働き方

21世紀の資本と日本の人材市場【瓦の目】

投稿日:2015年3月6日 / by

格差はどこまで浸透してくるのか

富への道は本当に閉ざされているのか…

富への道は本当に閉ざされているのか…

トマ・ピケティの「21世紀の資本」が日本でもベストセラーとなった。「格差がある」。そう感じていても、良くは分からない事象をデータで明確にしたことなどが、多くの人のモヤモヤをそれなりに晴らしたことがその要因といえるだろう。それにしても資産保有者ほど経済成長の恩恵を受ける。そして、それが、労働による賃金の成長率を確実に上回る、というのはあまりにもひどい話だ。

知り合いは、なりたい仕事が明確で、学生時代からそのための勉強をしていた。たが、結局、希望の職種にはつけず、とりあえず決まった会社に正社員として就職した。しかし、ブラック企業のためやむなく退社。その後、いくつかの企業を転々として、結果的に30歳になったいまも非正規のまま、全く望外の職種で生活のために働き続けている。

彼が今後、どんな社会人生活を送っていくのか。いつか幸せになれるのか…。それは全く分からない。少なくとも、あきらめた時点で終わることだけは確かだ。今年の就活イベントのひとつに、くじと占いで志望企業を決めるというものがあった。先の知人の話に当てはめるなら、もし彼の学生時代に“くじ就活”があり、くじで決めていても結果は同じだったのかも、と思ってしまう。つまり、頑張っても希望の職に就けないなら運任せもあり、ということだ。

労働市場にある格差を解消するもの

ピケティの「21世紀の資本」ではないが、人材市場にも明確に格差があるのだろう。優秀な人材は、引く手あまたであり、ダメな人間はブラック企業にしか行けず、中間層は、それなりのところにしか行けない。結果、当然、収入格差が生まれる。優秀な人材はどんどん稼ぎ、そうでない人材は搾取される。企業間格差も発生する。これでは、モチベーションの総量は、全体として大きく低下しかねない。なんとかこの歪みを解消する方法はないものだろうか…。

ピケティは、格差解消策として、富裕層にたくさん課税することを提案している。その考えに沿うなら、優秀な人材にはどんどん起業してもらうのが、一案かもしれない。単純に優秀な人材が特定企業に囲われないし、企業の数が増える。より多様な発想の会社が多く生まれることで、求職者のニーズに合う選択肢が増える。これまでの就活システムでは非合理だった人材の細分化が、かえって重要になる可能性さえ出てくる。

いわゆる富裕層と呼ばれる人は、全体の数%といわれる。そこに富の大半が集中しており、構造上は、下層が頑張る分以上にさらにそこが潤うようになっているというのだから、本当に理不尽だ。しかし、これはあくまで富における話。才能は、遺伝によって資産のように受け継がれる側面もあるが、ごく一部だ。ピケティ自身がいっているように「21世紀の資本」は、回答ではない。あくまで議論するための題材に過ぎない。「r>g」は間違いだったーー。労働市場で下層から這い上がる人が続出すれば、そんなまさかの展開だって現実となる。人には無限の可能性がある。

 

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