インタビュー

『ない』ことが生み出す柔軟性と仕事効率化

投稿日:2014年12月4日 / by

ガチャガチャ界のアウトロー『株式会社奇譚クラブ』広報しき氏インタビュー

kitan-kaiyou奇譚クラブには10名しか従業員がおらず。その人数で仕事を回している少数精鋭集団なのだが、少ない人数で仕事を行うにあたって、大事なことはどんなことなのだろうか。今後、少数の会社が増えていくだろうと予測される中、どういった心持で仕事に向かっていくべきなのだろうか。前回に引き続き、奇譚クラブ広報のしき氏にお話を伺った。

ホウレンソウが無い!?

奇譚クラブという会社にはあらゆるものが『ない』。例えば、奇譚クラブには報連相が無いのだ。一般的にはビジネスに必要不可欠と言われる報連相を行わないことが、奇譚クラブにとっては良い効果を生み出しているというのだ。
奇譚クラブの企画会議では、企画が一度通ったら担当者は全責任を持ち、企画の進行状況については、その後報告や連絡を一切行わない。プロダクトに関して気になることがあれば、月ごとの企画会議で相談する程度である。ほとんどの場合、出来上がった商品を見て、他のメンバーは初めて完成品を目にするというのだ。
「悪い意味でなく、いい意味で個人個人にすべて委ねています。だから一人一人が自分の中の100%のパワーでやらないといけないっていう気持ちになっているのかもしれません」としき氏。
「企画会議で企画者は、簡単なスケッチ程度でアイディアを出してくるんです。一枚の企画書で完結するようなアイディア出しをします。実際に商品としてどんなものになるか、周りの人から見れば全然分からないこともあります。しかし、企画会議でGOが出れば、その後は企画者の裁量に全て任せます。途中報告も一切ありません。というか、ワンフロアで仕事をしているので、空気的に状況はなんとなくわかる環境なのも少人数制の良いところです。うちの会社は企画を通すまでに判子はひとつも使わないんです。最初の企画の段階でみんな意見が一致しているので、それ以降は企画者が自由にやるという感じですね」としき氏は言う。奇譚クラブの社員同士の厚い信頼関係が伺える。

責任を与えられることで生まれる個々の底力

kitan-shiki-2奇譚クラブのような働き方は、各々が高いレベルの自己管理能力と実現力を持ち、尚且つお互いを知り尽くしているからこそできることなのかもしれない。
自身の出した企画を自らが手掛けるということは、自分の行いすべてがダイレクトに跳ね返ってくるということだ。それには大変な緊張感を伴うだろうが、同時に大きなやりがいを得ることとなるだろう。それが、良い企画を出そうというモチベーションに繋がったり、クオリティへの情熱に繋がったりする。一つの企画が上手くいけば次のやりがいへ繋がる好循環も生み出している。結果的にそれがひとりひとりの能力を最大限に発揮することへ繋がり、チーム全体の力を底上げしていく。

大きな集団では人数が多い分、責任の所在が煩雑になり押し付け合いになることもある。身分が下になればなるほど受け身な体制になり、当事者意識を忘れがちな従業員も多くなる。奇譚クラブが採用する少人数制はその危険を回避し、個人のレベルを最大限に引き上げる効果を生み出してくれる。

ノルマが無い!?

奇譚クラブは、会社として月に5アイテムをリリースするという制約以外は特にノルマを持たない。そこには何よりも企画のおもしろさと、鮮度を大切にする奇譚クラブのこだわりが伺える。奇譚クラブのモットーは、あまり数字をベースに考えず、その時々のニーズにあった商品をつくることだ。利益にこだわって作った商品よりも、消費者目線で商品を作るからこそ、それが結果的に消費者に受け入れられる商品になる。

素晴らしいアイディアとは、いつ思い浮かぶのか予測不可能なものだ。毎月決まった数良いアイディアが浮かぶなどということは非現実的で、そこにリリース数の制限を付けることは非生産的である。偶発性が伴うものに、目標数を設定することは理論的ではない。考えてみればこれは極めて効率的なやり方だ。だが、組織を運営するためにはある程度の結果が必要で、大きな集団を抱える組織はその矛盾に結果的に苦しめられることになる。これは、少人数制を採用している奇譚クラブだからこそ出来るやり方なのかもしれない。

クオリティを犠牲にしない

奇譚クラブは他に類を見ない変わった商品を企画しているからこそ、そこに高いクオリティを持たせることにプライドを持っている。

「僕らはメーカー目線というよりも、お客さん目線で商品開発をしていると思います。自分自身がカプセル開けた時に、形が悪かったりしてがっかりする経験がよくあるので、自分が作る商品は、全部開けて喜びが出てくるようなものにしたいですね。」としき氏。

「社長がよく言う言葉で、『いらないものは作らないようにしよう』というのがあります。200円等言う値段でもお金を出して買ってくれているということには変わりないので、誠心誠意を持って制作しています。お金を出してくれた人に対してきちんとクオリティで返したいという想いで作ってます。それは自分たちが欲しいものをつくるという考えに繋がっていると思います」としき氏は語る。

期限というノルマをつけることは、クオリティにも悪影響を及ぼす。数字に縛られないことがクオリティの面でも奇譚クラブの強みになっている。

残業をしない

奇譚クラブの社員は、できるだけ残業はせずに自分の時間を持つことを心がけているという。
「基本的にうちの会社の社員は定時に帰るようにしてます。残業しないようにみんな心掛けていますね。それは『自由な時間を大切にして、アイディアの肥しを作れ』という社長の考えに従ってのことです。やっぱり外部からの刺激が無いといいものは作れません。それに、忙しいと良いアイディアってなかなか生まれないですしね」としき氏。
社員にそう説く奇譚クラブの社長は会社にほとんどいないそうだ。しき氏曰くいろいろな人とコミュニケーションを取るために飲み歩いているというのだ。
「コミュニケーションを取るために、飲みの席っていうのはかなり大きいと思います。お酒が入ると本音で話しやすくなりますし、そうやっていろいろな業種の人と出会って生まれる企画もあります。コップのフチ子もその一つですね。」
奇譚クラブでは、良いアイディアを生み出すための行動ならば、自由行動にとても寛容だ。

このような方針はクリエイティブな現場だからこそ通用するものなのかもしれない。しかし、ものづくりの現場以外でもこの教訓や考え方はいくらでも生かせるのだ。どんな仕事でも、ルーチンワークの毎日では社員の思考は停滞しがちだ。それが、社内の雰囲気を悪くさせる原因になることもある。

仕事をしていく上で、一番非生産的なことは、同じことを繰り返し停滞していくことである。新しい能力やアイディアは、自らが能動的に取りに行かなければいつまでも生み出すことはできない。

『ない』ということを実現させるために

ないない尽くしだと、ここまで紹介してきたが、奇譚クラブには確実に『ある』ものが存在する。それは、社員同士の『絆』であり、社員ひとりひとりが持つ『信頼感』と『責任感』である。これが『ある』ことで、いろいろなことを削減してもプロフェッショナルな仕事ができているのだ。これはどんな業界でも、どんな仕事をしている人でも見習わなければいけない姿勢なのではなかろうか。

其の一:10名の精鋭からなるクリエイティブ集団の働き方
其の二:『ない』ことが生み出す柔軟性と仕事効率化
其の三:決め手は一枚の資料!5秒で決まる企画会議


kitan-company
会社名:株式会社奇譚クラブ
郵便番号:〒150-0013
住所:東京都渋谷区恵比寿2-14-7
TEL:03-6408-6808(代表)
FAX:03-6408-6809
設立:平成18年9月25日
代表取締役:古屋大貴
事業内容:
1:玩具の企画、デザイン、製造および販売。
2:雑貨玩具、アパレル商品のOEM。
3:企業プレミアムのOEM。
4:キャラクターコンテンツの版権管理。
URL:http://kitan.jp/

参考 「コップのフチ子のつくり方」著・古屋大貴 パルコ出版
http://www.amazon.co.jp/dp/4865060855

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