くことにおける「安定」が揺らぐ中、労働者の考え方そのものが大きく変化しつつある。その思いを具現化するアプローチは各人各様だが、行き着く先のひとつとして、クラウドソーシングがあり、会社に代わる新たなワーキングプラットフォームとして、着々とその土台を固めつつあることは確かである。


クラウドソーシング協会【クラウドソーシング協議会】

2013年8月にクラウドワークス、パソナテック、ライフネス、ランサーズ、リアルワールドの5社を幹事会社として発足した。参加企業は国内29社、海外2団体。協会の健全な発展を目指し、年内をめどに設立するクラウドソーシング協会の準備機関として活動する。協会設立までに会員企業200社、流通総額200億円を目標とする。
URL:http://crowdsourcing.jp/


フリーランスの労働環境を側面サポート<クラウドソーシングの福利厚生事情>
クラウドワークスは、フリーランス向けの福利厚生サービス「フリーランス ライフサポート」を展開。スキルアップをメインとした教育面の他、介護や育児などもサポートする。ランサーズは“フリーランストータルサポート”として、お金やスキルに関する支援をはじめ、正社員とそん色ない福利厚生サービスを提供。クラウドソーシング先進国アメリカの大手「oDesk」は週30時間以上稼働のフリーランスに対し、社会保障を提供している。

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