インタビュー

新しい働き方におけるモチベーションアップ術

投稿日:2013年6月25日 / by

菊入所長瓦版インタビューVol.4 ~変化する職場でのモチベーションアップ法~

新時代に活きる真のモチベーション

(株)ジェイティービーモチベーションズ

ワーク・モチベーション研究所 所長 菊入みゆき氏

右肩上がりの経済成長がピークを迎え、緩やかに下る成熟期に入った日本経済。変革期に入り、企業やそこで働く人々の状況や価値観もシフトしつつある。モチベーションひとつをとっても、従来と同じアプローチでは高めるどころか逆にマイナスに作用しかねないといっていい。20年にわたり、企業のモチベーションアップを行ってきた(株)ジェイティービーモチベーションズ内に新たに設立された「ワーク・モチベーション研究所」。企業における動機づけの“ビッグデータ”を保有する同所所長・菊入みゆき氏が、これからの働き方におけるモチベーションの高め方を指南する。


「やれ! やれ!」のプッシュ型の動機づけは終焉

「こらからは“やれ!、やれ!”といったプッシュ型の動機づけは通用しなくなるでしょう。そうすることで報われていた時代は終わり、いまは、仕事を通じ、いかに自分が成長できるか、が動機づけの大きな要因となりつつあります。そもそも在宅勤務や時短勤務などで会社にいないという形態も増えていくでしょうからね」と菊入所長は、こらからの働きにおける環境と動機づけの変化を見通す。

菊入所長が企業のモチベーション向上をサポートし始めた20年前には、「モチベーション」という言葉自体が浸透していないくらい、あえて高めなくても自然に高まる状況にあった。ところが、ジワリと下り坂に入った日本経済において、頑張っても報われない時代が続き、何とか社員のモチベーションを上げ、業績を向上させるニーズが起こり始めた。ところが、リーマンショックを経て、震災も起こり、ピークを通り越した日本で、モチベーションそのものの考えが変わり始めた。

キーワードは「成長」と「理念」やれやれでの動機づけは時代遅れ

「モチベーションアップの材料となるものが、お金から成長欲求にシフトしていますね。仕事を通じていかに成長できるか。オンザジョブだけでなく、社外での交流を含め、いかに成長を仕事に連動させ、いいサイクルをつくれるかが重視されるようなっています。加えて、何のために仕事をしているのか、社会にどれだけ役に立っているのか、ということも動機づけの重要な要素となりつつあります。その意味でこれからのワーク・モチベーションにおいては『成長』と『理念』がキーワードになってくると思います」と菊入所長は解説する。

グローバル化や高齢社会の到来、ITの進化により、今後、働き方は確実に変貌を遂げる。在宅勤務やSOHOにより、出勤する人が減少し、子育て支援で時短勤務の女性、そして育メン男性も増加する。高齢者も70歳まで働くことが珍しくなくなってくる。そうしたワークスタイルの多様性によって、それぞれのワーカーにそれぞれの価値観が生まれ、モチベーションを高める材料も比例して多様化していく。お金を重視する人もいれば、家族との時間を大事にする人もいる。趣味を重視し、ワークライフバランスを望む人もいるだろう。つまり、会社に所属する意味自体が、単なる従属とは一線を画することになる。

ある意味では個人の集合体としての企業へのシフトであり、もはや、会社組織において、統一的にモチベーションを上げることが困難な時代へと移行しつつあるのかもしれない。「いえることは、企業も個人もいつまでも安泰、ということはなくなるということです。従来のように企業が社員のモチベーションを高めるようアクションすることはもちろん必要ですが、同時に個人も自分の価値観の中でいかにモチベーションを高めるかをセルフマネジメントする必要があります。だからこそ、会社は個とつながる共通の理念が、そこで働く個人には成長できる環境が重要になってくるわけです」と菊入所長は予測する。

モチベーションのセルフコントロール法

モチベーションをいかにコントロールするか。いかに戦略的に活用するか。高いモチベーションが好業績につながることは、研究でも分かっており、これからの時代、ますますワーク・モチベーションの向上は企業、そしてそこで働く社員にとっても重要なテーマとなってくる。自身も実践しているという菊入所長が、モチベーションのセルフマネジメント術を教えてくれた。

モチベーションアップのコツを説明する菊入所長「モチベーションというのは単なる概念であって目に見えないもの。気持ちの中で起こったプロセスに過ぎません。でもそれを使い勝手のいいツールとして、“形”にするんです。その方法は、例えばモチベーションが上がっているときに一度それを、自分の“外”に出すこと。そして客観的に『なぜ今モチベーションが上がっているのか』を分析する。下がっているときも同様に“外”に出して『なぜ下がっているのか』を分析する。そうすることで、自分のモチベーションの傾向が分かってきます。分かったらそれをアウトプットして人の反応を聞いてみるんです。『お客様に喜んでもらうと、モチベーション上がりますよね』などです。すると相手も、『私は、しかられたりすると、逆に、なにくそとやる気になります』と、返してきたりします。人によっては褒められることがいい場合もありますが、叱られた方がいい場合もある。人によってモチベーションアップのポイントが違うことを知ることで、他人を動機付けるときの参考にもなります」。

変わりゆくモチベーションの源泉

膨大なデータを持つワーク・モチベーション研究所「モチベーション」とは目標に向かって行動し、それをキープする働きのこと。経済が成長基調にあったこれまでは、全ワーカーにとって、特に意識するまでもなく、その目標は売り上げアップでよかった。目標として見据える意義も価値も十分にあった。ところが、下り坂に突入したいまの日本では、売り上げのために身を粉にしても報われないケースが増加してくる。その結果として、目標の向く先が、自分の成長や、顧客からの感謝、仲間からの承認、家族との時間…など多様化している。だからこそ、十分に意識してモチベーションを上げることが必要になり、同時にそのコントロールも難しくなりつつある。

同社の設立20年を機に新設されたワーク・モチベーション研究所。これまで続けてきたワーク・モチベーションに関する研究データは膨大に蓄積されており、研究所では今後、それらを最大限に活用し、より専門的で実践的な調査研究を行っていく。その過程は、これまでの20年とはまるで違う展開の連続も予想され、まさに新しい働き方が構築されるプロセスそのものとなりそうだ。


ワークモチペーション研究所オフィス【ワーク・モチベーション研究所】
JTBグループの人事コンサルティング会社、(株)ジェイティービーモチベーションズが、調査・研究を目的とし、2013年6月に新設した。昨今、市場環境、労働環境の劇的な変化を背景に、働く人の職業観や価値観が変化し、かつ多様化する中で、ワーク・モチベーションを高めることが重要度を増している。そうした中、1993 年の創立以来 20 年に渡り、先進的に、顧客企業のワーク・モチベーションを高めるための調査やコンサルティング、社内イベントや研修などの提供を行ってきたJTBモチベーションズの 実績や調査結果から得られた知見を集約し、同研究所はより専門的かつ実践的な調査・研究を行なっていく。


菊入所長

<菊入みゆき プロフィール>
同社設立時からモチベーション研究、調査、商品企画に注力。特に、内発的動機付けの促進、キャリアとモチベーション、組織におけるモチベーションの伝播などについては、研究、およびコンサルティングの実績を積む。筑波大学大学院 人間総合科学研究科 博士前期課程修了。カウンセリング修士。著書には「はたらく女性のための「転機」をチャンスに変える本」(河出書房新社)、「職場で“モテる”社会学」(講談社)、「できる人の口ぐせ」(中経出版)など、モチベーション関連のものなどが多数ある。


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