働き方

働き方用語の正しい読み方【ベーシックインカム】

投稿日:2016年1月13日 / by

国民全員が“不労所得”を手にしたら怠慢国家になるのか…

必要最低限の現金を無条件で全国民に支給する構想。貧困問題の解消、少子化対策…。行政においては社会保障などを1本化による効率化でコスト削減を実現できるなどメリットは大きいが、実現へは莫大な財源が課題となる。北欧・フィンランドで導入が検討され、オランダでは限定的な導入実験が行われる予定。

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導入を検討するフィンランドが月11万円を支給することから、その額を基準に議論も起こっているが、問題の本質は、<仕事をせずとも生活できる>ということではない。行き過ぎた資本主義の落としどころの1つとして、いかに格差や不平等を是正するかが重要なポイントだ。

生活の心配をせずとも働ける環境からみえてくるもの

「働からずとも生活できる」ではなく、生活の心配をせずとも働ける――。こうした観点でベーシックインカム導入を捉えると、金銭的な豊かさ以上に人生の豊かさにつながる議論や発想が湧きあがる。多くの人が心の奥底に閉ざしてしまった“扉”が開かれることが重要なのだ。

ブラック企業が横行するのは、クビになったら生活できなくなるという恐怖心に悪徳経営者が着け込むから。「非正規では生活できない」と不安になるのは、いつ首を切られるか分からないからだ。それが、ベーシックインカムにより、最低限の収入が保障されるなら、労働者は、失業による収入遮断の不安を抱えることなく、地に足をつけて働くことができる。そうなれば、個々の能力がより引き出され、生産性の向上にもつながるだろう。

もちろん、究極といえる“不労所得”だけに、悪用する輩も出てくるだろう。労働意欲を低下させるという指摘もある。その辺りは、運転免許ではないが、著しく不当な場合はペナルティを課し、支給停止という処分を導入するなどの仕組みで解決は可能だろう。もっとも、全国民に均等に配分されるので、失業保険や生活保護のような、不正受給は事実上起こりようがない。その意味では、ベーシックインカムは、究極のばらまき政策といえる。

悪用ではなく、ベーシックインカムだけでどれだけ生活できるか、といったテーマを追求し、慎ましくも心豊かに暮らす人も出てくるかもしれない。減少局面にある労働力を考えると憂慮すべきことだが、それでも、死と隣り合わせの貧困層増大に比べれば、極めて健全であり、微笑ましいといえるだろう。

鮮明になる働く意味

身もふたもないことをいえば、国民全員に平等に支給するということは、その額までの貨幣価値は事実上ゼロ円になるのと同義だ。つまり、ベーシックインカムは、生活を豊かにするものではなく、あくまでも貨幣と物との交換によって、最低限の生活を成り立たせるだけの環境整備に過ぎないことをしっかりと認識しておく必要がある。そうなれば、本当の意味で、「なんのために働くのか」ということがより鮮明になり、各自が自ずとそのための行動を起こすことになるだろう。

終身雇用制が崩壊したいまの日本にとって、ベーシックインカム導入は、まさに光明といえる素晴らしい施策だ。だが、年金も破綻している状況で、実現など到底不可能なのが現実だ。しかし、例えば3年など、期間を限定。さらに支給対象もセグメント。その上で、しっかりとテーマを設定し、歪になっている労働市場最適化のためのモラトリアム期間として導入するなら、その価値は十分にあるといえるだろう。失業保険の予算をうまく活用すれば、“限定版”の実施は、グッと現実味を帯びると思うが…。

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