インタビュー

採用のプロが教える3年離職時代のブレない就活術

投稿日:2015年11月4日 / by

アドヴァンテージ 中野尚範代表

recruite1なぜいつまでもミスマッチが起こり続けるのか

厚労省の最新の調査によると大卒の就職後3年以内の離職率は、32.3%。3人1人が、入った会社を辞めてしまう。久しく続くこの傾向。なぜ、求職者と企業にミスマッチは起こり続けるのか…。独自の視点で斬新な採用企画を打ち出す採用のプロフェッショナル、アドヴァンテージ・中野尚範代表にその原因と対策を聞いた。

就活における“バグ”3割は必然なのか

--相変わらず、3年後離職率が3割を超える状況が続いている。こうした状況が分かっていながら、なおかつ、ネットにより、学生も随分と情報収集がしやすくなっているのになぜ、こんな状態が続くのか。

中野 ハッキリいえるのは、右肩上がりの時代の採用スタイルがいまだ引きずられているからです。つまり、企業が、とにかく数を確保することが重要という価値観のまま、採用を続けている。企業の採用担当は、どんな学歴の人間を何人採ったかが評価になりがちです。そうすると、キチンと適性を見極めるまではいかない。そうした企業は大企業が多く、学生側も内定が取れれば満足してしまう。

学生の情報収集環境も充実しているハズだが…

学生の情報収集環境も充実しているハズだが…

--とはいえ、学生もネット情報で外面はよくても中身はボロボロな企業の情報も入手はしやすい状況にある。慎重に見極めれば、もう少し、まともな就職も可能では…。

中野 情報が多過ぎることがかえって、判断を鈍らせているという側面もあります。2ちゃんねるや転職情報サイトなどで悪い情報を目にすることで、迷いが生じる。本当は学生にとって適した企業であっても、そうした情報によって気持ちが揺らいでしまう。結果的に、決まった企業へなんとなく入ってしまうということもありうるわけです。もっといえば、そうした企業が認知度の高い企業の場合、その親が満足し、背中を押す。そうやって、予見されるミスマッチがスルーされ、流れのままに内定企業へ入ってしまうわけです。

どうすればミスマッチを回避できるのか

--結局、学生が、本当に何がしたいのかを絞り切れていないことがフワフワとした就活につながっているようにも思えます。

中野 ホントにしたいことが明確で就活をしている学生は少数派でしょう。それよりも時期が来たからなんとなくはじめ、周りが決まりだしたから焦って、空回りする。そんな状態では、適正な判断ができるワケがありません。それでもいまは、売り手市場ですから、内定を取ることは一時ほど難しくはない。ミスマッチが起こるのも無理はないでしょう。

中野氏企画の野球経験者を軸に募集した企画は大成功

中野氏企画の野球経験者を軸に募集した企画は大成功

--どうすればこの状況を変えられるのでしょうか。

中野 まず企業側についていえば、右肩上がりの時代の採用スタイルを見直すことです。具体的には、人数を決めてそこに目標設定し、求人メディアを活用するというスタイルから脱する。自分たちがいま本当に欲しい人材はどんなタイプであるかを明確にした上で、そうした人材を採りに行くんです。そうした人材がいそうな所や大学を回るのもひとつでしょう。経営戦略の一環として人材を考えるようにしないと、欲しい人材は採れません。

--マッチした企業に入るために、学生側はどういう心構えでいることが重要になるでしょうか。

中野 どんなことをしたくて、そのためにどの会社に行けばいいのか研究しなさい、とは言いません。なぜなら、それを考えるためのベースが学生にはないからです。ですから、せめて自分に合った仕事に出会う確率を上げる簡単な方法を教えましょう。好きなこと、得意なことと仕事が一致する場合は、それを目指せばいい。逆に好きなこと、得意なことが十分ではないがその仕事に尽きたい場合も、そこへ突き進めばいい。なぜならそれをうまくなりなりたいという思いは強いモチベーションになるからです。一番問題となる、好きなこともない、したい仕事もない場合。この場合は受けた会社にいい印象を持ったとか社長の人柄が気に入ったという直感や先輩や家族のアドバイスに素直に従って入ればいいと思います。なぜなら、本当にいいか悪いか、合うか合わないかは最終的には入ってみなければ分からないからです。

就活で「運」をバカにできないワケ

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運任せの採用企画も成功させた中野氏

--「運」ですね。貴社は、採用企画としてクジ引きによる採用イベントも行っていますが、実際のところどうなのでしょうか。

中野 正直リスキーではあると思います。責任は企業側が負うしかないわけですから。でも、先ほど言いったようにどんなにしっかりと採用活動をしても、最後は運の要素は捨てきれません。ですから、「クジ引き」という言葉とは裏腹にまともだとは思います。運ではありませんが、私の会社では、アウトロー採用という通常の就活に違和感を覚える人材を集めたスタイルで人を採りましたが、とても満足しています。これは、いわゆる就活では落ちこぼれ達です。しかし、スペックも高く、優秀な人材が揃っていました。なにより、求職側が、素に近い部分を出せるスタイルなので、少なくとも旧来型の採用スタイルよりはミスマッチは物理的にも起こりにくいとは思います。

--そもそも、終身雇用制度は崩壊していますが、自分の一生を左右するイベントである就活だけで、本当にマッチした企業をみつけること自体に無理があると思います。

中野 先ほど、合うか合わないかは入ってみないと分からないといいましたが、だから、入って合わなければ辞めればいいんです。本当に適正な判断を下すようになるためには、30歳くらいまでの猶予があってもいいと私は思います。ドイツなどはそうした仕組みもありますからね。肩肘張って最適なマッチングができるならそれでいいですが、会議室の面接で学生の素の部分をみることは不可能でしょう。できれば最初から相思相愛がいいですが、必ずしもそこにこだわらないのも、実はいい採用、就活をするための重要なスタンスだと思います。


【中野氏プロフィール】
1971年生まれ。学生時代より事業を開始。2000年に日本初の携帯有料求人サイト「めるばいと」立ち上げ。そのノウハウをもとに人材派遣会社、飲食・サービス業などの派遣、アルバイト採用支援、200社以上の採用問題を解決。2005年アドヴァンテージ設立。2013年クロスリンク設立。工場特化求人媒体「ガッチリ求人ワーク」立ち上げ。2015年、占いとクジで志望企業を決める「ベツルート」をスタート。独自の視点から採用に新風を起こし続ける。11月にはノウハウを集結した「採用のプロ」養成講座を実施する(全6回)。

 

 

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