インタビュー

「不満足」をエネルギーに変える簡単な方法

投稿日:2014年11月28日 / by

なぜ今度は「社会」不満足なのか

社会不満足イベント

社会の不満足をテーマにトークする乙武氏(左)と家入氏

「社会不満足」(中央法規出版)を出版した乙武洋匡氏がさきごろ、都内で活動家の家入一真氏と記念イベントでトークセッションを行った。テーマは、「どうして社会不満足は解消できないのか」。独自の発想で、時にネット上を“ファイアー”する2人のトークは、期待に違わぬ常識を超越した痛快ムードに終始した。

大ベストセラーとなった「五体不満足」から16年。不満足の対象を社会にまで広げ、執筆された「社会不満足」。乙武氏は、その狙いについて「社会に対して不満を持つ人は多いけど、思うだけでは何も変わらない。どんなに小さくても一歩踏み出さないと変わっていかない。この本で対談している8人の発言がなにかのきっかけになればと思っています」と明かした。

同書は、新進気鋭の専門家・論客と乙武氏との対談集。家入氏はその中に登場する一人でもある。「ボクは自分が体験したことしかできないんですけど、その中で、中二で引きこもりになった経験から、居場所の少なさを感じていた。だからいま、シェアハウス『リバ邸』の運営など、若者にいろんな居場所をつくる活動なんかをしています。こんなにも居場所のない人がいるのかと感じてますね」と家入氏は、氏なりの“社会不満足”を表現した。

社会には、高齢者や子供などの社会的弱者もいれば、乙武氏のような体に障害を持ちながら前向きに生きる人もいる。一方で健常者であっても、引きこもったり、会社で重度のストレスにされされ、心の病にかかっているビジネスパーソンも少なくない。なにを基準にするかで不満足の定義は大きく変わってきそうだが、それにしても先進国という外面とは対極の“不満足”が日本社会には溢れいる。

社会の不満足はなぜ解消されないのか

「もう少しうまいやり方はあったと思いますが、家入さんは都知事選に出て随分と叩かれました。ああやって、意を決して動いた人がミスした時だけ口を開く人ばかりじゃ、社会はなにも変わらないし、全体が委縮しちゃう。黙って動かないのが一番賢いとなってしまう。そうじゃなくて、少しずつでも動くことで社会は変わっていくんだと思う」と乙武氏は、社会不満足が生まれる構造について持論を明かしつつ、その処方箋を説いた。

家入氏は「やっぱり叩かれると思いキリ凹みます。ああいうことがあると死にたくなっちゃいますよ。でも、ボクは自分が体験したことしか語れないから、政治も自分事にしたかった。やってよかったと思っています」と都知事選を振り返りつつ「ボクはいくつも会社を立ち上げてますけど、起業なんかもそう。不安があって踏み出せないという人が多いけど、IT系なんかだと誰でもできるし、踏み出せばいい。きっかけなんて小さなことでいい。モテたいから、とかそんなのだっていい」と起業を考える若者の背中を押した。

行動こそが変化をもたらすーー。身体障害者と元引きこもり。ともに“不満足”な状態から脱したのは自らの行動。現在も乙武氏は保育園の経営や地域の掃除活動、家入氏は「リバ邸」の運営を行うなど、社会の歪みを修正する活動を続ける。それだけに、2人の言葉には説得力がある。同時に、ささいな不満をいつまでも引きづりながら、他人にも負のエネルギーをまき散らす行為が、いかに愚かであるかも浮き彫りにする。

「ボクなんてほんとダメ人間。今日もここへ来る前に打ち合わせをすっぽかしてる。たまに『俺天才だな』、なんて勘違いすることもあるけどね。でも、生きてれば誰だってコンプレックスはある。それを武器に転換すればいい。コンプレックスの原因を追究して、そこに意味をみつければいいんです。その意味では不満足は必ずしもマイナスではないと思います」と家入氏は、悩める“社会難民”にエールを送った。

乙武氏は、最後に「なぜ社会不満足は解消されないのか」について独自の見解を披露。「こんなにも社会に不満足が溢れているのになぜいつまでも変わらないのか。それは、Aにとって良くてもBにとってはよくない。その妥協点を見出せばいいのですがそれが非常に難しい。つまり、誰かにとって居心地がよくても誰かにとっては居心地が悪いからです」と逆説的に、満足のいく社会にするために、人々が何をすべきか訴えた。

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