働き方

“ロボットに仕事を奪われる論”が愚かな理由

投稿日:2016年12月5日 / by

なぜロボットや人工知能に脅威を感じる必要があるのか

ロボットや人工知能に仕事を奪われる。これからどうやって生きていけばいいのか。本気で悩んでいる人がいるみたいです。「あなた本気ですか?」と聞きたくなります。真剣に悩んでいる人たちには、怒られてしまいそうですけど…。

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ロボットが畑を耕して作物を作り、牛や豚を飼育してハムやソーセージを作り、病人を診察して薬を出し、悪いことをした人を取り締まり、裁判も刑務所の管理も行う。まさに映画の中の世界です。でも近い将来、実現する可能性はあります。そうなったら、人間は何をするのか。人工知能に管理されてしまうのでしょうか。それとも仕事を失くして飢え死にするのでしょうか。

アラブの産油国には、働いていない人たちがたくさんいます。どんどん石油が湧いて来るので、働く必要がないのです。石油を売って、食料や、車や、絵画や、お酒や、宝飾品や、つまりは何でも手に入ってしまうからです。

彼らの場合は、石油に仕事を奪われたと言えます。でもぜんぜん困っていません。もちろん、困っている人たちもいます。それは、石油の恩恵にあずかっていない人たちです。オイルマネーは溢れている。でも食べていけない貧乏な人たちもいる。これは石油のせいでしょうか。いやいや、どう考えても人間の責任です。

ロボットは人がやらないことをやってくれる

どんなに石油が出ても、どんなに世界中が金持ちになっても、誰かが働かなくてはならない。誰かが畑を耕し、誰かが道路を整備し、誰かが掃除洗濯をしなくてはならない。その通りです。でもその誰かが、ロボットになるのです。労働者の仕事がなくなる。それは悲しいことなのでしょうか。それとも喜ばしいことなのでしょうか。

なぜ、労働者はお金持ちの家を掃除するのか。それは、報酬を得るためでしょうか。それとも、誰かがやらなくてはならないから、でしょうか。私は後者だと思います。やらなくていいのなら、それに越したことはないのです。

だったら、労働者はどうやって生きていけばいいのか。それは全くの別問題です。ロボットが食料を作り、ロボットが家を建て、ロボットが掃除洗濯をし、ロボットが社会インフラを動かす。なぜ困るのですか?私には理解できません。困るのは仕事を奪われることではなく、便利さを享受出来なくなることです。その原因はロボットでも、人工知能でもなく、人間なのです。

一部の人間の優越感を優先するのか。それとも全体の幸福をめざすのか。決めるのは人工知能ではなく、私たち人間なのです。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

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