働き方

【瓦版書評】YouTubeで食べていく 「動画投稿」という生き方 (愛場 大介(ジェット☆ダイスケ) : (著)光文社新書)

投稿日:2014年9月9日 / by

YouTubeで食べていく前に

Yutubeで食べていく

Yutubeで食べていく前に読む本

好きなことをして食べていくーー。そうした風潮が強まってきている。理由はシンプルだ。ネットの登場により、個人で情報発信が可能になり、それによる収益化が整備され、なにより、そうしたことにほとんどコストかけずに着手できる環境となっているからだ。

何といういい時代…。確かにその通りではある。だが、現実はそんなに甘くはない。なぜなら、こうした文脈の中には、どうやって儲けるのか、という肝心の方法論がスッポリと抜け落ちているからである。個人が情報発信するのは、難しくはない。SNSで毎日情報更新していればいい。好きなことをひたすら書き続けるだけでも蓄積すれば立派なコンテンツになる。ファンもつくだろう。しかし、それで食っていけるのかとえば、答えはノーだ。

では、どうすれば「好き」で食っていけるようになるのか。非常に難題である。本書は、いま最も注目集めるYouTuberとして食べていけるようになる本、と思いたくなるタイトルである。残念ながら、内容はその逆といっていいかもしれない。決してタイトルで釣っているわけではない。好きで食べていく、という風潮に対し、非常に良心的な意見を書き綴った、動画投稿への愛情あふれる一冊だ。その意味では、中途半端な、さらにいえば、逃げで「好きで稼ぐ」を考える愚か者がしっかりと目を通しておくべき“ノウハウ本”といえる。

YouTubeで食べていける人

なぜ、そんなスタンスになるのか。なぜなら著者は、中学時代から映像に関わってきた人物だからである。映像へのこだわりや奥深さを熟知している。簡単にいいものがつくれ、食っていけるとは、軽々しくは言えない歴史をこれまでに刻んできている。かつて個人が映像を公開するとなると大変な手間とお金がかかった。それが今ではスマホ一台で簡単にそれなりのクオリティのものが、作りだせる。これはテクノロジーの進化がもたらした素晴らしい側面に違いない。

しかし、人間の感動を呼ぶ作品は、それなりの手をかけなければつくりだせない。同書には、トップYouTuberのインタビューも複数掲載されているが、誰一人として、ラクをしていない。ラクをしていたことで、アクセスが稼げず、真剣に取り組んでやっと支持を集めた話も出ている。もちろん、センスがあれば、文明の利器をサックと使いこなし、簡単に注目を集める動画をつくれる人物もいよう。しかし、それは多くのトップYouTuber同様、結果的に才能に恵まれた選ばれし人なのだ。

決して、新たな働き方・稼ぎ方の希望の光を遮断するつもりはない。YouTubeで食っていくことが可能になった。それは紛れもない事実だ。ただし、それは、かつてサッカーで食えない時代にJリーグが誕生したのと同様、それで食っていく道ができたに過ぎない。つまり、プロとして生活していけるレベルになるにはやはり、生半可な姿勢では厳しいということである。「オレはYouTuberとして食っていくんだ」。その志やよしである。道はある。そういう人物にとっては、“YouTubeで稼ぎまくる”といった陳腐なノウハウ本よりも、何十倍も中身の濃い、最高の“職業ガイド本”といえるだろう。

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