インタビュー

勤続78年の会社員の大先輩に訊く「働く」とは

投稿日:2014年7月7日 / by 瓦版編集部

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生きているうちは「動くべきだ」

福井福太郎氏

高齢社会といわれて久しい。定年は着実に延長され、現役会社員の平均年齢“高齢化”も進む。とはいえ、自営ならともかく、使われる身である会社員は、決して気楽な稼業とはいえない。必要とされ続けることが、居場所を確保することになるからだ。そうした中、100歳を超えてなお現役サラリーマンを続けた福井福太郎氏。会社員歴78年の大先輩に、その極意をうかがった。


福井さん78年の職歴

――これまで、どのような仕事をされてきたのでしょうか?

福井 最初の職についてからもう78年になりますから、順をおって話していきましょう。昭和11年、慶応義塾大学経済学部卒業後、同学部助手を志しました。でもすぐに徴兵されてしまい、大学に籍を残したまま、軍隊に入りました。昭和12年のことです。第一師団歩兵第57聯隊入隊し、南満州に駐屯しました。幹部候補生試験に合格し、第三聯隊に転属。昭和13年、陸軍第一師団経理部員として満州黒河孫呉に駐屯。昭和20年、除隊後、助手を辞しました。現場から8年も遠ざかっていたため、学生の方が知識も豊富だったので、ここで出来ることは無いと思いました。そして、家業の毛皮業を手伝うことに。弟とともに、京橋で福井商店を始めました。当時、毛皮をアメリカ軍におさめていたので、私は、貿易や販売などに携わっていました。

――事業を起こしたのですね。

福井 昭和30年、恵比寿に『福井ファー』を開店しました。商売は順調でした。昭和36年、望月証券に入社。望月証券の社長からの誘いでした。彼は、私と同じ、慶応大学の経済学部の助手で、親友でした。取締役として、社員教育、企業リサーチなどに従事しました。昭和41年の角丸証券との合併は、人生で一番大きな仕事だったかもしれません。

定年後は自らの意思で転職して労働継続

――その後定年退職を迎える。

福井 昭和57年、定年退職しました。その後、東京宝商会に転職しました。東京宝商会は、宝くじの委託販売の会社です。私は、宝くじの仕分けや、経理の仕事などをしていました。102歳になった今でも、私はこの会社の顧問として籍を置いています。2013年から非常勤になり、通勤はしなくなりましたが、31年間、1時間半かけて通勤しました。この会社が一番長く続けている仕事になりましたね。

――いまなら珍しくありませんが、当時で定年後もお仕事を続けられるというのは、すごい意欲ですね。ご自身のことを、仕事が好きないわゆる『仕事人間』だと思いますか?

福井 どうでしょう。でも78年も働いたんだから、やっぱり『仕事人間』なのでしょう。どんな仕事でも、仕事は面白かったから。やっぱり仕事が好きなんでしょうね。

78年間の会社員人生で「もう仕事をしたくない」と思ったことはゼロ

――定年を迎えたとき、退職しようという考えはありませんでしたか?

福井 ありませんでしたね。時間も体力もあったから、迷わず仕事をしたいと思いました。経済的にも助かりますしね。望月さんにお願いして、どこでもいいからって。それで紹介されたのが東京宝商会です。

――長く働き続ける中で、「もう仕事をしたくない」と思ったことはありませんでしたか?

福井 ありません。102歳のおじいさんを雇ってくれるなんて、本当に特殊なケースだと思います。これは本当にありがたいです。でも、96歳のとき、「もう辞めよう」と考えたこともありました。だって、私がいなくても、若い人がしっかりやってくれていましたから。そうしたら、弊社のオーナーで、私の親友だった故)望月玉三氏の奥様が、「辞めるなんておっしゃらないで。ずっといてください」って言ってくださって。そんな有り難いことはありません。私はお言葉に甘えて働き続けることができています。なので、どんな仕事だろうと、仕事があるってことは幸せなことなんです。

働く上で大切にしてきたことは2つ

――働く上で、最も大切にされてきたことは何ですか?

福井 「真心」、「利他」。人のことを考える。自分勝手に生きない。これだけです。決して難しいことじゃない。家族のため、会社のため、みんな自然に思って生きているはずです。私も両親がとても利他の精神を持った人たちだったから、その影響かもしれません。望月証券に入社してからも、リーダーである望月玉三氏を支えたいという思いでした。いい友人であり、リーダーに恵まれて、本当に幸せでしたよ。

大先輩からのアドバイス

――現在、社会に出て働く若者にアドバイスをお願いいたします。

cowork福井 命を大切にして、一生懸命生きてください。命は決して自分のものではありません。天から与えられたものです。利他の精神で生きてみてください。きっと、人生がすばらしいことに気がつくはずです。

――それから定年間近の会社員にも何かアドバイスをお願いいたします。

福井 私は、給料をもらって働くことが全てだとは思っていません。でも、人間、生きているうちは「動くべきだ」と思っています。趣味でも、勉強でも、なんでもいいのです。これが、社会のためになっているかもしれない、と思うだけでも違いますし、その意志は必要なことだと思います。ぜひ、人生を楽しむ何かを持ってください。人生は楽しまなくちゃ。そして健康でいることです。自分の足で歩くことです。長生きが幸せではありません。健康で長生きで、人生楽しめることが、幸せなんです。

運を味方につける方法

――年をとっても働き続ける秘訣はなんでしょうか。

福井 繰り返しになりますが、命を大事にして、一生懸命、目の前の仕事をすることですね。これが「強運」につながっているはずです。私は運が良かったとしか言い様がないんです。戦争で生きて帰って来られたことも、102歳になっても会社員としての籍があることも。運は生まれもったものかもしれないけど、利他の精神で生きることで運を味方につけられるかもしれません。そして、自分が「運がいい」と思い込むことです。運に恵まれている人は、運がいいと信じている人です。

――長く働くことについてご家族はなんとおっしゃっていますか。

福井 「すごい」と(笑)。ただ、私が働けたのは、家族のサポートがあったからです。私は、好きなことをさせてもらいました。隣に住んでいる長男のお嫁さんは、毎朝駅まで私を送ってくれていました。妻が亡くなってからは、長男夫婦と夕飯を一緒に食べています。また、次男夫婦も熱海の別荘に連れていってくれたり、今も楽しい毎日を送っています。私だけが元気でも、きっと働き続けることは出来なかったでしょう。家族が元気で、協力してくれることも、当たり前じゃありません。とても、感謝しています。


『100歳、ずっと必要とされる人』福井 福太郎(著)、広野 彩子(著):日経BP社
高齢社会が進行する中、定年後のあり方も大きく変わりつつある。そうした中で、100歳を超えてなお現役で働き続ける福井さん。半生記といえる同書には、80年近い会社員人生のことが鮮明に描かれているが、ひとつひとつがどんな啓蒙書やビジネス書よりも説得力がある。若者はもちろん、中高年、そして定年間近のベテラン社員まで、誰もが一読の価値がある、働き方の教科書といっていい良書だ。

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