「正社員が確保できない」の真の意味とは【瓦の目】
非正規増加の本当の理由とは
「正社員を確保できないから」。厚労省の調査で非正規の割合が増加していることが分かったが、その一つとして冒頭の理由が挙がっている。その割合は26.1%。4社に一社が、仕方なく非正規を雇用している計算だ。
「正社員を確保できない」とはどういうことなのか。少子高齢化で、労働人口は減少を続けている。それにより、正社員が確保できないのか…。ではなぜ、非正規なら確保できるのか。摩訶不思議である。考えられるのは、正社員として“流通”している人材がおらず、代案として、パートやアルバイトを雇用しているということだ。
「正社員」として流通している人材は、どんなものか。それは、新卒の学生や転職を検討している会社員などということになるだろう。ところが、新卒で就職した学生の3割は3年で辞めるという結果が、最新のデータで明らかになっている。この状況をどうみればいいのか。それは、人材の流れが、非常にまずい循環をしているということだ。
入りたい会社と思ったらどうも違っていた、そもそも入りたい会社がない、人材が欲しいのに流通していない、せっかくとれたのにすぐ辞めてしまう…。こうした、残念な事態が、あちこちで起こり、結果的に企業は本当に欲しい人材に巡り合えず、その補てんとして非正規が使われている。なんともお粗末な実態だ。
どうすれば人材の最適化は実現するのか
今後、人口減少が深刻化する中で、この悪循環の解消は、経済をじり貧にしないためにも絶対条件となる。一体なぜ、こんなミスマッチが頻発してしまうのか。第一には、求職者の意識の問題があるだろう。なにをしたいのかトコトン突き詰めるのは、就職先にフィットする上で最低条件のハズだ。第二には、企業の歪な情報発信の仕方があろう。いい部分だけでなく悪い部分もさらけ出さなければ、3年以上のお付き合いは難しいだろう。
抜本的な問題としては、会社をベースにした就職先選びがもはや無意味になっているということがある。つまり、産業構造が一変し、業種・業界を超えたコラボがスタンダードとなるこれからの働き方の中では、求職者にとっても企業にとっても、そもそもの基準がリセットされてしまっているということだ。
「正社員を確保できない」という企業の声は、実は、どんな人材を採ればいいのか分からない、という悲痛なメッセージとして捉えるのが、パラダイムシフトが加速する中での正しい見方なのかもしれない…。