働き方

【瓦版書評】「新しい働き方」ができる人の時代(セス・ゴーディン:三笠書房)

投稿日:2014年1月27日 / by

新しい働き方ができる人の時代(三笠書房)

なぜ新しい働き方が必要なのか

2013年は「新しい働き方」が脚光を浴びる1年となった。タイミングとしては、2011年3月に東日本大震災が起こり、ようやく前向きに動き始めよう、という動きへのシフトがその時期に重なったことも一因にあろう。一瞬で日常の当たり前の光景が喪失する事実を目の当たりにしたことで、これまでの価値観が激変。リスタートにあたっては、これまでとは違う取り組み方も必要ではないか…。そうした思いは「新しい働き方」という響きと抜群に相性が良かったのである。

「働く」とは、【生計を維持するために一定の職に就くこと】。つまり、生きていくために仕事をするということである。なぜ、そうした行為に「新しい」という冠をつける必要があるのか…。生計を維持するために一定の職に就くことは不変だが、その土台となる労働環境が変化しているからである。ゆっくりとジワジワだが、着実に変質している。もはや、これまでと同様の働き方では、同じ成果は得られないのである。

新しい働き手の条件

本のタイトルは、まさにこうした状況を表現している。「新しい働き方ができる人」が生き残る時代に突入した、ということである。本の帯には「これが働き方の未来。そして、もうこれが現実だ」とある。センセーショナルにも聞こえるが、決してそんなことはない。なぜなら、本書で示される「新しい働き方」は、何ら新しくはないからである。参考に本書が示す「新しい働き手の条件」をあげてみる。

・目立った存在になる

・利他心をもつ

・創造的になる

・判断したことに責任をもつ

・人やアイディアを結びつける

どうだろうか。できるビジネスマンなら当然備えている資質ではないだろうか。にもかかわらず、「新しい」となるのは、時代が変わったからである。時代や環境が変われば、価値は変わる。上記のような条件を備えた人間が、今まで以上に価値を持つ時代に突入したのだ。本書ではこうした働き手を「かなめになる人」と表現している。リーダーシップを持ち、優れたコミュニケーション能力があり、創造性にあふれる…。文句なしに優れた人材だが、「新しい働き方ができる人の時代」では、これが標準になる。特別ではない。標準だ。

これまでの評価軸はほぼ無価値に

「指示に従う」、「出勤に遅れない」、「勤勉に働く」。これまでは、こうした忠誠・忠実さが、評価され、それだけでも出世することは可能だった。「新しい働き方ができる人の時代」では、そうしたことはほぼ無価値になる。主体的に動き、ゼロから価値を生み出し、責任も負う。つまり、会社に依存せず、個人でも利益を生み出せるメンタルとスキルを持ち合わせた人間に高い価値が生まれる。会社寿命の短命化が進む先行き不透明な時代にうろたえない必須のスキルともいえるだろう。

「新しい働き方」という響きにはどことなく希望が宿るが、これまで会社依存型で働いてきたいわゆる“社畜”にとっては熱湯のように熱く感じる内容かもしれない。だが、これがいま着実に進行している「現実」なのである。ちなみに本書は、全米ベストセラーの翻訳本で、日本では2011年7月に発売されている。

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