インタビュー

「公益資本主義」が日本を救う理由とは

投稿日:2015年5月21日 / by 瓦版編集部

yamanaka1なぜポスト資本主義の大本命なのか

アントレプレナー・イニシアティブ事務局準備室

山中哲男氏

「公益資本主義」をご存じだろうか。限界の見え始めた現在の資本主義に代わり、じわじわと広がりつつある、知る人ぞ知る新たな経営指針だ。脱売上げ・株主至上主義といえるこの次世代型資本主義を大きく推進しようとする活動が2015年6月1日に動き出す。その中心となる、『公益資本主義』アントレプレナー・イニシアティブ事務局準備室を率いる山中哲男氏に狙いや展望を聞いた。

なぜいま公益資本主義なのか

ーーまず公益資本主義とはなんでしょうか。

山中 会社というのは事業を通じ、株主だけでなく、顧客、取引先、従業員、地域社会全てに貢献すべきものであり、利益とはそれを可能にする条件であるーーこの考えに基づいて会社価値を評価する理論です。これまでの資本主義では、株主価値の向上に偏重していましたが、これでは利益は短期にしか追求できません。格差を拡大する勝者総取り型のゼロサムでなく、共に利益が増すプラスサムと言い換えると分かり易いかもしれません。

ーー考え自体は、数年前からあったようですが、このタイミングでアクションを起こす理由はなんでしょうか。

山中 確かに以前からこの考えはあり、動きもあります。そうした中で今回、我々は特にそのターゲットのメインを若手経営者と考えています。というのは、現状は主にミドル層を中心に認知されているのですが、次の世代を担う若者こそが、こうした考えに賛同していかなければ、次にバトンをつなげない。若い世代が従来の資本主義にかぶれ、株主至上で起業をしても、日本に未来はありません。そこで、これからの世代も安心して暮らしていける社会を築く最後のタイミングとして、いまになりました。あえて付け加えるなら、トマ・ピケティの「21世紀の資本」の影響もあるといえます。なぜなら、公益資本主義は、ピケティが投げかけた、労働者が汗水たらして働いても資本家には総資産で勝てないという問いに対するひとつの解でもあるからです。

ーーどうことでしょうか。

山中 社会に役立つ仕事をしたい人はたくさんいると思います。しかし、そうした仕事はえてして食べていけない場合が多い。結果、熱い思いや志があっても現状に踏みとどまる人も少なくない。一方で儲け至上で得られたお金は、適性な場所へ流れることなく、歪に偏在します。これでは、社会にお金は溢れても格差が拡大するだけで、世の中は豊かにはならない。そこで、社会に役立つ熱い思いを持った人が起業し、継続していけるようなお金やヒトの流れを実現するシステム構築が必要になります。そうやって、真に豊かな社会、子供から孫へと受け継いでいける社会実現への基盤をつくる。公益資本主義には、その根幹となる思想や考え方が詰まっているということです。

これまでの株主資本主義ではもはや限界

公益資本主義の意義を熱く語る山中氏

公益資本主義の意義を熱く語る山中氏

ーー確かにそうなれば、資産の分配が最適化され、必ずしも「マネーイズキング」ではない、本当に必要なものが、世にあふれ、あらゆるステークホルダーが幸せになる社会が実現しそうです。

山中 我々のアクションでは、まず公益資本主義に沿った企業がしっかりと実績を上げることが重要と考えています。さらに次のステップとして、賛同企業をできるだけ多く集めることを視野に入れています。ビジネス系の動きとしては、これまでにも異業種交流会や経済団体のようなものはありましたが、そこに共通の理念があったかと言えば疑わしい。その場合、マッチングは成立してもいずれどこかにひずみが出てきます。しかし、我々がこれから進めていく、ある種のコミュニティつくりは、最初から「公益資本主義」の名のもとに集まった集合体となるので、方向性がぶれることがない。そこが、単なる寄り合い所帯とは大きく違う点です。まずは少数でも企業によるしっかりとした実績づくりが優先ですが、1社、そして一人でも多くの賛同者が集まることで、熱い思いが形になる可能性も高まっていきます。

――6月1日の『公益資本主義』アントレプレナー・イニシアティブ決起集会は、そのファーストステップなるわけですね。

山中 はい。ですから、公益資本主義に興味のある経営者はもちろんですが、良く知らない人、熱い思いの個人など、とにかくまず足を運んでほしいと思っています。株主至上主義に限界が見え始めた中で、それに代わる大きな動きにつながるエポックメイキングな一大イベントになると思います。公益資本主義を推奨する原丈人氏の講演の他、現在最前線で活躍する若手経営者が一堂に集います。これだけ豪華ラインナップのイベントが無料、というのはおそらくこれが最初で最後。場所は東京・渋谷ですが、地方の方でも交通費をかけても十分おつりがくるほどの価値があると思います。

成熟社会の日本が進むべき方向である理由

ーーこのイベントでキックオフし、正式アクションへとつなげていくわけですね。

限られた時間の中で6月1日のキックオフイベントを仕掛けた山中氏

限られた時間の中で6月1日のキックオフイベントを仕掛けた山中氏

山中 正式稼働は、2015年10月を予定しています。賛同企業には登録というカタチで加盟いただき、公益資本主義の考えに基づいたシステムつくりを進めていき、各企業に合った形で実践いただくことになっていくと思います。

ーー先が見えず、誰もがモヤモヤ抱えていた成熟時代のポスト資本主義として、社会を変えるほどに流れが大きくシフトしていきそうですね。そうなると働き方も変わってきそうです。

山中 「仕事に行きたくない」と思っている会社員でも逆に、もし、仕事がなく、「明日から何をしよう」となったらどうでしょうか。これほどの不安はないはずです。当たり前過ぎて気づかないですが、仕事があることのありがたみを忘れてはいけません。社会がこのまま利益追求型で突き進めば、確実に企業の淘汰が進み、仕事さえなくなりかねません。我々はその流れを軌道修正し、自分たちの子どもや孫の世代も安心して働ける社会をつくるためにアクションを起こすのです。そうした社会では、働くことそのものが人生の充実にもつながっていくのではないでしょうか。


◇公益資本主義』アントレプレナー・イニシアティブ決起集会

原丈人の他、クックパッド取締役・佐野陽光氏、カヤックCEO柳澤大輔氏、元LINE社長・森川亮氏が登壇。公益資本主義をテーマに講演やパネルディスカッションを行う。場所は東京・渋谷の渋谷公会堂(11時から15時)。一般参加は無料。申し込みはコチラ→ http://peatix.com/event/89929/


【プロフィール 山中哲男】

1982年生まれ。兵庫県加古川市出身。高校卒業後、民間企業で1年間働いた後、地元兵庫県加古川市で飲食店を開業。25歳のとき米国ハワイ州でコンサルティング会社を設立し、CEOに就任。(2012年退任)日本企業の海外進出支援からスタートしM&A仲介、事業開発支援に従事する。翌年、株式会社インプレスを設立し、代表取締役に就任。事業立ち上げ支援、起業家育成を始める。現在に至るまで40以上の事業立ち上げに関わり直近では、英国国立バッキンガムシャーニュー大学MBAコースの日本キャンパス設立に参加し、現在はプロモーション分野を担当する。また、チャールズ皇太子がロイヤルパトロンを務める世界最大(45万人以上の会員)の高齢者コミュニティを運営するエイジコンサーン主催で行われるU3A国際会議の実行委員に選任される。2016年10月日本での開催に向けて準備を進めている。公益資本主義を推奨する原氏とは初対面で意気投合。

 

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