インタビュー

私が30年の“安定”を捨てたワケ

投稿日:2015年1月21日 / by 瓦版編集部

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安定企業からフリーへの転身
~私はなぜ安泰企業と決別したのか~

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フォトインストラクター
中原一雄氏

有名理系大を卒業し、大学院へ進学。そして、業界トップの化学メーカへ就職する。典型的、いや理想的な安定路線に乗っかり、社会人生活をスタートさせたプロカメラマン・中原一雄氏。先行き不透明な情勢の中、誰もが羨む人生安泰の道を氏はなぜ捨て去ったのか…。いわゆる安定志向の学生や会社ぶら下がり人間にとっては、にわかには信じがたい転身劇の裏に一体、なにがあったのか。本人を直撃した――。

順風満帆のキャリアとなぜ決別したのか

取材現場に到着した中原氏は、カジュアルなスタイル。体を締め付けるスーツも首を圧迫するネクタイもなし。フリーを満喫するイキイキとした表情で、終始和やかに対応してくれた。

「いまは自分がやりたいと思っていることをやれているので、毎日が本当に充実しています。確かに安定はないかもしれませんが、特に不安もありません」と中原氏。前職のままなら、確実に20年以上は安泰だったにもかかわらず、いまのこの充実感。なぜそんな心境でいられるのか…。

中原氏は、大学院を出た後、研究を続けていた化学に関連したメーカーに就職。研究員として、順調に社会人生活を歩んでいた。待遇はもちろん、人間関係にも特に問題はなかった。だが、そんな温和な空気が逆に中原氏の脳を研ぎ澄ましたのかもしれない。そしてある時、2つの思いが頭を巡る。

s91-2「日本の産業の柱の一つであるモノづくり。それに携わっている満足感は確かにありました。でも同時にこれからは形のあるものをつくる時代じゃなくなる。形ではなく、人をうれしい気持ちにさせたり、感動させる形のないサービスが重要になってくると思ったんです。加えて、化学をやり続けるにも自分より圧倒的にすごい人がいる。そう考えると30年は安泰でも、その先を考えるとどうなるか分からない…」。

安定の裏で膨らむ将来への不安

日本産業の先行きへの不安、そして化学を追求する者としての将来性。この2つの思いがクロスする形で、中原氏の思いは徐々にひとつの形へと昇華していく。以前から「いつかやりたい」と思っていたカメラ関連の仕事への転身だ。

次の道を定めた中原氏は、退社の意思を固めるや、躊躇なく動く。会社に在籍しながら、週末に写真専門学校へ通い、腕を磨いたのだ。趣味程度の実力しかなかったこともあり、一度、キチンとスキルを習得しておく必要性を感じたからだ。

1年の“週末学習期間”を終え、晴れて会社を辞めた中原氏。計画通りだったが、安泰の後に待っていたのは、やはり不安だった。というのも、カメラ関係の仕事をすると決めていただけで、行く当てがあったわけではないからだ。とりあえず、修業すべく町の写真館的なところを受験するが、ことごとく不採用。意外にも、高学歴がネックとなり、採用側が躊躇していたようなのだ。なんとも皮肉な展開だった。

安定の後に待っていたのは厳しい現実…

中原氏

塾での講師経験もあって教えるのはお手のもの

「就活の時より、気合を入れて動いていたのでさすがに焦りましたね」と述懐するように、ポジティブシンキングの中原氏もこの時ばかりはさすがに冷や汗が滴る毎日だったという。それでもなんとか、一社で採用が決まり、そこからいよいよ中原氏のカメラマンの第一歩がスタートする。

ところが、安心もつかの間、わずか2か月後、悲劇に見舞われる。なんと解雇されてしまったのだ。なにを思ったか、「いずれ独立したい」と相談したことで、会社上層部の逆鱗に触れてしまったのだ。全く悪気はなかったが、完全に勇み足だった。30年安泰の企業を退社後、苦難の就活を経て、わずか2か月で会社をクビ。そんな経験などそうないだろう。

「本当はそこで1年ほど修業してから辞めるつもりだったのですが、やり始めると『いける』という手ごたえを感じ、社長に将来のことを相談したんです。ちょっと早すぎましたね」と中原氏は微笑みながら当時を振り返る。こういう時に大きく凹まないのが、ある意味、中原氏の最大の武器なのかもしれない。ここからいよいよ、中原氏のフリーカメラマンへの道が本格化していくことになる――。(後編へ続く)


【プロフィール】中原一雄(なかはらかずお)
北海道生まれ。中高大までは理系一筋の理系男子(有機化学 修士)。卒業後、メーカーの研究職として勤務。徐々にモノではなくカタチの無い新しい価値観を世の中に提供したいと考え、週末の専門学校通いを経て、退社。写真の世界へ。何とか入社した写真館を2か月で解雇されるも、WEBを活用した集客を実施することで基盤を確立。初心者向けのワークショップやウェディング、各種イベント、広告写真を中心に活動する。誰もが講師になれるストリートアカデミーでは、初のプラチナティチャーになるなど、名物講師の一人して活躍。カメラはあくまでツールとして捉え、従来にない、形ではないサービスを模索し続けている。

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