働き方

職場での精神障害者との“共存”で押えるべきポイントとは

投稿日:2017年1月17日 / by

2018年から法定雇用率の算出対象に新たに精神障害者が追加

障害者雇用促進法では、身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害により、長期にわたる職業生活に相当の制限を受ける者などを、それを理由とする差別を禁じている。2018年4月からは、法定雇用率の算定基礎の対象に、新たに精神障害者が追加される。そうした背景もあり、今後、その就職件数の増加が予測されている。
gray1予測では、障害者雇用率は、現在の2.0%が、2018年には2.4%、2023年には2.8%に上昇するとみられている。なかでも、精神障害者の割合は増加傾向にあり、2014年以降は、身体障害、知的障害を上回っている。法改正による精神障害者の雇用義務化で、その傾向に拍車がかかることは必至で、企業もその対応を進めて行くことになるだろう。

2011年にスタートし、主に精神障害を抱える求職者を支援する「アビリティスタッフィング」を運営するリクルートスタッフィングの染野弓美子氏は、こうした状況を次のように解説する。「法改正によって、今後、精神障害者の雇用は確実に増加していくと予測しています。アビリティスタッフィングでは、こうした人材の就業機会を創っていくことはもちろんですが、働き続けてもらうことをそのゴールと捉えています」。

精神障害者が職場に増えるなかで、我々は何をすればよいのだろうか?メンタル不調のきっかけが仕事である可能性もあるだけに、十分な適性の見極めはもちろん、それなりの配慮は必要になる。

アビリティスタッフィングで、20代の不安障害の女性が初めて障害者枠で就労した事例では、飲み込みが早く、順調に職場になじみ、先輩社員に相談できる関係も築き上げられたことが紹介されている。このケースでは、もともと求職者のスキルが高かったことに加え、当初は時短勤務から始め、徐々に職場に慣らしていったことが成功要因といえる。

一方で、乗り越えるべき課題を残した事例も報告されている。統合失調症の30代男性は、それまでに障害者枠で安定して就労。待遇改善を目指しての転職を実行した。就職活動の結果、希望の転職先への就職に成功し、業務についたものの、企業側の体制の都合もあり、約1か月、定期業務がない状態が続いた。その結果、男性は居場所がないと不安に感じ、体調が悪化。退職となってしまった。

2つの事例からみえてくるのは、受け入れ態勢の大切さだ。20代女性のケースでは、時短勤務から徐々に慣らしていき、同僚も自然な対応で、無理なく順応できた。一方の30代男性は、障害者枠での就職経験があったことへの安心感もあっただろうが、新体制への移行時期という新しく人を受け入れるには不十分な状況で採用。精神障害者だからというのではなく、だれもが不安になる状態だ。簡単ではないが、この辺りは細心の注意を払う必要があるだろう。

“共存”のポイントを解説する染野氏

“共存”のポイントを解説する染野氏

染野氏は、共存のポイントとして、次のように助言する。「精神障害といっても就職を目指す人は、就労意欲があり就労に関しては医療の許可のある方々です。大抵の場合、当人も他の就業者と同様に対応して欲しいと望んでいます。そもそも、就職先選定の際には、適正を十分に吟味していますから、配慮は必要でも、過剰に身構える必要はなく通常通りで問題ありません」。

アビリティスタッフィングでは、企業側との綿密なコミュニケーションに加え、精神保健福祉士によるフォローも随時行うことで、他の障害者就業支援センターなどより高い、9割を超える定着率(6か月)を実現している。職場のダイバーシティ推進は、時代の流れに沿うように今後さらに加速していきそうだが、受け入れる側は、変に構えずあくまで自然体でいる。それが、多様化時代のビジネスパーソンの基本のキといえそうだ。

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