インタビュー

ECサイトの革命児が描く野望とは

投稿日:2013年12月3日 / by

一億総起業時代”の可能性と展望

鶴岡氏
BASE株式会社CEO 鶴岡裕太氏
インターネットの利用者がいよいよ1億人に近づいている。比例して、EC市場は膨張。ヤフーショッピングの無料化でECショップオーナーのゼロ円立ち上げも、標準化されつつある。そうした中、シンプル・簡単・無料のECサイトの提供で急拡大するBASE。オープン1年足らずで登録店舗5万店を突破したBASE代表の鶴岡裕太氏に“一億総起業時代”の可能性や展望を聞いた。

30秒、無料のシンプルさでECショップを爆速拡大

鶴岡氏

鶴岡氏が目指すのは誰もが簡単にネットショップを持てる世界

30秒。BASEでネットショップ作成にかかる時間はわずかそれだけ。作業は、開設ショップの「URL」と「メールアドレス」、「6文字以上のパスワード」入力の3アクション。

もちろん、WEB知識ゼロでも問題なく作業はできる。料金は、完全無料。それでいて、デザインテンプレートも多彩で、決済機能もついている。あまりに簡単過ぎて、だまされているのでは、と思うほどだ。

このシンプルさと無料の手軽さで、BASEはわずか1年弱で登録店舗5万店を突破。さらなる拡大を目指し、店舗増殖を続ける。

「“ネットっぽさ”って何かって考えると、誰もが手軽に今までできなかったことができることだと思っています。東京にいないとできないとか情報が不足しているからできないとかじゃなく、高齢の方とか地方の人とか技術や知識のない人、場所やモノ的に売りづらいもので売れるようにするのがネット。BASEは、そんな“ネットっぽさ”を実現するツールとして開発しました」と鶴岡代表は、BASEの本質に触れながら、サービス開始の経緯を明した。

BASEが目指す世界とは

base

30秒でネットオーナになれるシンプルさと無料で一気に拡大した

BASE誕生のきっかっけとなったのは、婦人服小売り業を営む鶴岡氏の母親の一言だった。「ECサービスで売りたい」。王道の楽天で始めるのは簡単だが、何かと面倒を見る必要がある。お金もかかる。そこで、お金も技術も知識も不要なサービスを考え、BASEが誕生した。だからこそ、“誰でもネットショップオーナーになれる”と同じように謳っても、BASEは異彩を放ち、その言葉に強烈な説得力が宿る。

象徴的なのが、ここまでマネタイズをしていない点だ。鶴岡氏は「マネタイズはいつでもできる。でもまだ登録店舗は伸びているし、マネタイズすることで崩れていくものもある。だからできる限りマネタイズは遅くして、BASEの基盤を磐石にしたい」と展望を明かす。現在の規模で、有料ツールのオプション販売やサイト内で目立ちやすくする施策に課金するなど、収益が見込める形はいくらでもあるが、鶴岡氏が現状目指すのはあくまで、誰もがビジネスを行える基盤の確立だ。

「ネットっぽさ」の追求の先にあるものとは

鶴岡裕太

あどけなさの残る顔だが、内なる野心は壮大だ

5万店のショップではハンドメイドのプロダクツの販売が多い。これは従来のネットショップでは、SEO的な対策も難しく、モノはよくてもネットでは売りづらかったタイプのアイテムだった。ほとんど人口のいない山村の農家でとれた野菜を販売するショップもある。95歳のおばあちゃんがショップオーナーの店舗もある。モノではなく、時間を売る店舗もある。こうした多種多様な店舗の広がりと個性的な製品の流通は、売る技術のない人が手軽にショップオーナーになれる「ネットっぽさ」の象徴であり、鶴岡氏が目指す世界そのものだ。

もちろん、ショップオーナーになったから即、個人事業主としてやっていけるわけではない。BASEでは、リアル店舗との提携やショップオーナーとの面談の機会をできるだけ設け、売れるサポートを行う。ネットによるシステムで完結するのではなく、あえてリアルとの連動にも骨を折り、BASE自体の完成度を高めるフィードバックを行う。そうした部分が、いわいゆるWEB系の会社とは見ているところが違うゆえだろう。

「売上の上がっているショップはやはり、ブログやフェースブックなどのSNSを駆使し、顧客を開拓し、コミュニケーションを頻繁にとっています。中には月商1000万円を超えるようなショップもあります。もっともBASEだけで独立できることを目指す必要はない」と鶴岡氏。どうすれば売れるのか、というノウハウ伝授のセミナーも定期開催も行うが、BASEでは基本、誰もがビジネスを行えるきっかけを与え、サポートツールも用意はするものの、必要以上に前のめりにショップオーナーにアプローチするスタンスはとらない。

巨大な“競合”の参入も「歓迎」

thebase

雑然としていることがかえって無限の可能性を感じさせるオフィス

そうしたスタンスが、いまだ衰えない登録店舗数増加の背中を押しているのかもしれない。BASE躍進が刺激になったのかは不明だが、ヤフーショッピングが無料化に踏み切るなど、ネットショップオーナーになるコストが「無料」という時代が、いよいよ現実となった。ビジネス的には巨大な競合が参入してきた格好だが、BASEの登録店舗は逆に増えた。「ネットショップの“無料”の怪しさがなくなったので、むしろ歓迎ですね。増加したのはBASEのシンプルさがかえって際立ったのでは」とは鶴岡代表は、冷静に分析する。

BASEが見据える未来にあるもの

2013年10月にサイバーエージェントの“藤田ファンド”から約2億円を調達したBASEは、今後、機能の充実や人員の拡充とともにいよいよ広告展開も行っていく。登録店舗のさらなる増大は確実だろう。何度も「ネットっぽさ」というフレーズを口にした鶴岡氏の目にはいま、儲け主義のWEB系企業とは違う、数年後の新たな世界がはっきりと見えている。

“1億総起業家時代”の到来を「そう遠くない」とサラリと言ってのける鶴岡氏。2014年には在学中の大学を退学し、BASEに専念する。飄々としながら、冷静に2手3手先を見通す大分出身の23歳の革命児は、閉塞感の漂う日本に、誰もがビジネスを行える土壌の整備という希望をもたらし、そして、不遇といわれる日本の若者の働き方に夢と希望を与えてくれそうな、不思議なオーラを全身からプンプンと漂わせている。

BASEの作り方をこちらで紹介


〈Tシャツ作成Apps〉
オリジナルのデザイン、写真、画像などをアップロードするだけで自分だけのTシャツを作成しネットショップで販売するできる新サービス。このTシャツAppsを使って販売するT シャツは受注生産形式。従って、ショップオーナーの在庫リスクはゼロ。ショップを持っても売るものがない。そんな人でも商売を始められるこのサービスは、BASEの可能性をさらに大きく広げそうだ。

公式サイトはこちら:http://apps.thebase.in/detail/28

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