インタビュー

ノールールの会社運営になぜ不安がないのか

投稿日:2015年9月22日 / by

ルールがないのにぶれないワケとは

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(株)ウィルフォワード
成瀬拓也社長

前代未聞といえる“ルールなし経営”を実践するウィルフォワード・成瀬拓也社長。無謀と紙一重にみえる大胆すぎるチャレンジだが、不気味なほどに泰然自若としている。「誰かが経営を揺るがすような大失敗をしないかな、どこかで思っていたりしますね」とまで言い放つ成瀬社長は、なぜ、ブレないのか。インタビュー後編では、その秘密に迫る――。

“縛り”なしでなぜうまく回るのか

出社義務なし、を筆頭に、報酬を自分で決める、労働時間は完全裁量、休日も個人の都合でOK…。ルールがないのだから当然だが、同社の働き方は、いわゆる日本の会社員の姿とはあまりにもかけ離れている。ここまで来ると、さすがにどうやって会社を回していくのか心配になるほどだ。だが、成瀬氏はまるで意に介していない。

willfoward4「完全裁量制ですが、もちろん、リモートでのやり取りはかなり洗練しており、誰が何をしているのかはキチンと把握できています。さらにパワーモーニングの他に、毎週月曜日にも全員が顔を合わせる機会は設けていますので、コミュニケーション面の問題はありません。本当に家族のように兄貴が弟妹の面倒を見るような関係がうまくできあがっています。ですので、経営上問題になるようなことは起こりえませんね。むしろ、誰かが経営を揺るがす様な失敗をしないかと、どこかで期待していたりしますよ」と成瀬氏は不敵にほほ笑む。

優先順位を普通の会社と逆にする根拠

通常の会社は、何よりも売り上げを最優先にする。どんなにきれいごとを言っても売り上げがなければ始まらないからだ。確かにそれは間違いない。だが、同社ではむしろ、売り上げの優先度は下から数えた方が早い。ルールがない上に、この姿勢では、ますます経営に不安がよぎるが、そこには明確なポリシーがある。この点については、無謀というより、コンサル時代の経験も踏まえ、正しいという確信のもと、実践している。

「とにかく会社を大きくしよう、という考えだと、どうしても売り上げが最優先になります。私もコンサルをしていましたからそうしたことはよく理解しています。しかし、そうすると結局は社員にしわ寄せがいき、疲弊し、離職率が高まり、採用に力を入れざる得なくなるんです。ウチでは、それを踏まえ、最初から社員の教育に力を入れているだけなんです。コストのバランスを考えると結局は同じところへ収斂していく。売上げへの心配についても、余計なコストをかけ過ぎなければ、急拡大を目指さない限りは、維持していくことはそれほどハードルは高くないんです」と達観している。

willfoward05会社の規模が、それほど大きいわけではないので、維持の基準を単純比較はできないが、理屈の上ではまさにその通りだ。要は、経営者が、「売上げを上げなければ成長どころか維持さえ難しい」と目先の売り上げだけに捉われてしまうか、自社のビジョンをぶれずに思い描き続けられるかの違いといえるだろう。その点で、同社を経営する成瀬氏には、前者のようなネガティブ思考はほぼないに等しく、むしろ、真逆のアプローチからどんな化学反応が起こるのかが楽しみで仕方がないのかもしれない。

趣旨に賛同したものが集まる仕組み

ぶれずにいられるもう一つの要素には同社の人材力もあるだろう。各社員の主体性を最大限に尊重する同社には、その趣旨に賛同した人材が吸い寄せられように集まってくる。積極的に実施しているインターンで、その社風を肌で感じ、魅了され、そのまま社員となるケースも少なくない。だから、これだけの特殊な経営スタイルながら、同社はぶれることなく、規模の拡大に成功している。もっとも、これだけ自由が容認されると、独立という道筋も当然のように個々の社員の視野に入ってくる。その点についても成瀬社長は、むしろ歓迎している。

「せっかく育てた人材が抜けてしまうというダメージは当然あります。とはいえ、抜けることで関係性が失われるわけではなく、むしろ、ずっとつながっていきます。ですから、人が辞めることもそれほど気にしていません。むしろ、単なる契約という形でのつながりでなく、きずなや信頼で結ばれている方がよほど重要だと考えています。実際、海外で仕事したいといっていた人間がいまそうして離れた地で活躍していますし、将来的に別のことをやることを今から公言している人間もいます。我々はそうした人間をトコトン応援したいと思っています」と成瀬氏。

ルールの正しい使い方

willfoward03正社員として会社と契約を結ぶ。通勤する。上司のいうことを無条件で聞く。利益を上げる。給与を受け取る…。考えてみれば、これまでの企業と社員の関係は、雇う―雇われるというものでしかなかった。契約に対し、その見返りとして利益を返す。ただそれだけだ。裁量を与えられても、厳然たるルールで縛られ、支配関係はキープされる。結果、絶対的なヒエラルキーができあがり、場合によっては社員が不正に手を染めることさえも組織的には“善”とされる。これでは、社員が心の底からやりがいを感じ、仕事に取り組むことは極めて困難といわざる得ない。

成瀬氏はいう。「ルールを設けることは否定しません。でも、例えば毎週月曜日に朝礼と決めたとして、形式的にやるだけでは全く意味がない。なにか発表することがあるから朝礼するのはいいですが、そうでなければ、縛るだけのものでしかない」。いかにして、社員が、やりたいと思い、主体的に動き、成果につなげるのか…。ルールなし、失敗大歓迎の同社の壮大な実験は、委縮と諦めで行き詰まり感の漂う日本企業にとって、いまのところ、そこにブレークスルーを起こす“サンプル”として大いに期待のもてる化学反応を起こし、推移している。(前編はこちら


プロフィール 成瀬拓也
1980年北海道札幌市生まれ。筑波大学体育専門学群出身。学生時代は箱根駅伝を目指して、競技者としてだけではなく、トレーナー、マネージャー、リクルーターとしての活動。卒業後は、起業か就職で迷った末、アチーブメント株式会社に入社。営業・新規事業を経て人事採用担当へ異動。全国の大学や学生団体などでセミナーや講演を実施し、広告を使わずに口コミだけで8,000名以上の大学生をエントリーを集め、入社したい企業ランキング25位の企業にする。退社後、2011年8月にウィルフォワードを設立。既存の管理型組織運営とは大きく異なり、愛を土台に、クリエイティビティを最大化させるために、ルールや規則をとっぱらい、自由でありながらも家族的な強い絆で結ばれた組織作りを行う。「同じ釜の飯を食う」ことで仲間になる「お仲間(同釜)理論」や、ランニングをしながらミーティングをするランミーティング、学びと親睦を深めるためにインターン生も連れて海外へ研修に参加する「うぃるとり」、社員のみならず家族も一緒に参加してキャンプやスポーツをする「うぃるれく」などそのユニークな取り組みも数多く実施する。


【会社概要】
株式会社ウィルフォワード会社名  株式会社ウィルフォワード(Willforward,Inc.)
所在地  〒153-0064 東京都目黒区下目黒4-15-13
代表取締役      成瀬 拓也(Takuya Naruse)
設立    2011年8月8日
資本金  500万円
事業概要:インサイドアウトマーケティング事業
メディアプロデュース事業
クリエイティブ事業
コラボレーション事業

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