企業風土

自己管理を突き詰めた合理的で快適な働き方

投稿日:2014年3月20日 / by

常識や慣習にとらわれないから追求できる理想形

倉貫義人氏 ソニックガーデン

 

(株)ソニックガーデン代表取締役社長
CEO 倉貫義人氏

エンジニア業界の常識を覆すスタイルで、わが道を突き進むソニックガーデン。常識や慣習に従うことが、業績の安定につながるのなら、独自のビジネスモデルでステップアップし続ける同社の躍進はどう捉えるべきなのか…。「プログラマを一生の仕事にする」を目指す同社のワークスタイルには、未来の会社の在り方や働き方のヒントが散りばめられている。

いわゆるオフィスらしさがない理由

ソニックガーデン事務所

ゆとりあるスペースやデスクの配置はコワーキングスペースの雰囲気だ

都内にあるオフィスは、ゆったりとスペースが取ってあり、開放的。大きめの窓からは日がたっぷりと注ぎ込む。いわゆるオフィスのイメージとは異なり、どちらかといえばカフェに近い雰囲気だ。それもそのはず、デザインしたのは、コワーキングスペースを手掛ける業者という。あえて、オフィスらしさを薄めたのには理由がある。

「我々は、エンジニアが顧客の仕事を受けて作業をするわけですが、一般的なスタイルである、客先へ足を運ぶことはしません。こちらへ来てもらうのが基本スタンス。従って、迎え入れる場として、空間づくりにはこだわったという側面があります。エンジニアの移動にかかる時間やコストを削減することで開発に注力できるという合理性も理由のひとつです。また、在宅勤務を認めていますが、たまにこちらで仕事をするときに家よりもこちらの方がはかどりそうな空間を意識した部分もあります」と倉貫代表は解説する。

「納品のない受託開発」という新ビジネスモデルが成り立つ秘密

ソニックガーデン倉貫代表

業界の慣習を壊す新たなビジネスモデルで突き進む倉貫代表

エンジニア業界では、客先へ常住することが一般的。だが、こうしたスタイルがエンジニアに大きな負担を強いるという側面もある。同社はビジョンとして「プログラマを一生の仕事にする」を掲げる。その実現のために、「納品のない受託開発」というビジネスモデルを採用する。同モデルは、作り切るのではなく、少しずつ作っていくというスタンス。従って、「納品はせず」、料金も月額定額で顧客の一員としてビジネスの成長に貢献する形となる。

“使われる人材”だった従来のエンジニアの在り方を一変させるこの画期的なモデルの生命線となるのは、いうまでもなく圧倒的な技術力だ。エンジニア人材の獲得競争も激しい中で、安定して高レベルをキープし続ける裏には、同社独特の採用スタイルがある。“15分面談”と約半年の対話や実践テストによる、徹底したレベルと適合性の見極めだ。

「採用は基本、“紹介者責任制”という制度で進めています。応募者とは私が必ず面談しますが、重視するのは人柄。15分も話せば、弊社との相性は分かります。その後、スキルテストや課題をこなしてもらい、社員とも納得いくまでお話いただいて、じっくり時間をかけて採否を決定します。採用活動は会社が応募者を選ぶと同時に応募者が会社を選んでいるわけでもありますから」(倉貫代表)。

“結果”さえだせば働き方は自由自在

十分に時間をかけ、双方納得の上、晴れて社員となった人員は、その瞬間から、ほぼすべての権限を有することになる。つまり、ワークスタイルを自分が最も成果の出しやすい形で自由に選べるのだ。「仕事をこなしている限り、個々人はなにをするのも、いつするのも自由」というROWE(Result-Only Work Environment)に示される考え方だ。

実際、8人のエンジニアのうち2人は、地方で完全リモートワークで働く。代表自身も週二回は在宅勤務を実践する。会社には就業規則すらなく、問題や不満があれば「自分で解決すればいい」と、もはや“完全放任主義”とさえいえる。これまでの会社員の働き方の物差しではとうてい測れないワークスタイルが、同社では当然のように根付いている。

「プログラマを一生の仕事にする」というビジョンを掲げ業界に風を起こしている

プログラマを一生の仕事にするというビジョンを掲げ業界に風を起こしている

「私はこのスタイルが特別だとは思っていません。仕事の効率を考え、最も合理的な形を追求した結果がこれであるというだけ。もちろん、セルフマネジメントができなければ問題外ですが、そのあたりの適性は面談で見極めています。そもそも生活のすべてを犠牲にするような働き方は長く続きませんし、そうしてほしいとは全く考えていません。持続性を大切にしています。ですから会社を必要以上に大きくするつもりも上場するつもりも基本ありません」と倉貫代表はその経営哲学を明かす。

最高レベルの環境で、最強レベルの人材を揃え、最上級のサービスを提供する同社。当然ながら、そのクオリティに魅了されたクライアントが、その扉の向こうで行列をなす。「ありがたいことですが、弊社はあくまで人ありきの受注。オファーがあっても受けられる人員が揃っていなければ、お断りいたします。急に人を増やすことはありませんし、現状で対応しきれない分は申し訳ないですがお待ちいただくしかありません」と倉貫代表は淡々と話す。

自社で受けきれない案件は「ギルド」で消化

もっとも、ウェイティング状態の顧客を長々と待たせることへの対策は考えている。それが、「ソニックガーデンギルド」だ。「ギルド」とは、中世から近世にかけ、西欧諸都市で商工業者間で結成された各種職業別組合。「ソニックガーデンギルド」は、同社が独自に考案した「納品のない受託開発」に共鳴するプログラマや企業に、同社のクライアントをオープンにする仕組みで、簡単にいえば「クラウドソーシングとフランチャイズの間の様な位置づけ」(倉貫代表)となる新しいスキームだ。

sonic7

副業としてもフリーランスとしても参加は可能だ

社員にほぼ全権を与え、エンジニア業界の常識を覆すビジネスモデルを採用し、拡大路線には見向きもせず、抱えきれない顧客をパートナ企業に“おすそ分けする”など、一般的な会社の在り方には目もくれず、自社のビジョン実現にまっすぐに向かい、わが道を突き進む同社。その根底には、誰も幸せになれない業界の慣習打破への熱い思いがある。不条理なことを解消し、働く人の効率を最適化し、身の丈に合わない拡大は回避する…こうした思考や行動を積み重ねた一つのカタチが「ソニックガーデン」だとすれば、新しい時代の働き方や会社の在り方のヒントが、同社には凝縮されているといえそうだ。


◇ソニックガーデンギルド
同社がさばききれない良質な案件を“おすそわけ”する形のソニックガーデンギルド。イメージとしてはフランチャイズに近いが、大きく違うのは試験と準備がある点。同社の「納品のない受託開発」が圧倒的な技術力により成り立っていることを考えれば当然ではある。従って、お金さえ出せば参加できるというものではなく、その輪は高いクオリティを保ちながら拡大していく。

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