働き方

多様化が今後急速に進む理由とは

投稿日:2016年8月15日 / by

変人安田の境目コラム

利益重視の効率化がもたらす弊害

人間という生物は、効率を追求して発展を遂げてきた。そのスタートは分業である。何かの作業をする時に、それをいくつかの役割に分解し、それぞれの役割を得意な人に振り分ける。ある人は木を切り、ある人は穴を掘り、ある人は食事をつくり、ある人は裁縫をする。苦手なことを他人に任せることによって、得意なことだけに自分の時間を集中させることが出来る。当然のことながら、一人で全てをやるよりも効率が良くなり、全体の生産性はアップする。その成果物を公平に分配すれば、一人で全てをやるよりも遥かに大きな成果を得ることが出来る。

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こうやって人は組織をつくり、効率を追求してきたのである。この仕組みは今でもほとんど変わらない。営業が得意な人が営業し、開発が得意な人が商品を作り、伝票処理が得意な人が伝票処理をする。全ての組織は役割分担によって成り立っているのである。

もうひとつ、人間には他の生物にない、際立った特徴がある。それは多様化である。効率だけを追求していけば、全ての成果物は同じ規格に統一されていく。実際に、石器時代の人類は、同じ形状の家に住み、同じような衣服を身にまとい、同じようなものを食べていた。だがそれでは味気ないし、つまらない。

効率化の臨界点に待ち受ける多様性への渇望

そこで人類は、効率化によって手に入れた「余裕」を、多様化に回すようになっていく。一人ひとりが違う家を建て、違う衣服を身にまとい、違う髪型をし、違う食材と調理法で作った料理を食べるようになる。もちろん効率は悪い。だがそれによって一人ひとりの個性が生まれる。個性こそが、文化の源なのである。

多様化はその後もどんどん進んでいく。新しい髪型が生まれ、新しい料理が生まれ、新しい娯楽が生まれ、新しい仕事が生まれる。歌手、スポーツ選手、お笑い芸人など、今や数えきれないくらいの職業が存在する。

効率化と多様化。一見矛盾するこの二つの価値観を、人類は上手く組み合わせて発展してきたのである。だがその緩やかな発展は、近代になって一変する。技術の向上と、株式会社の誕生。その二つが人類の価値観を根底から変えていくのである。より速く、より大量に、より安く。無駄を極限まで省き、一円でも多くの利益を残す。

その結果、人類は飛躍的に進化した。誰もがスマホを持ち、安くて質の良い衣服や食べ物にありつける時代。だがそれでも、効率化の流れは止まらない。なぜなら効率化の目的が、快適さではなく利益だからである。より多くの利益を残す。そのためには効率化を止めるわけにはいかない。

だが究極的に効率を追求していくと、個性はどんどん失われてしまう。全ての人がユニクロを着て、全ての人が牛丼やハンバーガーを食べ、全ての人が都市部に暮らす。それが一番効率の良い生き方なのだ。そこには個性も文化もない。究極の効率化を成し遂げた人類は、今明らかに効率化に飽き始めている。多様化への揺り戻しは大きな波となって、あらゆる業界を飲み込んでいくだろう。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

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