インタビュー

紆余曲折を経てたどり着いたお菓子屋への道

投稿日:2015年11月4日 / by

連載第5回 きのとや 長沼昭夫氏

きのとや第5回の今回は、スイーツをとおして北海道から日本を照らす男の物語です。長沼氏が、どのようなことを考え、今までの人生を歩んできたのか?何を大切にして生きてきたのか?
若者への金言、もりだくさんです。


義父から言われた一言から始まった「きのとや」

長沼さんの背景から教えてください

長沼
私は今、67歳で10月で68歳になります。私は六人兄弟の末っ子で。1947年生まれですから、戦後すぐに札幌に生まれて札幌で育ちました。公務員の親でしたので、食べるだけでやっとの時代ですよ、貧乏でね。小学校の時も、中学校の時も平凡であまり成績も目立たない子でした。中学からはスキーをしていましたね。高校の時は兄の影響もあってチェロをやりましたね。高校の時も平凡でね。たいして勉強もせず、そんなに頭もよくない、かといってそんなに悪いわけでもなく。特徴のない子だったかもしれません(笑)
中学三年の頃に父がなくなったこともあって家も貧乏だったので大学は国公立にいくしかないわけですね。さらに家から通えるところしかダメでした。ですので札幌に住んでて行ける大学は限られていて。

となると、北海道大学になるのでしょうか

長沼
そう、私は北大にいきたいと思っていたので、2浪して入りました。北大の水産学部に入って、子供の頃からスキーをやっていたので山岳スキー部に入って。大学時代は、山岳スキー部でひたすら活動していました。1年のうち100日以上山へいってね、夏は山登りをして冬はスキーをしてね。勉強もほとんどせずに、バイトか山へ行って、大学にはたまに顔を出す、そんな大学時代を送っていたね。そこから人生を変えていったね。

卒業後にすぐきのとやを創業されたんですか

長沼
いや、卒業後は、その北大の山岳部の先輩に誘われて農業を始めたんですけど失敗して。うまくいかなくてね。二転三転して職業を変えていくなかで35歳のときにこのお菓子屋を創業しました。

どのような経緯で?

長沼
たまたまうちの義理の父親から「お菓子屋さんっていい仕事だね」って。「何でですか?」って聞いたら、「お菓子を買いに来る人はみんな嬉しそうに幸せそうに買いに来るじゃないか」と。あんないい仕事ないよね、ってね、そういわれてお菓子屋をやってみようか、とそんな感じだね。お菓子に対する知識も人脈も何もなかったんだけど、きのとやをはじめました。

ところで、「きのとや」とはどのような想いが込められているんでしょうか

長沼
「きのと」っていうのは、「乙」のことで、甲乙丙で言う2番目という意味なんですよ。私の義理の父の出身地のお寺の名前でもあったわけです。その寺の前に200年続く乙饅頭という饅頭屋さんがあって。そういう経緯があって「きのとや」としたんです。これは余談ですが、占い師にこの名前はどうか、と聞いたら『全部平仮名したのは大変良い』と言われたんですよ。「きのと」は2番目という意味ですから、常に謙虚に上を目指すということでも良い屋号だと思っています。
きのとやのショーケース

『ロマン』を持つということ

今でこそ、きのとやは大きな会社ですが、順風満帆ではなかったと聞いています

長沼
そうですね、失敗もたくさんしましたね。クリスマスケーキの予約に500個もケーキが間に合わないこともありました。クリスマスにケーキがないというのは、本当に申し訳ないことをしてしまいましたね。さらに、食中毒事故。倒産間際まで行き、私も「もうだめだ」と思ったこともありましたが、社員の助けもあって今こうして、何とか出直すことができています。そこで思ったのが、当たり前ですが「失敗から学ぶ」「失敗を繰り返さない」ということです。それ以後、私どもの会社は失敗から学び、教訓とし、おいしいスイーツをお客様に届けることができています。「失敗から学ぶ」なんて、学校でも言われる言葉でしょうが、人にとって本当に大事なことだと私は思いますよ。

水産学部から農業の道へ、はたまたお菓子屋になった、でも長沼さんの心の中で、変わらなかったものはありますか

長沼
それはね、ロマンだね。ロマン。夢を持ち続けること。結局ね、ぼくはロマンチストだったのかなぁという気がする。農業をやるといった時もユートピアを作ろうという夢があった。理想郷ですね。だってユートピア牧場っていう名前にしたぐらいだから(笑)どんな小さなことでも良いから常に自分を楽しませてくれるロマンを持つことが大事だと思いますよ。

長沼さんはずっとロマンを持ち続けてきた、と。

長沼
そうだね、私はロマンだけはずっと持ち続けていたね。そして、同じ夢を10~20年見続けるというのも悪くはないんだけれど、ぼくは夢は変わってもいいと思ってる。昨日見てた夢と今日見てる夢が変わってもいい、と。常に夢をもつことが大事なんだよ。常に、ね。夢って変わってもいいんですよ。人間が成長することによって物の見方や考え方や目指すものも変わっていくんですよ。それでいいんだよ。大事なことは毎日夢があること、ロマンを持ち続けることだよ。

後編では、長沼さん自身の「ロマン」を語っていただきます。さらに、若い人が聞きたいであろう、「夢がない、やりたいことがみつからない人へ」の言葉も。
さて、どんな言葉が?

乞うご期待!


長沼氏
<プロフィール> 長沼昭夫 株式会社きのとや 社長

1947年、札幌市出身。北大水産学部卒業後、様々な職業や失敗を経て1983年に「きのとや」を創業。創業以来、業績を伸ばしつづけ、現在は、北海道洋菓子協会会長、スイーツ王国さっぽろ推進協議会長としての顔も持つ。

http://www.kinotoya.com/


山口氏
[著者情報]

氏名: 山口佳祐

所属: 中央大学法学部

「仕事とは何か?」という素朴な疑問のもと「地方で活躍する方々に会う」日本一周の旅を今年の夏に行う。人に影響を与えることを人生の目的とし、将来何をするか模索中の大学生。来年2月から3ヶ月間は世界一周の旅へ。 長崎日大高校~中央大学法学部2年
Twitter: @Naganichi54

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