インタビュー

文系出身から“一人メイカー”になる方法

投稿日:2013年11月22日 / by 瓦版編集部

~“一人文具メイカー”への道~阿部ダイキ氏

ハイパー文具クリエイター 阿部ダイキ氏(Beahouse)インタビュー【前編】

“一人文具メイカー”として、斬新でユニークな文具を次々と生み出し、ヒット街道を突き進むベアハウス・阿部ダイキ氏。文系出身の脱サラからの華麗なる転身は、いかにして実現したのか。阿部氏を直撃し、その極意に迫った。

なぜ一人文具メイカーになれたのか

「運と縁です」。

阿部氏に現在の成功の秘訣を聞くと、すぐに答えが返って来た。いかにも謙虚な答えだが、本当のこところはどうなのだろうか…。

フリーの設計士の父と美術教師の母の間に生まれた阿部氏は、デザイン系の仕事を目指し、高校でもインダストリアルデザイン関係を専攻する。美大への進学を目指していた。

ところが、より上を目指して入った美術予備校でレベルの違いを痛感。大きな挫折を味わう。失意のまま、大学はなんとなく文学部へ進み、美術とは無縁の平凡な4年間を過ごす。

社会人生活はブラック疑惑?の企業からのスタート

就職活動は、氷河期だったこともあり、難航。バス停に2ヶ月近くも張ってあった求人広告に「どうせブラック企業に違いない」と思いながらも、なんとなく面接へいき、合格する。入社後は営業部に配属されたが、うまくいかない。「本当に良いと思っていない物を『良い』といって売るのは性に合わない」という思いが、ブレーキになっていたのかもしれない。

ところが、そうした製品への熱い思いが、転機を生む。いつしか自ら会社に商品企画を提示するようになったのだ。挫折こそしたものの、もともとはデザイナー志向。秘めたデザインスキルを活かした斬新な企画は、上司の目にもとまり、企画が採用されるようになる。

それだけでは飽き足らず、阿部氏はそのうち趣味で企画した商品を製品化、販売も始める。副業である。入社から9年近くが経っていた。販路はアマゾン。とりあえず、30個×3色セットで販売をスタートした。商品は、布製の可変型ブックカバー、商品名は「フリーサイズブックカバー」。開発には2年の歳月をかけ、特許も申請した。

趣味で初めて副業でデビュー

阿部氏の“デビュー作”。1か月で完売した

阿部氏の“デビュー作”。1か月で完売した

副業だったが、紛れもない阿部氏の“デビュー作”。原動力は、「とにかくやってみよう」、ということだけだった。副業だからリスクもなかった。

初めての商品は、なんと1ヵ月で完売する。90個ながら、自分が本当に欲しいものが売れる感覚に確かな手ごたえをつかんだ。その3ヵ月後には、大手販売店でも取り扱いがトントン拍子に決まる幸運もあり、商品はドンドン売れた。

ちょうどその頃、「どや文具会」という関西を中心とした文具好きのコミュニティの立ち上げに参加。それがきっかけでユーザー発のオリジナル文具創りプロジェクトに参加することになる。1年間かけてツイッターだけで商品開発会議を行うことなども注目を集めた。商品名は「どや文具ペンケース」。ペンケースとしては高額商品となったが、これまたあっという間に人気商品となる。

勢いづいた阿部氏は、続けて新たな企画に取り掛かる。今度は、クラウドファンディングを活用し、予算集めを行った。“文具初のクラウドファンディング”という話題性も手伝い、テレビを始め、多くのメディアでも取り上げられた。

快進撃からのつまづき

ところが、なんと予算が目標額に達せず、クラウドファンディングは不成立に終わる。「販売価格と目標予算の設定を間違えた」のが原因だった。多くの知り合いが、“投資”してくれていたこともあり、胸が痛んだ。少しばかり伸びかけていた鼻はここでパキッと折れる。もっとも、クラウドファンディングを行ったのは予算不足が理由ではなかった。しっかりとケジメをつけ、自己資金で開発商品を世に送り出した…。阿部氏の最新製品「立つノートカバー」だ。

実はこの途中まではまだ副業。といっても、このサクセスストーリーの期間は、驚くことにわずか2年弱でしかない。阿部氏自身が認めるように本当にとんとん拍子で、あらゆることが上手くまわっていった。だからこそ、「運と縁です」と語る成功の秘訣は、謙虚さの一方で「確かにそうなのかも」と思えてしまうほど、妙な説得力が確かにある。

“一人文具メイカー”になれる資質とは

阿部氏

常に考え、実行することが大事と阿部氏は言う

もっとも、そう簡単に“一人文具メイカー”になれるなら、世にそうした起業家がもっとあふれていてもいいはずである。なぜ、阿部氏は成功をつかみとったのか。

一つには、両親の職業により、ものづくりの感覚を知らぬ間に身につけていたことがある。あきらめたものの、デザインスキルを持っていることも好都合だった。新しい物好きで、常にトレンドにアンテナを張っていたこともヒットを生む嗅覚を研ぎ澄ました。就職先が、小さいながらもメイカーであり、物流から製造工程、販路開拓などを学べたことも大きかった。

最初の商品がヒットするという「運」も確かにあったが、それも「自分が欲しいものを売りたい」という確固たる信念があったから。サラリーマン時代に、その思いを持ち続けたことで、結果的にものづくりへの“エネルギー”が蓄積された。「縁」を生んだのは、阿部氏に人をひきつける魅力があるからに他ならない…。

“一人文具メイカー”を目指す人へ

阿部氏成功の要因には確かに「運と縁」も無関係ではないだろう。だが、それを引き寄せ、モノにする才能とセンスを持っていたことが、阿部氏を短期間で“一人文具メイカー”にのし上げた最大の要因といえる。いまや阿部氏のもとには、「自分もなりたい」という相談がひっきりなしにくるという。そんな人に阿部氏はこう言っている。

「好きなことをとことんやればいい。狭く深く。いまはそうすることで起業できるような環境も整備されている」。その一方で「だからこそ、なりたいという相談でなく、自らから行動した後に相談に来て欲しいですね」と本音を漏らす。この言葉にこそ、阿部氏の“一人文具メイカー”としての成功エキスが凝縮されているといえる。“考える暇があるならやりなさい”。本気で深く考え、そして自ら行動した人だけが、“一人メイカー”としての成功を手繰り寄せることが出来るのである。

後編に続く:一人メイカーの働き方とは

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