働き方

リモートワーク導入を考える前に知っておくべき盲点

投稿日:2015年12月2日 / by 瓦版編集部

遠隔ワーク=クリエイティブに潜むワナ

昨今、多様な人材を活用するワークスタイルとして、リモートワークの導入が進んでいる。時間と場所に捉われない働き方の象徴でもあり、創造性とも密接にかかわる印象も強い。一方で、世界的創造企業のグーグルは、リモートワークによる創造性の高まりに否定的だ。そのグーグルの人事トップによる『ワーク・ルールズ!』(東洋経済新報社)をベースに「クリエイティビティを生み出す仕事や組織のあり方」と題したトークセッションが先ごろ都内で行われた。先進的な働き方を実践する企業の幹部が集い、「クリエイティビティ」をキーワードに討論。彼らは、リモートワークをどう捉え、どのようにして会社の創造性を高めているのか--。

左から角川氏、佐々木氏、田中氏、池見氏

左から角川氏、佐々木氏、田中氏、池見氏

リモートワークは必ずしも創造的とは限らない

自宅や遠隔地で仕事をするリモートワークは、オフィスにこもった働き方と比べるとなぜか先進的にみえ、クリエティビティあふれる働き方の象徴に思える。だが、実際は、そうでもないようだ。徳島県神山町にサテライトオフィスを構え、リモートワークを実践していることで知られる(株)Sansanの角川素久CWOは「仕事については基本、同じオフィスにいる方が効率的です」と明言する。その理由として、「オンラインだと伝わり切らないことがあるので、しっかりした人間関係がベースにないと難しい」と実状を明かす。

当然といえば当然だが、その上で角川氏は、次のように補足する。「自然に囲まれた、東京と全く違う環境で仕事をすることで新しい発想が生まれるのは確かです。それに採用においても、どうしても東京へ行けないという地方の優秀な人材を引き留める材料にもなる」と企業にとって、しっかりとメリットがあることを付け加えた。その点については、Fringe81(株)も同調する。「我々も鎌倉に8人くらいの規模のローテーションオフィスを構えましたが、そこから戻ってきた社員は例外なくリフレッシュしてきます」と同社田中弦代表はオフィス以外で働くことの効能を明かす。

臨場感のなさは予想以上のマイナス

もっとも、田中氏は、リモートワークについて、全面的に受け入れているワケではない。それを象徴するのが、同社のオフィスに君臨する“ロボ”だ。ロボは、可動する土台にタブレットを乗せたもので、バリ島に在住し、リモートワークを実践する同社役員がリモートで操作する。なぜ、こんなスタイルをとっているのか。田中代表は「遠隔地とモニターで平面でつながるだけではやはり、臨場感がない。ロボは、タブレットに顔が写って、リモート操作しているだけですが、それだけでもリアル感が全然違う。リモートワークとオフィス勤務の中間みたいな感じですかね」と単にネットワークでつながるだけの遠隔ワークには否定的だ。

freee(株)の佐々木大輔代表は「やはり社員は同じ場にいる方がいい。すれ違った時のちょっとした会話なども重要ですね。リモートワークはあくまで必要な場合のみですかね」と元グーグルだけにオフィス密集スタイルを支持する。創造性を高めるワークスタイルとしてのリモートワーク神話がことごとく崩れる印象だが、「forkwell」で新しい採用サービスを提供する(株)groovesの池見幸浩代表は、求人の視点からこう明かす。「求人で『リモートワーク可』と出すと、通常採れない人材が採れる」。メリット・デメリットはあるが、リモートワークは、使い方が重要といえそうだ。

人事制度がクリエイティビティを生み出すわけではない

登壇者は、いずれも会社トップや幹部。実際に創造的な会社づくりに直接関与できる立場にある。だが、トップがどんなにクリエティブに働ける会社を目指して、人事制度を整え、オフィスをおしゃれに作り込んでも、会社が創造的になるワケではない。クリエイティビティの源泉は、「人」にあるからだ。討論は、リモートワークといった方法論から、自ずと人材、つまり、採用の重要性へと収斂していった。

workrule2「採用はホントに重要。一番コストがかかるが、やると成果が出る。面接官もやっつけでなく、しっかりと育成する必要がある」と佐々木氏は力を込める。「うちは広告の会社ですが、『広告やりたい』という人は採らない。会社がアウトプットしているメッセージにどう刺さるのか、という部分をみますね」と田中氏は、面接でのポイントを明かす。さらに「採用はマッチングです」とどれだけ会社のビジョンとフィットするかが重要とした。角川氏は、それに呼応するように「紹介が効果的。社員は会社の文化を熟知しているわけですから、その人間が推すというのは一番確実ですよね」と追随した。

企業は、器として従業員のポテンシャル最大化を追求する。その上で、そこにしっくり納まる人材をじっくりと見極め、採用する。この両輪が、ぶれることなく機能すれば、会社は、望む方向へ進み、順調に成長を加速する。逆にいえば、それらを怠れば、優秀な人材にそっぽを向かれ、クリエイティビティが失われる。パラダイムシフトを迎え、働き方の変革が強く求められる中で、変化に臨機応変に対応することが、企業が、組織が、これからの時代に取り残されないための最低限の“ワーク・ルール”といえそうだ。

 

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