インタビュー

あなたの仕事はいくら?自分で年俸を宣言できる会社

投稿日:2013年11月5日 / by

アソブロックが考える「働き方」~年俸宣言制度~

団遊氏と社屋

南青山の路地を入ったところにひっそりと佇むアソブロック本社

アソブロック株式会社 団遊氏 インタビュー
其の壱

アソブロック(株)は、奇妙な会社だ。社員が自分の給料を決め、場合によっては社員の転職を斡旋する。社長の団遊氏は「うちは事業会社じゃなく育成会社」と断言する。従来の会社の概念からは完全にかけ離れている。こんな経営者はみたことがない。とにかく、その革新的な脳みその中味を、8回にわたり徹底してのぞいてみる――。

もはや会社にぶら下がれる時代は終焉

-まずは、どういった経緯で年俸の宣言制度を取り入れたのかという部分をお聞かせ下さい。

これからの世の中を考えると、企業ではなく個人がとにかく重要になってくるんです。エンプロイアビリティって言うらしいんですけどね。働く力=雇用される能力っていう言い方もしますが、そういうのを上げていかないといけない社会ができあがってくるんですよ。

日本の会社の平均寿命って、どんな企業であっても24年位らしいんですよ。一方で一般的なサラリーマンっていうか、働く人は22歳で大学から出て、今だと65歳まで働かなきゃならない。今後は長くなる一方ですよね。そうなると自分が望む望まないに関わらず、ファーストキャリアの会社はほぼ潰れるんです。

そうなると転職というか、個人が自分の能力を上げていくことを自覚的にやっていかないと、自分の描きたいキャリアは自由に描けない。僕は人材関係のお手伝いをしていることもあるので、そういうことについて考える機会も多いんです。

うちみたいに社員規模が10数人とか、それ以下みたいなところになると、より一層景気の動向とかでどうなるかわからないんですよ。それなら、個々が「もっと自己の能力を高めないといけない」と考えるような環境にすることが大事だなと思ったんです。

売り上げ至上主義から“育成機関”へ転換した理由

-制度が始まってどのぐらいの期間が経過したんですか?

制度を始めて4年目位です。創業当初は御多分に洩れず“目指せ、ビッグカンパニー”ということで、仕事の量と売り上げを追ってたんです。でも、ある時に「それは違うな」って思ってその方針は辞めました。そこからは会社のコンセプトを大きく変えまして、うちは事業会社ではなく、人材育成会社だってことにしたんですよ。事業は属人的にやればいいってことにして、人がエンプロイアビリティを上げるための育成機関ってことにしたんですよ。

―人材の育成機関?

そうですね。そのやり方はプロ野球球団に近いなあとよく言っています。自分の稼ぎは自分で稼いでいこうということです。それをやるにあたって一番分かりやすい方法が、年俸の宣言制度なのでこの制度を取り入れました。これは、社員全員がそうしてるんです。

年俸自己申告制で過剰要求はないのか…

年俸宣言について語ってくれる団氏
―周りからの反対は出なかったんですか?

これ結構やる前に色々言われたんですよ。「2000万って言われたらどうすんの?」とか聞かれるわけですよ。もし誰かが2000万って言ったら、その人には「なんで?」って一応根拠を訊くじゃないですか。そこで答えが出なくても「分かったよ」って基本的にはこっちも言われた通りに出します。

言われたとおりに年俸を出すってことで一番担保しなければいけないことは、年俸に関する全部の情報を全員が知ってることなんです。
当たり前のことですが、この会社がこけると給料は貰えないんですよ。全部の情報を全員が知ることで、そういうことを理解できる。うちは役職者含めて、全員の給料を全公開なんですよ。他の人の給料が分かった上で社員全員が公平な立場に立って、自分が幾らなのか考えようってことにしています。

それでも「全員の給料を全員が知っているとはいえ、2000万っていう奴がおるで」っていう話になって。そう言われたら言われたときにとりあえず「なんで?」って訊いて「考えるわ」って言います。

それが学びだと思うんです。どうしたら2000万払えるかってことを、考える機会が無いのが一番問題だと思ったので、言われたときには考えようと思って始めたんですけど…

これね、やってみて4年経ったんですけど、みんな控え目ですよ(笑)

年俸宣言制度の現実

―そうなんですか!?でも、確かに全員から仕事ぶりを見られるわけですから、それに見合わなかったらあれこれ言われますもんね。

やはり、全部公開してるのは大きいですよね。給料を上げるときとかも、自分で申請して上げるわけじゃないですか。年俸って人に上げてもらうのは簡単なんですけど、自分で上げてくださいって言うのはなかなか難しいんですよ。それでも僕が「上げなさい」っていうからみんな上げるんですけどね。

「とにかくもっと上げなさい」っていう話を僕がすると、年俸を上げる根拠が自分に必要になってくるんですよ。それがすごい大事で、去年よりこれができるようになったとか、自分の売り上げを考えたときに、「こういうことができたから」とかいう根拠がないとダメなんです。それが自分のスキルと向き合うというか、自分の雇用能力と向き合うということに繫がるんです。

―アソブロックは会社というより育成ファームみたいなものですね。

そうですね。それを目指していたら売り上げも上がったんです。それがまた不思議なことですね。

其の壱 あなたの仕事はいくら?自分で年俸を宣言できる会社
其の弐 あなたは役に立ってる?会社に自己価値を進言してみよう
其の参 アソブロックに入った新入社員はどのようにして年俸を決めるのか?
其の四 転職も容認?適材適所の働き方
其の五 人材が集まると生まれるシナジー
其の六 会社としてよりも個人としての成長を促す会社の在り方

其の七 仕事は自ら取りに行く姿勢が大事
其の八 継続することでカラダに染み渡るワークショップのあり方

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