インタビュー

イラストコンテストVで味わった現実

投稿日:2014年6月2日 / by 瓦版編集部

ファイルNo.3 Nagiにゃん 【イラストレーター】

フリーランスのイメージがかつてとは変わりつつある。大きな要因のひとつに、ネットの浸透で仕事を探す環境が劇的に変化したことがある。クラウドソーシング(CS)は、いまやフリーランサーの案件探しのインフラだ。この連載ではそれでもなお、ひと超えが簡単でない正社員の壁をまたぎ、フリーの世界へと足を踏み入れたフリーランサーの方々に素朴な疑問をぶつけ、ヒントと元気、そして勇気をいただく。


Nagiにゃんクリエーターとして生きるにはフリーしかなかった
――なぜフリーランスになったのですか?

Nagiにゃん それしかなかったからというのが正直なところです。大学を卒業後にドイツの美大に入学したのですが、諸事情で中退しました。アラサーの概卒で職歴無しの自分がクリエイターとして生きていくにはフリーになるしかなかったのです。

――就職活動はしなかったのですか?。

Nagiにゃん 帰国して2か月はまだ教員になる夢も捨てきれていなくて、関東の臨時教員の登録をしたり、採用試験の勉強をしたりしつつ、ゲーム会社にポートフォリオを送っていました。でも、一社に落ちて我に返りました。ネット上で知り合った元大手ゲーム会社勤務のフリーランスのイラストレーターさん(以降Aさん)のお話も参考になりました。

――企業勤めも知るフリーイラストレーターの先輩ですね。

Nagiにゃん 自分はもともと、「時代の変化についていくためには会社に入っていたほうがいい」と考えていました。ですが彼の意見は「フリーのほうが時代の変化についていける」という逆のもので新鮮でした。「会社にいると上から来る仕事をこなすだけ、入社して数年もすれば上になり自分の手を使うことも減り、またその会社のやり方に染まってしまう。その会社が無くなったり、ゲームの部署がなくなったときに、センスやテクニックが鈍った状態よりも、フリーでずっと最前線を走り続けて洗練された状態のほうが変化に対応できるのではないか」と。変化についていけるかいけないという話はともかく、安定した人生を選ばずに自分のやりたいことを仕事にした結果、管理職になってしまっては本末転倒だということには深く同意しました。

イラストコンテストVで順風となるハズがまさかのどんでん返し

lancers3-2――それがフリーランスへと背中を押したのですか?。

Nagiにゃん 中退した原因の一つでもあるのですが、ドイツの美大に在学中の2012年に、最優秀賞受賞者はゲーム会社のCAPCOMさんに就職のチャンスというイラストコンテストで最優秀賞をいただいたことが最初のきっかけです。結局、雇ってはいただけなかったのですが、クリエイターとして生きていくという諦めていた夢が急に現実味を帯びてきました。そのコンテストはCAPCOMさんとニコニコ動画さんの共催で、1次選考はCAPCOM社員の方々が4枚選んで、最終選考はニコニコ公式生放送で視聴者の投票という形式でした。CAPCOM社員という職人集団と一般の方々両方から認められたということは、「俺、夢を追いかけてもいいのかもしれない」というきっかけにはなりましたね。

――それにしてもコンテスト優勝でも不採用というのは、どんでん返しであり、厳しい現実でもありますね。

Nagiにゃん コンテストの後で採らないって本当に要らなかったんだなと、最優秀賞でテンションが上がった分、下がり方も大きかったですね。自信を持つということは本当に難しいことで、多少の才能や技術よりも大事なことなのではないか、とAさんとも話したことがあります。彼の知人はすごく上手かったけどフリーを1年やって安定せずに諦めてしまった。1年くらいで安定しないのが普通なのに。私はその点では運がよかったかもしれないです。全く仕事が来なかった時に、プロであるAさんに「上手いから絶対仕事がくるようになる」と言ってもらえたことも後押しになりました。

Nagiにゃん迷っているならあえて捨てる必要もない

――本当にうまくかみ合わないものですね。最後にフリーランス予備軍の方へ何かアドバイスをお願いできますでしょうか。

Nagiにゃん 私は未だフリーになったばかりの駆け出しですのでアドバイスを言える立場でもないのですが…。捨てるか迷っている環境があるならば、あえて捨てる必要もないのかとも思います。私は失うものもなく他の選択肢がなかったため今フリーランスとして生きていますが、現状ですと収入も不安定すぎて家庭を持つことは不可能です。やりたくない仕事でも家庭を持てる環境ならばそれはそれで幸せな人生なのだと思います。ですが、私は一度しかない人生なので好きな仕事をしながらさらに家庭も持てるようになればいいな、と甘っちょろい夢を見ています。

もっと詳細はこちら               (取材協力=クラウドソーシング「ランサーズ」


【略歴】
某国立大教育学部美術科卒業後 ドイツ某州立美大中退
2013年~ フリーランスイラストレーターとして活動
最近ソーシャルゲーム、トレーディングカードゲーム等のイラスト仕事が来るようになりました。
【賞歴】
2012年  CAPCOM×ニコニコ静画「イクシオンサーガイラストコンテスト」最優秀賞


〈瓦版’インプレッション〉
「フリーになるしかなかった」というNagiにゃんさんだが、イラストレーターとしての才能があるから踏み切れた側面はゼロではないだろう。とはいえ、人生とは難しいもので、才能があってもフリーとして失敗する人もいれば、才能はなくとも成功する人もいる。そこで重要になるのが「自信を持つこと」。「自分はやっていける」、「何としても一人前になってやる」。そうした自分への自信や確信を、たとえ自己満足であっても持ち続けることが、フリーランスとして生き抜いていくメンタリティとして非常に重要となる。Nagiにゃんさんは、自信を持てるよう励ましてくれる仲間に出会える幸運があった。イラストコンテストで優勝したのは紛れもない実力だが、その後の展開は、運命のいたずらとでもいうしかないだろう。天国と地獄を知るNagiにゃんさん。これからの彼のフリーランス人生の行く末は非常に興味深く楽しみである。

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