インタビュー

フリー=“不安定”とは限らないなるほどな理由

投稿日:2015年2月4日 / by 瓦版編集部

安定→不安定、そして充実

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フォトインストラクター

中原一雄氏

華々しいキャリアを潔く捨て、プロカメラマンとして踏み出した中原一雄氏。ところが、“30年安泰”の後に待ち受けていたのは厳しい現実だった。就職難、解雇、無職転落…。それでもポジティブシンキングの中原氏は、大きく凹むことなく、前進を続ける。後編(前編はコチラ)では、苦難を乗り越えた中原氏が、いかにしてフリーランスとして安定軌道に乗せることに成功したのか。その辺りを掘り下げていく。

思わぬ現実に直面してしたこととは

予想外の失職。さすがの中原氏も脂汗を垂らしたが、どん底にまで落ちたことで、むしろハラは決まった。なんとしてもフリーでやっていくーー。あとがなくなった中原氏は、そこからは失業手当をもらいつつ、焦ることなく、着々とフリーランスとしての土台固めを進めていくことになる。

着目したのは、WEBを使った集客だ。いずれ仕事を取るにしても、いきなり飛び込みなど無謀。効果的に仕事を取るための基盤として、“ファン”を獲得しておこうと考えたのだ。WEB関連の基本知識を習得した上で、まずは情報発信拠点としてブログを開設。撮影のノウハウ系コンテンツをひたすら書き貯めた。この間、貯蓄はどんどん目減りしていったが、ビジネスモデルは膨らんでいた。

カメラの世界のニッチにズームイン

化学の世界では、上がいることを実感した中原氏。それだけに、カメラの世界もそうであることは重々理解している。目を付けたのは、一般の人に独自のカメラ術を教える講座だ。デジカメの進化で、一般の人でも手軽に高品質な撮影を行う環境は整っている。とはいえ、機器を使いこなしている人は少ない。そこで、本格的ではなくても、高機能なコンパクトカメラやスマホをうまく活用して、効果的に写真を撮るレッスンにニーズがあると踏んだ。実際、そうした講座は意外にもありそうでなかった。

s923「もともと人を喜ばせるサービスをしたいと思っていたので、一般の人が、いい写真を撮れるようになることをサポートすることがそれにつながると考えました。いい写真を撮るという本格派じゃなく、手軽にうまく写真を撮るコツみたいなところにニーズがあると考えました。受講形式も10回ワンセットとかでなく、一回完結にして、金銭的にも参加しやすいよう工夫もしました」と中原氏。いわゆるユーザ目線ということに関しては中原氏は、抜群のセンスを持っていた。

集客用に構築したブログへも着実に人が集まり始めていた。分かりやすく、中身の濃いコンテンツが受け、リピータもつくようになった。そして、2012年9月、中原氏は初めての写真講座を開催する。小人数制ながら、知人への声掛けとブログによる集客で定員も埋まり、順調なスタートとなった。もちろん、売上額は数万円レベル。まだまだそれだけで食べていけるほどではなかったが、ポジティブな中原氏は、この時点でしっかりと手ごたえを感じ取っていた。

ある程度軌道に乗り始めると、それまで拠点としていた静岡から東京へ移る。地理的にはリセットとなったが、首都でも少しずつ実績を積み上げ、講座以外の撮影の仕事も入るようになる。そうやって、いまでは誰もが講師になれるストリートアカデミーで人気・実力を兼ね備えたマスター講師になるなど、一定の地位を築き、それなりの安定を手にするまでになった。

安定企業とフリーが“同じ”のなるほどな理由

s92-2「ここへきてようやく少しは“安定”といえる状態にあります。でも、これも2、3年後はどうなっているか分かりません。ただ、正直、それほど不安はないんです。なぜなら、30年安泰でもその後どうなるか分からない。何かあったらその時のダメージってかなり大きいと思うんです。逆にいうと3年しか安泰はなくても、身軽に様々なことにチャレンジできるフリーの方がダメージは少ない。もしダメになったらカメラに代わる仕事を始めればいいわけですから。そういう選択肢があるというのが、いまの僕にとって、なにより会社員時代にはなかった精神安定につながっている部分かもしれません。結局、いずれ受けるダメージを小分けにするか、一気に受けるかの違いなんじゃないでしょうか。そういう意味では、会社員もフリーランスも不安の総量は変わらない気がしています」。

なんとも説得力のある言葉だ。会社という枠組みの中で保証された「安定」とムキ出しの空間で危険と隣り合わせの「不安定」。点だけでみれば、圧倒的に前者に魅力を感じるが、長い目で見れば、不安の総量は変わらない。安定にどっぷりとつかっている凡人や「ザ・サラリーマン」には到底できない境地であり、発想だが、見事な真理でもある。

30年前なら変人扱いだったかもしれないが、いまなら“金言”といっていいだろう。理想的なキャリアを潔く捨て去り、やりたいことを追求する中原氏の働き方であり、生き方。フリーとして活動するには、特別な何かを持っているとはいえないキャリアだけに、独立へ躊躇する会社員にとっては、リアルに刺激的で、参考にできるポイントがギッシリと詰まっている事例といえそうだ。

インタビュー前編:私が30年の“安定”を捨てたワケ


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【プロフィール】中原一雄(なかはらかずお)
北海道生まれ。中高大までは理系一筋の理系男子(有機化学 修士)。卒業後、メーカーの研究職として勤務。徐々にモノではなくカタチの無い新しい価値観を世の中に提供したいと考え、週末の専門学校通いを経て、退社。写真の世界へ。何とか入社した写真館を2か月で解雇されるも、WEBを活用した集客を実施することで基盤を確立。初心者向けのワークショップやウェディング、各種イベント、広告写真を中心に活動する。誰もが講師になれるストリートアカデミーでは、初のプラチナティチャーになるなど、名物講師の一人して活躍する。カメラはあくまでツールとして捉え、従来にない、形ではないサービスを模索し続けている。

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