働き方

グローバル化で起こっていること(後編)

投稿日:2014年3月11日 / by

tsunami

シームレスに国境を超える仕事

世界中で同一賃金。仮に基準となる賃金が高く設定されるのだとすれば、とりわけ新興国では、現地ネイティブの労働者は極めて高待遇の恩恵を受けることになる。それこそ年収の何倍、というレベルの高給取りも出てくるだろう。しかし、それは、寸分たがわず企業がしっかりと社員をマネジメントできる体制が整ったビッグカンパニーであることが、実施の条件といえる。

もっとも、すでに世界はネットによって一つにつながっている。巨大なオフィスビルのエントランスを潜り抜けずとも、世界を股にかけた仕事をすることは可能な環境が整っている。典型的な仕組みとして、クラウドソーシングがある。そのボーダレスなプラットフォーム上では、世界中のワーカーが自らのスキルを売り出し、企業との接点を求め、手ぐすねを引いている。

すぐれたデザインが気に入り、何気なく海外に発注してみたら、日本での相場の10分の1で済んだ、といった例はごく当たり前のようにある。もちろん、安かろう、悪かろうの側面は否定できない。デザインがパクリだったということも珍しくはない。それでも圧倒的な低価格によって、コスト的な痛手はないに等しいといっていいだろう。

製造業が新興国に工場を新設し、現地相場で製造するのはもはや企業戦略としてスタンダードであり、珍しくはない。だが、クラウドソーシングの事例と併せ、こうしたことが拡大すればするほど、日本から仕事が奪われ、円が流出し、そして、国内の賃金は下降線をたどる。この流れに逆らおうとすれば、企業は大きな体力の消耗を強いられる…。どちらに転んでも日本企業は何らかのダメージを被る状況にある。

グローバル資本主義が企業に突き付ける本質とは

過去に“グローバル展開”で大きな痛手を被った日本にとって、同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。そうなると、賃金も大幅にとはいかないまでも、世界の水準にできる限り歩み寄る必要がある。PCやスマホなどは、海外との価格差に愕然とする。ほとんど性能に差がなくとも、日本製が2、3割高いということは珍しくない。その原因はやはり、今となっては根拠なく高い人件費にあるといわざるを得ない。アノ時代は、高品質・低価格でそれを補うに余りある売り上げを誇ったが、残念ながらいまの日本にそこまでの体力はない。

誰だって給料は高い方がいい。だが、不当に高い給与水準が、企業の存続を苦しめるなら、妥協せざるを得ないハズである。さもなければ、ワーカーはリストラの憂き目にあいかねない。人減らしやコスト削減は、不当に高いコストを維持するための企業の涙ぐましい努力に他ならないが、結局、誰が幸せになっているかといえば、誰でもないともいえる…。

では、グローバル化により、やるべき本当のことは、なんなのか…。国境がシームレスな中で、企業がそれなりに待遇をキープすることを前提とすれば、従業員を給与に見合った働きや働き方をさせることに尽力するしか方法はないだろう。単純作業では、もはや日本人ワーカーではコストが合わない。もちろん、ワーカー自身がいち早く、コモディティから脱し、知的にも技術的にもグレードアップを図るべく、主体性を持つことが必要条件であることは言うまでもない。つまり、グローバル化が日本に突き付けている本質は、企業はもちろん、旧来ワーカーに宿る従来の働き方や意識からの脱却であり、変革なのである。

(前編はコチラ

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