働き方

どうしても大企業で働きたいなら読んでおくべき一冊【瓦版書評】

投稿日:2014年10月28日 / by 瓦版編集部
合理的なのに愚かな戦略(ルディー和子:日本実業出版社)

合理的なのに愚かな戦略(ルディー和子:日本実業出版社)

なぜ優秀なはずの大企業が愚策で行き詰るのか…

大企業の足元が揺らいでいる。リストラによる大量解雇はもはや恒例行事になりつつある。就職人気ランキング上位の有名企業が、経営に行き詰まり、もがいている…。一体なぜ、こんなことになっているのか。大企業には優秀な人材が集まり、豊富な資金があり、なにより印籠のような企業ブランドがあるではないか。

典型的な分析例は、大企業病により、官僚的になってしまった、というものだ。確かに企業の規模が大きくなると、コントロールが難しくなり、規制や規範が増える。その結果、なにをやるにも、形式に則った手続きが必要になる。スピード感が失われ、創造性も薄らいでいく…。的外れではないし、むしろ正解のようにもみえる。しかし、もしそうだとすれば、対策は明確であり、これほどズルズルと低迷を引きづることはないだろう。

プロ野球の名将、野村克也氏は、“再生工場”の異名を誇った。他球団でダメだった選手を引き取り、見事に再生させ、チームの勝利に貢献させることに長けていたからだ。その極意について氏はこう話している。「プロになる様な選手は何か秀でたものを持っている。環境が良くなれば、活躍できないハズがない」。凡人でないからプロになっている。きっかけさえ与えれば、必ず活躍するだけの資質はある、というワケだ。

この理屈はそのまま大企業にあてはまる。大企業には、非凡なキャリアの人材が入ってくる。ましてやその経営者となれば、そうした人材からさらに抜きん出ているからこそトップにまで上り詰めている。それほどまでの人材がなぜ、愚かな経営判断をしてしまうのか…。同書は、大企業の失敗をその歴史と重ねながら分析し、原因を明確にしている。

日本企業への愛情あふれる辛口分析

いずれの分析も切れ味鋭く、うならされるが、第一章の「顧客志向」の項はとりわけ痛快だ。どの経営者も失敗を顧みるとき「今後は顧客の声にしっかりと耳を傾け、真摯に立て直していきたい」といった言葉を発する。顧客を顧みなかったから失敗したんだ、といいたいのだろう。しかし、著者は、優良企業ほど、顧客の声に耳を傾け過ぎ、競争に敗れていると切り捨てる。

一見、逆説的だが、実は非常に的を射ている。つまり、顧客の声に耳を傾けることは受け身になるということ。受け身では後手後手になるし、革新など生みだしようがない、というわけだ。確かに、顧客の声に耳を傾けていては、iPhoneなど誕生しなかっただろう。ルンバのようなロボット掃除機を企画会議で議論すれば、やれ「段差があれば機能しない」、「仏壇のろうそくを倒して家事になりかねない」…など、否定的意見にあふれるだけだろう。

著者は、頭脳明晰な経営者が十分すぎるほどにすぐれた戦略を組み立てることは否定しない。だが、こうしたことは意思決定の材料であっても、行動を起こすためのスイッチではないとしている。そのまま実行していれば成功するかもしれない戦略がなぜ、最終的に愚かな方向へと舵が切られるのか。その最大の原因を著者は、しがらみやプライド、執着心など、理性以外の要素にあると断言する。加えて、まさか本人もそうした判断をしているとは思っていない、と洞察する。

失敗という結果をもとにした考察だけに、「後からなら何とでもいえる」という声も聞こえてきそうだが、日本企業、特に大企業病に侵された企業なら、残念ながら幹部クラスからトップへこうした提言が届くことはないだろう。せいぜい、「今回は急激な市場環境の悪化が重なりアクシデンタルでしたね」といった言葉でお茶を濁す程度だろう。

前書きで著者は、内容について「あくまでも独断」と断っており、企業への追取材はしていない。これは、日本企業の悪しき体質を知り尽くす著者が、同書を滞りなく出版すべく、あえてしなかったと勝手に解釈させていただく。だからこそ、同書は、黄色をベースにしたインパクトあるデザインになっていると独断で思っている。つまり、同書は、著者からの愚かな戦略にあえぐ日本企業への喝であり、「イエローカード」ということである。

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