インタビュー

生涯現役を実現するためのたった一つのこと

投稿日:2013年12月3日 / by

冒険家 三浦雄一郎氏 インタビュー

タニタ健康大賞を受賞した三浦氏 ~80歳でエベレスト登頂を果たしたスーパー老人が明かす極意~

 

定年70歳時代の到来が時間の問題となっている。働くことと生きることが別では、モチベーションが続きづらい世の中ともいえるかもしれない。80歳でエベレスト登頂(2013年5月23日)を果たした冒険家の三浦雄一郎氏。何度も挫折しながらも這い上がる原動力は一体、どこにあるのか。2013年12月3日、『第10回タニタ健康大賞』を受賞した“スーパー老人”の生涯現役の極意に迫る――。


困難に遭遇したときにどうするか

とてつもない目標があるとする。それは頭で考えるのはもちろん、目で見ても危険極まりなく、どう考えても実現困難。ましてや、現状のコンディションではとても無理。

<別にやる必要もないしやめておこう…。>

高齢者に限らず、多くの人がこうやって、目標に向かうことをやめてしまうのではないだろうか。

同じ状況の時、三浦氏は常にこう考える。「どうしたらこの困難を乗り越えられるのか」。

その脳みそは非常にシンプルだ。三浦氏の頭には、「できない理由を考える」選択肢など存在しない。80歳にしてギネスに2つ記録される偉業を達成しながらなお、新たな目標を設定し、前進する三浦氏の背中を押すのは、そうした「夢や目標を持ち続けること」に尽きる。

なぜ困難を克服できるのか

80歳でのエベレスト登頂への道のりは決して平たんではなかった。60代から心臓病は“持病”となり、常に時限爆弾のよう三浦氏の体を襲った。76歳の時には、スキーのジャンプで転倒し、大たい骨と骨盤を骨折した。年齢的には、日常生活ができれば御の字、エベレスト登頂など、あり得ない。2度の不整脈の手術も行い、「高尾山もダメ」とドクターストップがかかった。

それでも三浦氏は、公約通り、2013年5月23日、エベレスト山頂にいた。「80歳でもまだまだいける」。山頂でそう語った三浦氏は続けて「最高の幸せです」としみじみと話した。実現が困難な目標には、クリアした先に至福の幸せがある――それを体で知っているからこそ「エベレストに登る」という目標は、どんなに危険で困難でも、クリアする方法を考えることしか頭に浮かばない。

60代でどん底を見たから見えたエベレスト山頂

挨拶する三浦氏

目標や夢を持つことが活動の原動力と語った三浦氏

「70歳、75歳、80歳でエベレストに登りましたが、単に登っただけじゃない。60代で飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足でひどいメタボに。血圧も190近く、糖尿病でした。心臓もダメ。もう完全にレッドゾーン。余命3年も宣告されました。そんな60代がエベレストに登ればこれは面白い。99歳でモンブランを滑降した父がいましたので、それも原動力になりましたね」と三浦氏は、エベレスト登頂を目標にした理由を楽しそうに振り返った。

ピンチはチャンスとはよくいわれる。三浦氏は、健康法について、2つあるという。一つは守りの健康法。もう一つは攻めの健康法。前者は、食生活の改善や体操といった日常レベルのもの。後者は、例えばマラソン完走、富士山登頂などの目標を設定し、それに向かってコンディションを整える健康法。三浦氏はもちろん、後者を実践する。

攻めの健康法とは目標を持つこと

「攻撃は最大の防御なりといいますが、攻めの健康法は最大の健康法になる。私は目標をエベレスト登頂に定めましたが、それを達成するためには、健康であるしかない。骨折や心臓病に苦しみましたが、それでは目標は達成できない。目標を達成したいという強い思いがあったから、克服できた。80歳でエベレストを登頂できた原動力は何かといわれれば、それは目標を設定したからだと思います」。

高齢化が進み、今後定年はさらに伸び、70歳を超えることは確実とも予測されている。そもそも、定年という言葉は、なんとなく人生の終わりのような響きもある。そうではなく、常に目標を立て、それを達成し続ける。小さなことでも関係ない。生涯現役とは、結局、死ぬまで目標を持ち続け、それを達成する努力を続けることと同義。三浦氏の生きざまからは、そうしたメッセージがあふれ出ている。


冒険家・三浦雄一郎

タニタ健康大賞を受賞した三浦氏(左)

【タニタ健康大賞】
2004年に創立60周年を迎えたタニタの記念事業の一環として創設された。日本人の健康づくりに貢献した個人または団体を顕彰する。トロフィーおよび副賞50万円が贈呈される。受賞した三浦氏は、85歳での新たな目標としてヒマラヤ山脈のチョーオユー(8201メートル)からの親子でのスキー滑降を明かしつつ「そういうつもりはなかったが今後は、高齢社会の老人たちにもっと元気を出してもらって、もっといろんな可能性があることを示し、もっと世界を豊かに幸せにしていくことに一ミリでも貢献したい」と決意を新たにしていた。

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